嫁ぎ先は貧乏貴族ッ!? ~本当の豊かさをあなたとともに~

みすたぁ・ゆー

文字の大きさ
130 / 178
第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)

第1-5節:謎の才女による助け船

しおりを挟む
 
 当然、彼は本気でやっているわけではないだろうけど、ちょっぴり楽しそうにしているようも見える。またいつもの悪いクセというか、悪戯いたずら心が出ているみたいで、私は心の中で苦笑いを浮かべてしまう。

 一方、そんなことが分かるはずもないフレインさんは激しく取り乱しながら、思わず後ずさりをしている。

「ま、待てっ! 早まるなっ!」

「――何の騒ぎですか、これはっ!」

「っ!? ア、アリア様っ? な、なぜこちらに……?」

 その時、関所の奥から数人の屈強な兵士さんたちを引き連れて若い女性が現われた。

 彼女は周囲にいる関所の衛兵さんたちを強くにらみ付けながら、こちらに向かって真っ直ぐ歩み寄ってくる。

 それに対し、衛兵さんたちは彼女たちの後方に下がって姿勢を正すと、一様に素早い動作で敬礼をしてたたずんでいる。その様子はまるで海が真っ二つに割れていくかのごとくで、彼女の行く手を遮ることはない。

 どうやら彼女の名前はアリアさんというらしい。しかもフレインさんや関所の衛兵さんたちが恐縮していることを考えると、彼らよりも立場が上の人物なのだろう。

 彼女は肩の下まで綺麗きれいな金髪をストレートに伸ばし、穏やかそうな目には丸い眼鏡を掛けている。身長はリカルドと同じくらいに高く、落ち着いた雰囲気を漂わせている。仕事の出来る才女といった印象だろうか。

 年齢はおそらく私よりも何歳か上。また、肌は透き通るように綺麗きれいで、身なりも清潔感がある。同性の私でも思わず見とれてしまうくらいの美人だ。

「フレイン、この騒ぎは何事なのですか? 答えなさい」

「あ……いや……これは……」

「私がこの場にやってきたことに、随分と驚いているようですね? 想定外のことが起きたとでも言わんばかりでしょうか? 顔にそう書いてありますよ」

「け、決してそのようなことは……」

「リカルド様がフィルザードをご出立なさったとの報告が入り、私は急ぎ出迎えに参ってたのです。そして今、到着したというわけです。これはノエル様のご意思です。その旨を記した指示書もここにあります。いずれにせよ、まずはこの事態の顛末てんまつを説明してもらえますか?」

 アリアさんは眼鏡の位置を正すと、キリッとした瞳でフレインさんに迫った。彼女の周りにいる屈強な兵士さんたちも鋭い視線を彼に向けている。

 さすがにこうした状況になってしまっては、フレインさんも沈黙し続けるわけにはいかない。私たちとの間で起きたトラブルの一部始終を説明する。

 そしてその全てを聞き終えたアリアさんは納得したように小さくうなずく。

「――なるほど、そういうことでしたか。では、この御方が本物のリカルド様であることは私が保証しましょう。リカルド様と私は幼馴染みの間柄。間違えるはずがありません」

「し、しかし……」

「私が信用できないとでも言うのですか?」

「そ、そういうわけでは……ありませんが……」

「もし私たちの目の前にいるリカルド様が偽物だった時、私が全責任を負います。ですから皆様をお通ししなさい」

「ぎ、御意……」

 次々と発せられるアリアさんの真っ直ぐな言葉に、とうとうフレインさんは苦悶の表情を浮かべながらも首を縦に振った。

 おそらく裏で糸を引く人物の指示とアリアさんの指示の間で板挟みになって、彼としては深い葛藤があったんだろう。ただ、話の筋が通っていて論理も強固なのはアリアさんだから、最終的には彼女の指示に従わざるを得ないと判断したのだと思う。

 まぁ、ヴァーランド内で立場のある人がリカルドの身元を保証するなんて言ったら、それを突っぱねるのは難しいよね。――っていうか、まさかアリアさんがリカルドの幼馴染みだったなんて思わなかったけど。

 それはそれで私は聞いた瞬間に心臓が止まりそうになるくらい驚いたし……。

 リカルドにこんなにも美人で素敵な女性の幼馴染みがいたなんて、考えもしなかった。そしてどうしてもふたりの関係が気になって、頭の中がモヤモヤする。胸の奥もなんだか痛くて息苦しい。

 リカルドに視線を向けてみても、今のところは特に大きな反応を見せていない。さすがに炎の魔法を行使するのは止めているけど、淡々と事態の推移を見守っている。これでは彼の内面をうかがい知ることが出来ない。

 一方、アリアさんは自分の指示に従う姿勢を見せたフレインさんに対し、鋭かった表情を緩めて穏やかな瞳を向ける。

「関所の警備を厳重にせよとは、父の指示なのでしょう? ……フレイン、いつもありがとう。大丈夫、何かあれば私が間に入りましょう。この場にいる衛兵たちにも処分が下らないようにします。安心なさい」

「っ! ……過分なるご配慮……ありがとうございますッ!」

「さぁ、この場は私に任せて、あなたはもう下がりなさい。ほかの衛兵たちにも通常通りの任務に戻るよう指示を」

「かしこまりました!」

 フレインさんは敬礼をしながら返事をすると、関所の奥へと走って引っ込んだ。周りにいた関所の衛兵さんたちもそのあとに続く。


(つづく……)
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?

はくら(仮名)
恋愛
 ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。 ※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?

木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。 彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。 公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。 しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。 だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。 二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。 彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。 ※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。

有能女官の赴任先は辺境伯領

たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!! お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。 皆様、お気に入り登録ありがとうございました。 現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。 辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26) ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。 そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。 そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。   だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。 仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!? そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく…… ※お待たせしました。 ※他サイト様にも掲載中

ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい

藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。  現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。  魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。 「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」  なんですってー!?  魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。 ※全12万字くらいの作品です。 ※誤字脱字報告ありがとうございます!

処理中です...