嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第2-3節:心強き相棒は疾風の如く

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「――むんっ!」

 やがて先に仕掛けたのは暗殺者アサッシンたちだった。彼らは連携の取れた身のこなしで一気にリカルドに迫り、ダガーを自分の手足のごとく操って斬りかかる。その動きはまるで舞いを踊るかのような華麗さだ。

 程なく室内に金属と金属のぶつかる乾いた音が何度か響く。

 リカルドはショートソードで暗殺者アサッシンたちの攻撃をその場でほとんど動かずに全て受け止め、防御に徹している。

 積極的に前へ出ないのは背中側にいる私をかばうためということもあるだろうけど、なるべく死角やすきを作らないようにするためという意味合いも強いと思う。

 そんな中、私が行使していた精霊の力はついに最高潮に達し、眠りからの覚醒効果が確かに発揮されたということが感覚的に分かった。あとはみんなが目を覚まして、駆けつけてくれるのを祈るだけだ。

 もちろん、効果の程度には個人差があるから、全員が一斉にということではないだろうけど……。


『――ありがとう、精霊さん』


 私はチラリとわずかに視線だけを向け、眠りを司る精霊に感謝の気持ちを念じた。

 すると彼はニコッと笑って会釈えしゃくをすると、その場から去っていく。程なく気配も消え、それとともに私も足先の動きを止める。


 よしっ、あと少し……あと少し頑張れば……。


 回復薬を使ったとはいえ、リカルドの体力は完全には回復していない。それにこの不利な状況では精神力の消耗が激しすぎて、少しずつだけど追い詰められている。

 早く私にかかった対抗魔法カウンターマジックの効果が消えてほしい。そうすれば照明ライティングで彼のサポートが出来る。回復魔法や補助魔法、攻撃魔法だって……。

 相変わらずリカルドと暗殺者アサッシンたちの攻防は続いている。にらみ合いによる沈黙と金属同士がぶつかる重い衝撃音が不規則に響き、殺気と狂気が辺りを包む。

「っ!?」

 ――その時、ほんのわずかに生まれたすきに乗じて暗殺者アサッシンのひとりが一気に間合いを詰めた。

 リカルドは反応が一呼吸分だけ遅れ、それによってひときわ甲高い金属音とともに彼の持つショートソードが弾かれる。結果、彼の胴体が無防備な状態でさらされる。このままだと暗殺者アサッシンの凶刃が……。

 さすがにリカルドの顔にも焦りの色が走る。それとは対照的に、迫り来る暗殺者アサッシンは目元が緩む。


 このままだとマズイ!


 こうなったら私が前に出て、リカルドの身代わりになってでも守ら――っ!?

「でやぁあああああぁーっ!」

 咄嗟とっさに私が動こうとしたまさにその瞬間、暗闇の中から激しい咆哮ほうこうが響いた。

 熱い刃が疾風はやてごときらめき、月明かりを反射した銀色の光がその闇を鋭く切り裂く。

 直後、リカルドに迫っていた暗殺者アサッシンは背中から袈裟懸けさがけに斬られ、床に倒れ込んで沈黙した。おそらく彼は不意に起きた瞬時の出来事に、理由も分からず絶命したことだろう。

 残るふたりの暗殺者アサッシンたちもこの不測の事態に驚愕きょうがくして目を見開き、狼狽ろうばいしながら慌てて振り向く。

「――ナイル!」

 パァッと花が開いたような明るい表情で声を上げるリカルド。

 私を含めてその場にいた全員の視線は、肩で息をしながら剣を振りかざした格好でたたずんでいるナイルさんに向けられていた。

「はぁっ……はぁっ……間に合ったみたいでなによりです……」

 すかさず彼は威嚇いかくするような視線を暗殺者アサッシンたちに向け、牽制けんせいした。それに対して彼らが思わずひるんだわずかなすきいて、ナイルさんはこちらへ駆け寄ってくる。

 そして私たちをかばうような立ち位置で壁のように立ち塞がったのだった。

「フッ、遅いぞバカ者。だが、助かった。さすがに僕もギリギリだったからな」

「不覚を取りまして申し訳ないです、リカルド様」

「気にするな。こうして僕もシャロンも無事なのだからな。結果良ければ全て良し。あとは残りの始末を付け、名誉挽回ばんかいしてもらうだけさ」

「お任せをっ!」

 リカルドとナイルさんはどちらも視線を暗殺者アサッシンたちに向けたままだけど、向き合って会話しているかのように意思も息もピッタリと合っていた。さすが幼い頃からずっと一緒に過ごしてきた仲だ。


(つづく……)
 
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