140 / 178
第6幕:来るべき日の前奏曲(プレリュード)
第3-2節:スケジュールの確認
しおりを挟むもちろん、リカルドはアリアさんを単なる幼馴染みとして接しているに過ぎないだろうけど、それは分かっているけど、私の胸は強く締め付けられているような感じがして苦しい。そして自然と奥歯を噛み締めてしまっている。
これは嫉妬……なのかな……。
「で、アリア。このあとのスケジュールはどうなっている?」
「ス、スケジュールですかッ? あっ、は、はいっ! リカルド様たちを別宅にご案内したあとは、城内の執務室で公務を行う予定です! でも公務なら後回しにしようと思えば出来ますしっ、リカルド様のためなら時間を作らせていただきます!」
「……すまん、訊き方が悪かったな。キミの予定ではなく、僕やフィルザードの者たちのことについてだ」
「えぇっ!? あっ、たっ、大変失礼しました! 私っ、何を勘違いしてっ……!」
アリアさんは耳まで赤くして、激しく狼狽している。眼鏡はズレたまま、アタフタと落ち着きなく左右を見回して髪が大きく揺れている。
その様子を見てリカルドはプッと吹き出し、お腹を抱えて大笑いする。
「はっはっは! なるほど、それがキミの本音か! そうかそうか、そんなに僕と一緒に過ごしたかったか。まぁ、僕もアリアと思い出話に花を咲かせたいと思ってはいたがな」
「うぅ……意地悪ですよ、リカルド様……」
「話す機会はヴァーランド滞在中に作るつもりだから安心してくれ。で、そろそろこのあとの僕たちのスケジュールを教えてほしいのだが」
リカルドがそう問いかけると、アリアさんは眼鏡の位置を元に戻しつつ慌てて返事をする。
「は、はいっ! 皆様には別宅にて休息など、自由にお過ごしいただきます。ただし、警備上の問題がありますのでリカルド様はもちろん、同行の皆様も外出はお控えください。何かご要望があれば、別宅にいる執事やメイドにお申し付けいただければ幸いです」
「分かった。皆にはあとであらためて伝達しておこう」
「なお、リカルド様には夕方から城内の応接室へお越しいただきたく存じます。ほかにもすでにヴァーランド城へ到着なさっている貴族の皆様がいらっしゃいますので、その方々とご挨拶や歓談をお願いいたします」
「承知した。護衛のナイルも同行ということで良いな?」
リカルドは私たちの数歩ほど後方を歩くナイルさんに視線を向けつつ、念押しをするようにアリアさんに訊ねる。
それに対し、彼女はすっかり落ち着いた様子で小さく頷く。
「はい。その後はささやかな舞踏晩餐会を開催させていただきます。会議の出席者が全員揃った正式な舞踏晩餐会とは別の、仮の催しとなりますが。その場にはご夫人や側近の皆様も参加となりますので、正装やドレスのご準備をお願いします」
「僕たちに同行して世話を担当する使用人の格好は、清潔感のある状態であれば普段のものと同じで良いな?」
「はい、それで問題ありません。ただ、会場のスペースには限りがありますので、人数はなるべく最小限でお願いいたします」
「シャロン、聞いての通りだ。よろしく頼むぞ」
不意に話しかけられ、私は思わず目を丸くしながらドキッとしてしまった。
ただ、すぐに気を取り直し、慌てて大きく首を縦に振る。
「う、うん、任せて!」
「緊張するなという方が無理だろうが、だからといって気を張りすぎなくてもいいからな。何かあれば僕がなんとかする。安心してくれ」
「そう言ってくれると私も少しは気が楽になるよ」
「……社交界は色々とあるからな。キミは純粋だからこそ嫌悪感を覚えたり、胃が痛くなったりすることもあるだろう。もし苦しかったら、遠慮なく僕に言ってほしい。特に今回は本当に……本当にひとりで抱え込まないでくれ……。それが僕は心配なんだ……」
リカルドは私の手を取り、真顔で私を見つめた。その黒くて神秘的な黒い瞳には私だけが映り、キラキラと輝いている。
私は思わずボーッとその美しさに見とれてしまいつつ、次の瞬間には嬉しさがこみ上げてくる。そして握った手を通じて彼の力強さと温かさが伝わってきて、胸が熱くなる。
……気遣ってくれてアリガトね、リカルド。
「アリアも目の届く範囲で構わないから、なるべくシャロンのことを気にかけてやってくれ。頼む!」
「……っ、も、もちろんです! 全力でシャロン様をサポートします!」
一瞬の間が空いてから、アリアさんは慌てて晴れやかな笑みを浮かべて頷いた。
(つづく……)
10
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】 異世界に転生したと思ったら公爵令息の4番目の婚約者にされてしまいました。……はあ?
はくら(仮名)
恋愛
ある日、リーゼロッテは前世の記憶と女神によって転生させられたことを思い出す。当初は困惑していた彼女だったが、とにかく普段通りの生活と学園への登校のために外に出ると、その通学路の途中で貴族のヴォクス家の令息に見初められてしまい婚約させられてしまう。そしてヴォクス家に連れられていってしまった彼女が聞かされたのは、自分が4番目の婚約者であるという事実だった。
※本作は別ペンネームで『小説家になろう』にも掲載しています。
美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ
さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。
絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。
荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。
優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。
華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
妾の子だからといって、公爵家の令嬢を侮辱してただで済むと思っていたんですか?
木山楽斗
恋愛
公爵家の妾の子であるクラリアは、とある舞踏会にて二人の令嬢に詰められていた。
彼女達は、公爵家の汚点ともいえるクラリアのことを蔑み馬鹿にしていたのである。
公爵家の一員を侮辱するなど、本来であれば許されることではない。
しかし彼女達は、妾の子のことでムキになることはないと高を括っていた。
だが公爵家は彼女達に対して厳正なる抗議をしてきた。
二人が公爵家を侮辱したとして、糾弾したのである。
彼女達は何もわかっていなかったのだ。例え妾の子であろうとも、公爵家の一員であるクラリアを侮辱してただで済む訳がないということを。
※HOTランキング1位、小説、恋愛24hポイントランキング1位(2024/10/04) 皆さまの応援のおかげです。誠にありがとうございます。
有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
お気に入り1000ありがとうございます!!
お礼SS追加決定のため終了取下げいたします。
皆様、お気に入り登録ありがとうございました。
現在、お礼SSの準備中です。少々お待ちください。
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
ウッカリ死んだズボラ大魔導士は転生したので、遺した弟子に謝りたい
藤谷 要
恋愛
十六歳の庶民の女の子ミーナ。年頃にもかかわらず家事スキルが壊滅的で浮いた話が全くなかったが、突然大魔導士だった前世の記憶が突然よみがえった。
現世でも資質があったから、同じ道を目指すことにした。前世での弟子——マルクも探したかったから。師匠として最低だったから、彼に会って謝りたかった。死んでから三十年経っていたけど、同じ魔導士ならばきっと探しやすいだろうと考えていた。
魔導士になるために魔導学校の入学試験を受け、無事に合格できた。ところが、校長室に呼び出されて試験結果について問い質され、そこで弟子と再会したけど、彼はミーナが師匠だと信じてくれなかった。
「私のところに彼女の生まれ変わりが来たのは、君で二十五人目です」
なんですってー!?
魔導士最強だけどズボラで不器用なミーナと、彼女に対して恋愛的な期待感ゼロだけど絶対逃す気がないから外堀をひたすら埋めていく弟子マルクのラブコメです。
※全12万字くらいの作品です。
※誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる