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2章 呪われた炎
第54話 一番大切な人
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トレスから首都まで帰る道のりは、行きよりも数時間早く帰ってくることができた。移動中、馬の速度が落ちる度にセーレンさんが治癒魔法を使ってくれたおかげだ。僕たちは、自宅の前で馬をおり、馬たちをそのままにして家の中に駆けこんだ。
「みんな!」
僕とセーレンさんが部屋に入ると、カリンが身体を半分起こし、そのカリンに抱きついているディセの頭を撫でていた。
「う、うう……ピアーチェス様……ディセ……ディセのせいで……」
むせび泣いているディセ。
なんで……泣いて……
ピャーねぇの方を見る。輸血をしてるシューネさんの顔色は、昨日よりも幾分かいいように見える。でも、対するピャーねぇの顔は真っ青で、目を開けていなかった。
「……え?」
「ピャー様が……これ以上、輸血を止めたら……許さないって……」
セッテが泣きながら僕に報告してくる。
「セーレンさん!!」
「すぐに!ヒール!!」
セーレンさんがピャーねぇに向かってヒールを唱える。大きな緑色の光がセーレンさんの両手からあふれ出し、ピャーねぇの身体に吸い込まれていった。
僕は、姉さんの手を取って、祈るように膝をつく。姉さんの顔から目を離さない。怖くって、涙がにじんでくる。
でも、治癒魔法の緑色の光が浸透していくと、徐々に、ゆっくりと、ピャーねぇの顔色が戻っていくのがわかった。さっきまで青かった顔色は、いつもの綺麗なピャーねぇの顔色に戻ってくる。
僕はそれを見てから、ピャーねぇに刺さっている輸血チューブを乱暴に引き抜いた。引き抜いた先からヒールによって傷口が塞がり、そして、姉さんが目を開けた。
「…………ん……ジュナ?」
「バカやろう!」
僕は、こんな、輸血なんてバカなマネをした自分と、命懸けで無茶をした目の前の女の子に向かって、怒鳴った。
なんで輸血なんてものを提案したのか。自分のバカさ加減に嫌気がさして、大声を出す。
「バカ!ピャーねぇは!ホントにバカだ!!」
怒鳴って、怒鳴って、涙があふれ出た。
「僕が!なんでこんな!っー!!ごめん!!」
「なにを……怒ってますの?」
「セーレンさん!こっちの子も!」
キョトンとしているピャーねぇを無視して、涙を拭き、シューネさんの治療をお願いする。
「お任せ下さい!」
セーレンさんはすぐに移動して、シューネさんにもヒールをかけてくれた。でも、そんなことより、
「僕は!ピャーねぇが!1番!大切なんだ!」
目の前のベッドに横たわっている女の子に抱きつく。泣いてるのを見られたくなくって、ピャーねぇの肩越しに話を続けた。
「ジュナ?」
「ピャーねぇは!大切な人なんだ!だから!」
だから、シューネさんを助けるためだからって、無茶しないで欲しい。自分の命を優先して欲しい。でも、そんなこと言っても、この人には受け入れてもらえないことはわかっていた。この人は、大切な人を全力で助ける。たとえ自分の命をかけることになっても。
「だから!だから……」
そう思ったら、なんて言えばいいかわからなくなり、僕は言葉をつまらせた。涙だけが、ピャーねぇの肩口につたわっていく。
「ジュナ……わたくしも、あなたがなにより大切ですわ。でも、シューネも、もう家族ですのよ」
優しい声で、僕の頭を撫でながら、言い聞かせるように話すピャーねぇ。
「……でも、だめだ……こんなの……」
「うふふ、泣いてますの?かわいいですわ」
「泣いてるよ!ピャーねぇが死んだらって!思って!バカやろう!」
「ばかばか言わないでくださいまし……」
「ピャー様……ぐすっ……」
「う、うう、う……ディセは……」
僕が言いたいことを言い終わったころ、ディセとセッテが近づいてくる。2人ともピャーねぇに抱きついた。
「ディセ、さっきは、怒鳴ってすみませんでした」
「わたし……ピアーチェス様が……こわかった……」
「ごめんなさい、怒ってしまって……」
「違うんです……ピアーチェス様が死んじゃったらって……すごく、怖かったんです……うう……」
「ごめんなさい……わたくし……」
ピャーねぇは、ディセの頭を撫で続けた。セッテも、ディセのことを抱きしめてくれる。僕はその姿を見て、輸血のことをディセに一任したのは酷すぎたと反省した。あのとき、あの場で1番しっかりしてるディセにお願いしてしまったけど、ピャーねぇが危なくなったら輸血をやめさせろなんて判断、なかなかできるものではない。この場が落ち着いたら、ディセにちゃんと謝ろう。そう考えてから、セーレンさんの方に向き直る。
「……セーレンさん、シューネさんの容体は?」
「大丈夫です。助かります」
「良かった……」
シューネさんの方はというと、すっかり両手も再生し、顔色も正常にもどっていた。すやすやと眠っているように見える。
