嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第7幕:蒼き石の鎮魂曲(レクイエム)

第4-4節:希有な発動条件

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 ただ、もし本当に『賢者の石』が存在すると仮定するなら――。

「それならこの石が『賢者の石』の欠片かけらということはありえますよね。様々な文献に登場する『賢者の石』って、手のひらサイズというケースも多いですし」

「ですね。シャロン様のおっしゃる通り、これはそのひとつなのかもしれません。もちろん欠片かけらであっても、秘めた力は人間の想像をはるかに超えるものである可能性は高いでしょうけど」

「使い方によっては世界を統べることも滅ぼすことも出来るらしいですからね……」

「ただ、どうしてこの石はこんなにも輝き出したのかしら? 何をきっかけに? 身に付けていたポプラさんの命が尽きたからかしら? にえみたいな?」

 確かに何かの力を発動させるためににえを捧げるという例はよくある。特に闇属性の魔法の一部や儀式によって黒い願いを叶えようとする際などは、その対価として人間や獣などの命を捧げることがあるらしい。

 私の精霊の力だってそれと似たような面がある。望む力が壮大で強いほど、その対価だって大きい。もし使い手の保有している魔法力で足りなければ、それこそ自分の生命力を差し出さなければならない。

 そしてそれが限度を超えれば、にえとして自らの命を差し出すのと変わらない。

 その時、首をかしげるリーザさんに対して、すかさずゼファルさんが意見を述べる。

「それなら過去の持ち主にだってそういう現象が起きて、もっと世間に伝承が残っていたり知られていたりしてもおかしくないんじゃねぇのか? 賢者の石と言えば気の遠くなるような大昔から存在するって代物だ」

「そうよね……。長い時間のスパンで考えれば、同様の事象が発生している頻度ひんどはそれなりにあるでしょうしね。それこそ賢者の石の本体ではなくその欠片かけらだったとしたら、世の中には複数存在することになるわけだし」

「つまり『身に付けているヤツの死』じゃなくて、希有けうによって石が発動したと考える方が自然だな。死なんて生きてりゃいつか誰にでも起きることだ。ヴァンパイアみたいな不死の存在とか、一部の例外を除いてな」

「うん、そうね。それならこの事象に関する記録がほぼ見当たらないということの筋は通るわね。賢者の石だけでも貴重な物なのに、そこに希有けうが必要となれば、その両方が揃うことなんてほぼなかったでしょうから」

「まぁ、今はその『要因』が何か分からねぇから、問題の解決にはならんがな」


 希有けうな要因か……。

 月の満ち欠けや時間帯といったものはありふれた要素だし、地理的な特性であればその地域に何らかの伝承が残っていてもおかしくない。ただ、そうした話は聞いたことがない。

 だとすれば、たまたま偶然が重なって発動条件を満たしたということになる。

 でもよっぽど珍しい何かがこの場に存在するなん――っ!



 ――あっ! ま、まさかっ!?

 ふと私は重大なことに気付き、ハッとした。

 まさに灯台もと暗し。希有けうなことなら身近にあるじゃないか。



 それは『精霊使い』である私の存在だ。精霊使いの能力を持つ者は滅多にいないし、なによりどんな石にも精霊が宿っているというような話をどこかで聞いたことがある。

 私たち精霊使いの能力の本質は、精霊との意思疎通。様々な力の発現は彼らとの対話や交渉の結果により引き出されているに過ぎない。表向きには私が力を行使しているように見えるけど、厳密に言えばそう表現した方がより正しい。

 そんな精霊使いの私がこの上なく感情を高ぶらせ、無意識下にある想いを揺れ動かした。そして図らずもそれが石に宿っている精霊に何らかの影響を与えた……。



 …………。

 うん、直感的にそういうことなんだという感じがする!

 だとすれば、私がするべきことはひとつ。この石に宿る精霊に話しかけて色々とたずねてみることだ。何かの力の行使を求めるのではなく、対話をするだけなら私自身にかかる負担もそれほど大きくない。

 それはフィルザードの地下に眠る水資源について、水の精霊にたずねた時と同様だ。


(つづく……)
 
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