嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

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第5幕:分水嶺の奏鳴曲(ソナタ)

第5-4節:終わらない戦い

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 その後、辺りは沈黙に包まれ、風の音だけが空間を支配した。私はゆっくりと腕を下げ、視界を回復させつつ周囲の様子をうかがう。

 するとあれだけの大軍勢だったアンデッドたちは全てどこかに消え去っている。

 周りにいた兵士さんたちもその状況を確認したようで、次々に勝利を喜ぶ歓声を上げる。

 死霊祓いターン・アンデッドはアンデッドに対して絶対的な対抗効果を発揮する魔法。神の力を借りた光で照らすことで、彼らの魂をあの世へ送り返すのだ。

 アンデッド自身には防ぐ手立てがなく、しかも彼ら以外にはせいぜい光がまぶしいと感じるくらいで何の影響も及ぼさない。

 なるほど、ナイルさんが死霊祓いターン・アンデッドの使い手だと知っているなら、リカルドの指示や陣立ては的確で納得がいく。

 ……私、反省しなきゃ。もっと彼を信じてあげないと。

 そんなことを思っていると、リカルドとナイルさん、それにゼファルさんが陣の中へ戻ってきて、私たちは温かく出迎える。

 特にリカルドは真っ先に私のところへやってきて得意気な顔をする。

「まっ、結果はザッとこんなもんだ。僕は指示をしただけで実際に戦ったわけではないがな」

「ふふっ、お疲れ様。それにしてもナイルさんの死霊祓いターン・アンデッドは効果範囲が広いし、かなり高位レベルだよね?」

「まぁな。ナイルは神官の家系の出身でな。死霊祓いターン・アンデッドはアイツの最も得意とする魔法なんだ。もちろん、剣の腕も達人級だがな。おそらくジョセフやキール、そして悔しいがこの僕よりも強い」

「神官の家系ということは、ナイルさんは回復魔法も?」

「あはは、実はそっちはほとんど使えん。ただ、解毒や呪いなどの解除は出来るぞ。要するにけがれをはらうことの専門だな」

「そうだったんだ」

 どれも今まで知らなかったことだったので、私は興味深く聴き入った。

 中でも彼が太鼓判を押すほどナイルさんの剣の腕が確かなら、ますますその剣技を見てみたい気持ちが強まる。地方会議が終わってお屋敷に戻ったら、今度こそお手合わせをお願いしよう。

「……おい、なんだありゃ?」

 その時、ゼファルさんが山道の前方へ視線を向けながら言い放った。しかも今まで穏やかだった表情は一瞬にして曇り、ついには厳しいものへと変化する。

 私を含め全員が一様にその方向を見ると、そこには遠くから整然とした足音を響かせて歩を進めてくる影たち――。

 それは一掃したはずのアンデッドの群れだった。即座に後方も確認してみると、やはりそちらからも彼らとは別の集団が歩み寄ってきている。死霊祓いターン・アンデッドが効かなかったとは考えにくいから、これはおそらく増援だろう。

 兵士さんたちの表情が再び緊張に満ちたものになり、すかさず陣形を整え直して身構える。そしてリカルドは深いため息をつくと、最初にアンデッドたちと対峙した時よりも深刻そうな空気を漂わせる。

「やれやれ、ぬか喜びだったか……」

「リカルド様、おそらくこれは近くのどこかにアンデッド召喚の魔方陣が複数あるものと思われます。それをなんとかしない限り、ずっと湧いて出ることでしょう。体力と魔法力に限りのある我々はジリ貧です」

はらえるか、ナイル?」

「お任せを。ただ、広範囲に効果が及ぶ死霊祓いターン・アンデッドと違い、解除魔法ディスペルで魔方陣をひとつずつ消していかねばなりません。そのため、ある程度の時間と手間がかかります」

「リカルド様、解除魔法ディスペルなら私も使えます。ナイル殿と私で手分けして魔方陣を消しましょう」

 横で話を聞いていたリーザさんが即座に協力を申し出た。それを聞くや否やリカルドは大きくうなずき、次に打つ手を即断する。

「よしっ、後方側の魔方陣はリーザに任せる。ゼファル、キミはリーザのサポートに回ってくれ。僕は前方側でナイルをサポートする」

「承知ですぜ、リカルド様!」

「兵士たちは引き続き、シャロンやポプラ、ソフィアを守れ!」

 リカルドの指示を受け、兵士さんたちは力強く『オーッ!』とときの声を上げた。彼の迷いのない采配さいはいと希望をいだかせるような空気が全体の士気を上げている。私も勇気が湧いてくる。


(つづく……)
 
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