「あの、あの子もいいですか?かなり血を流したので」
カリンのことを指して、セーレンさんにお願いする。
「もちろんです」
そして、セーレンさんはカリンのことも快く治療してくれた。治療が終わったカリンは、すっと立ち上がる。
「まだ寝てた方がいいんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。さすがSランクの治癒魔法ですね、体調は万全です。ありがとうございました」
「いえ、私はピアーチェス様にいただいた力を使っただけですので。それに、身体は治っていても精神的には疲れがあるはずです。ご無理はなさらないでください」
セーレンさんが補足すると、カリンはぺこりと頭を下げて一歩下がった。そこに、ピャーねぇがやってくる。
「改めまして、セーレン・ブーケ殿、わたくしたちを救ってくださり、ありがとうございました」
ピャーねぇがスカートを両手でつまんで、お辞儀をした。丁寧に、王族を相手にするような仕草で。
「滅相もございません!頭をおあげ下さい!私はピアーチェス様とジュナリュシア様に忠誠を誓っております!何なりとお命じください!」
ピャーねぇの姿を見たセーレンさんは恐縮そうにしたあと、あわてて膝をついた。
「ありがとうございます。それで、あの子の容体はどうなのでしょう?なぜ目を覚さないのでしょうか?」
ピャーねぇがシューネさんの横に寄り添って、質問した。
「こちらの方は、怪我を負った際、相当な痛みを伴ったのかと思います。ヒールによって血液は再生しましたが、心が目を覚ますのを拒んでいるのかと思います。しかし、経験上、必ず目は覚ましますので大丈夫です」
「わかりました。ありがとうございます。わたくしの妹を救ってくれて」
「いえ……こちらの方も王族の方だったのですね」
シューネさんのことを知らないセーレンさんは、ピャーねぇの妹という言葉を聞き勘違いしたようだ。それに、この惨状がなんなのか気になるだろう。
「あー、セーレンさん、そのあたりは僕から説明しますね。こちらに」
僕はセーレンさんを連れて、部屋を出ようとする。
「お待ちなさい、ジュナ」
しかし、ピャーねぇに捕まってしまった。
「なに?」
「そのまえに、このカリンという方は誰なのですか?」
「え?あー……」
そういえばカリンとは初対面だったか。カリンのことをどうやって話したものか、頭を悩ませる。
「まぁ、あとで説明するよ。とりあえず、はるばる来てくれたセーレンさんに事情を説明するから」
そう言って誤魔化した。カリンのことは後で上手いこと説明しよう。
「……わかりましたわ。シューネが目を覚ましたときに、ぜんぶ説明してもらいますわよ」
「……はぁい」
僕は生返事をしたあと、セーレンさんとカリンを連れてリビングへと移動した。
「みんな!」
僕とセーレンさんが部屋に入ると、カリンが身体を半分起こし、そのカリンに抱きついているディセの頭を撫でていた。
「う、うう……ピアーチェス様……ディセ……ディセのせいで……」
むせび泣いているディセ。
なんで……泣いて……
ピャーねぇの方を見る。輸血をしてるシューネさんの顔色は、昨日よりも幾分かいいように見える。でも、対するピャーねぇの顔は真っ青で、目を開けていなかった。
「……え?」
「ピャー様が……これ以上、輸血を止めたら……許さないって……」
セッテが泣きながら僕に報告してくる。
「セーレンさん!!」
「すぐに!ヒール!!」
セーレンさんがピャーねぇに向かってヒールを唱える。大きな緑色の光がセーレンさんの両手からあふれ出し、ピャーねぇの身体に吸い込まれていった。
僕は、姉さんの手を取って、祈るように膝をつく。姉さんの顔から目を離さない。怖くって、涙がにじんでくる。
でも、治癒魔法の緑色の光が浸透していくと、徐々に、ゆっくりと、ピャーねぇの顔色が戻っていくのがわかった。さっきまで青かった顔色は、いつもの綺麗なピャーねぇの顔色に戻ってくる。
僕はそれを見てから、ピャーねぇに刺さっている輸血チューブを乱暴に引き抜いた。引き抜いた先からヒールによって傷口が塞がり、そして、姉さんが目を開けた。
「…………ん……ジュナ?」
「バカやろう!」
僕は、こんな、輸血なんてバカなマネをした自分と、命懸けで無茶をした目の前の女の子に向かって、怒鳴った。
なんで輸血なんてものを提案したのか。自分のバカさ加減に嫌気がさして、大声を出す。
「バカ!ピャーねぇは!ホントにバカだ!!」
怒鳴って、怒鳴って、涙があふれ出た。
「僕が!なんでこんな!っー!!ごめん!!」
「なにを……怒ってますの?」
「セーレンさん!こっちの子も!」
キョトンとしているピャーねぇを無視して、涙を拭き、シューネさんの治療をお願いする。
「お任せ下さい!」
セーレンさんはすぐに移動して、シューネさんにもヒールをかけてくれた。でも、そんなことより、
「僕は!ピャーねぇが!1番!大切なんだ!」
