嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第4幕:解け合う未来の奇想曲(カプリッチオ)

第2-5節:美しき少年貴族

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 すでに石畳の先には一行の先頭を務める騎兵の姿が見えている。

 さらにその奥には隊列を組んで進む兵士さんたちがいて、その中心に馬車がある。おそらくそこにノエル様が乗っていらっしゃるのだろう。

 その様子を見ていると、私がこのフィルザードへ来た時のことを思い出す。

 もちろん、あの時はもっと規模が小さくて、出迎えもスピーナさんとポプラだけというさびしいものだったけど。

 そんな私が今はフィルザード家のみんなと一緒にいる。これって少しは受け入れられ、認められたと思って良いのかな? そうだと良いな……。

 思わず私は横に立つリカルドの横顔をじっと見つめた。

 端正たんせい綺麗きれいな顔立ち。カッコ良くて優しくて、でもちょっぴり意地悪でつかみ所がない。一緒にいるだけで胸の奥が熱くなってきて、幸せな気持ちがあふれてくる。素敵な私の旦那様だ。

「ん? どうした、シャロン?」

 私の視線に気付いたのか、不意にこちらを向いて問いかけてくるリカルド。焦った私はあわてて視線をらし『なんでもありません!』と返事をしてうつむく。

 それに対して彼は私がまだ緊張しているのだと思ったようで、クスッと笑いながら私の肩を軽く叩き、再び視線をノエル様の隊列の方へと戻したのだった。以後は特にこちらを意識することもなく、先ほどまでと変わらぬ様子でたたずんでいる。


 ――いけない、私としたことが浮かれすぎていた。外交の大事な場なんだから、もっと気を引き締めないと。

 私はフルフルと小さく首を振り、お腹に力を入れて気合いを入れ直す。

 それから程なくしてノエル様が乗っていると思われる馬車が屋敷の前で停まる。途端に勢いよくドアが開き、中から小さな影が飛び出してくる。



 それは中性的で美しい、私と同じくらいの身長の少年だった。

 短く切り揃えられた銀髪は風になびき、太陽の光を浴びて雲母うんものようにキラキラと輝いている。肌は雪のように真っ白。そして高級そうな布で作られた黒色の礼服を身に付け、そのよく映えるコントラストがなんとも印象に残る。

 顔立ちには幼さが残っているけど、凛々りりしい目元や華奢きゃしゃながらも広めの肩幅といった体格などには大人びた片鱗へんりんも感じられる。また、活発そうな雰囲気と晴れやかな表情には天性の明るさがにじみ出ていてまぶしい。

 やや年下くらいということも考えると、彼がノエル様なのだろう。

「リカルド兄様ぁーっ!」

 少年は屈託くったくのない笑みを浮かべ、駆け寄った勢いのままにリカルドへ抱きついた。

 さらにその後は愛しそうに彼の胸に顔をこすりつけて喜んでいる。その様子はまるで久しぶりに飼い主と再会した子犬のようだ。もし尻尾があったら千切れるくらい激しく振っているに違いない。

 一方、少年をしっかりと受け止め、胸元ではしゃぐ少年を見下ろして苦笑をにじませているリカルド。当惑気味ではあるけど彼も嬉しそう。

「元気にしてたか、ノエル?」

「はいっ! リカルド兄様こそお元気そうでなによりです!」

 ふたりの会話から察するに、やはりあの少年がノエル様で間違いないようだった。

 甘えん坊なノエル様はリカルドにベタベタすると事前に聞いていたけど、これは私の想像以上だった。好きという気持ちがあふれ過ぎているというか、愛しい感情が連鎖的に爆発し続けているように感じる。


 ノエル様が女の子だったら、私は明確に嫉妬しっとしちゃったかもしれないな……。


 そう心の中で思いながらふたりの様子を眺めていると、ふとリカルドは馬車の横で控えている軍人さんに視線を向ける。

 その人はほかの兵士さんたちと比べてグレードの高そうな軍服を着ていて、所作や雰囲気にすきがない。放っているオーラも別格という感じがする。おそらくノエル様の側近ということなんだろう。

 年齢はナイルさんより少し上くらいだから三十歳前後。タカのごとき鋭い目つきと高貴な顔つき、落ち着いた空気の中に熱い意思をひそませているような気配をただよわせている。

 体格は程よい肉付きで、ジョセフとナイルさんの中間くらいといったところか。おそらく戦闘ではパワーとスピードのバランスが絶妙に取れていて、どんな状況にも対応できるタイプだと思う。

 ナイルさんもそうだけど、機会があれば彼にも剣のお手合わせをお願いしたいな。


(つづく……)
 
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