目の前のベッドに横たわっている女の子に抱きつく。泣いてるのを見られたくなくって、ピャーねぇの肩越しに話を続けた。
「ジュナ?」
「ピャーねぇは!大切な人なんだ!だから!」
だから、シューネさんを助けるためだからって、無茶しないで欲しい。自分の命を優先して欲しい。でも、そんなこと言っても、この人には受け入れてもらえないことはわかっていた。この人は、大切な人を全力で助ける。たとえ自分の命をかけることになっても。
「だから!だから……」
そう思ったら、なんて言えばいいかわからなくなり、僕は言葉をつまらせた。涙だけが、ピャーねぇの肩口につたわっていく。
「ジュナ……わたくしも、あなたがなにより大切ですわ。でも、シューネも、もう家族ですのよ」
優しい声で、僕の頭を撫でながら、言い聞かせるように話すピャーねぇ。
「……でも、だめだ……こんなの……」
「うふふ、泣いてますの?かわいいですわ」
「泣いてるよ!ピャーねぇが死んだらって!思って!バカやろう!」
「ばかばか言わないでくださいまし……」
「ピャー様……ぐすっ……」
「う、うう、う……ディセは……」
僕が言いたいことを言い終わったころ、ディセとセッテが近づいてくる。2人ともピャーねぇに抱きついた。
「ディセ、さっきは、怒鳴ってすみませんでした」
「わたし……ピアーチェス様が……こわかった……」
「ごめんなさい、怒ってしまって……」
「違うんです……ピアーチェス様が死んじゃったらって……すごく、怖かったんです……うう……」
「ごめんなさい……わたくし……」
ピャーねぇは、ディセの頭を撫で続けた。セッテも、ディセのことを抱きしめてくれる。僕はその姿を見て、輸血のことをディセに一任したのは酷すぎたと反省した。あのとき、あの場で1番しっかりしてるディセにお願いしてしまったけど、ピャーねぇが危なくなったら輸血をやめさせろなんて判断、なかなかできるものではない。この場が落ち着いたら、ディセにちゃんと謝ろう。そう考えてから、セーレンさんの方に向き直る。
「……セーレンさん、シューネさんの容体は?」
「大丈夫です。助かります」
「良かった……」
シューネさんの方はというと、すっかり両手も再生し、顔色も正常にもどっていた。すやすやと眠っているように見える。
「あの、あの子もいいですか?かなり血を流したので」
カリンのことを指して、セーレンさんにお願いする。
「もちろんです」
そして、セーレンさんはカリンのことも快く治療してくれた。治療が終わったカリンは、すっと立ち上がる。
「まだ寝てた方がいいんじゃない?」
「いえ、大丈夫です。さすがSランクの治癒魔法ですね、体調は万全です。ありがとうございました」
「いえ、私はピアーチェス様にいただいた力を使っただけですので。それに、身体は治っていても精神的には疲れがあるはずです。ご無理はなさらないでください」
セーレンさんが補足すると、カリンはぺこりと頭を下げて一歩下がった。そこに、ピャーねぇがやってくる。
「改めまして、セーレン・ブーケ殿、わたくしたちを救ってくださり、ありがとうございました」
ピャーねぇがスカートを両手でつまんで、お辞儀をした。丁寧に、王族を相手にするような仕草で。
「滅相もございません!頭をおあげ下さい!私はピアーチェス様とジュナリュシア様に忠誠を誓っております!何なりとお命じください!」
ピャーねぇの姿を見たセーレンさんは恐縮そうにしたあと、あわてて膝をついた。
「ありがとうございます。それで、あの子の容体はどうなのでしょう?なぜ目を覚さないのでしょうか?」
ピャーねぇがシューネさんの横に寄り添って、質問した。
「こちらの方は、怪我を負った際、相当な痛みを伴ったのかと思います。ヒールによって血液は再生しましたが、心が目を覚ますのを拒んでいるのかと思います。しかし、経験上、必ず目は覚ましますので大丈夫です」
「わかりました。ありがとうございます。わたくしの妹を救ってくれて」
「いえ……こちらの方も王族の方だったのですね」
シューネさんのことを知らないセーレンさんは、ピャーねぇの妹という言葉を聞き勘違いしたようだ。それに、この惨状がなんなのか気になるだろう。
「あー、セーレンさん、そのあたりは僕から説明しますね。こちらに」
僕はセーレンさんを連れて、部屋を出ようとする。
「お待ちなさい、ジュナ」
しかし、ピャーねぇに捕まってしまった。
「なに?」
「そのまえに、このカリンという方は誰なのですか?」
「え?あー……」
そういえばカリンとは初対面だったか。カリンのことをどうやって話したものか、頭を悩ませる。
「まぁ、あとで説明するよ。とりあえず、はるばる来てくれたセーレンさんに事情を説明するから」
そう言って誤魔化した。カリンのことは後で上手いこと説明しよう。
「……わかりましたわ。シューネが目を覚ましたときに、ぜんぶ説明してもらいますわよ」
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