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番外編
隼ロス ―ドロドロ崩壊編―
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会場を出てから何度も隼から電話があったけど、
声を聞いたら涙腺が崩壊しそうで……
だから俺は、携帯を無視してバスに乗った。
そこでようやく、クッキーの包みを入れた袋に定期を入れていたことに気づいた。
そっか、そのことで電話くれてたんだ。
……俺のために、何度も。
胸がずきっと痛んだ。
でも、隼も明後日には帰ってくるし、その時受け取ればいい。
そう思って、お財布から小銭を取り出した。
バスに乗り、後ろへ歩いていたら――
窓の向こうに、隼が走ってくるのが見えた。
必死に、汗だくで追いかけてきている。
息が切れて、今にも倒れそうで。
公開練習をすっ飛ばして、来てくれた……
俺のために……?
また涙があふれて、喉が熱くなった。
ねぇ隼、もしかして俺たちはまだ、終わってない?
一番後ろの席に座り、窓越しにその姿を見つめる。
隼が車道に飛び出した。
危ない!
車が急ブレーキをかける。
それでも隼は何事もなかったように、まっすぐ俺だけを追いかけてくる。
思わず携帯を取り出し、電話をかけた。
隼は走りながら電話に出る。
『直央!!!』
「隼……危ない……から」
荒い息遣いが、電話越しにも伝わってくる。
『……泣いてる?』
「泣いて……ない」
『何が……あった?』
隼がもう俺なんかいらないんじゃないかって、怖かったから。
でも、やっぱり俺たちは大丈夫なんじゃないかって……
そう思っていいんだよね?
喉がつかえて、答えられなかった。
電話越しに車のクラクションが聞こえてくる。
このままじゃ、駄目だ。
バスを降りよう。
停止ボタンに手を伸ばした、その時――
美人セッターが自転車で追いかけてくるのが見えた。
自転車を放り出し、隼の腕にしがみついて歩道へ引っ張っていく。
ふらっとよろめいた隼を、しっかり抱きとめる。
「あ……」
ズキン――
……そうだよね。
隼には、もうあいつがいる。
もう、俺なんかいなくていいよね。
怒りがふつふつと湧き上がった。
分かっていたのに、簡単なことで勝手に期待してしまった――誰でもない、自分に対して。
『直央……駅で……待ってて』
「待たない」
『直央?』
「家に来ても無駄だから。おじさんの温泉宿に行くから」
『温泉……?』
どすの利いた低い声。隼が不機嫌なのが分かる。
でも――
「もう、隼は関係ない」
電話の向こうから、ひゅっと息をのむ音が聞こえた気がした。
隼の周りに、怒気のようなどす暗い空気があふれ出しているのが見えた。
でも、これからは美人セッターが何とかするよね。
そのまま電話を切ったら、
自分の世界が崩れ落ちるような喪失感が襲ってきた。
せっかく来てくれたのに、
どうしてこんな言い方しかできなかったんだろう。
もっと可愛げがあったら、隼だって――?
バスが加速し、遠ざかっていく。
隼が視界から消えた。
それが距離のせいなのか、涙のせいなのか……もう分からなかった。
俺たちはいつか、ただの幼馴染に戻れるのだろうか。
隼が美人セッターと一緒にいるのを、
笑顔で祝福できる日なんて来るんだろうか。
それとも、本当に嫌いになれたら楽なのかな。
せっかくの温泉宿なのに、俺は布団をかぶって泣き続けた。
ねぇ隼、枕が濡れて気持ち悪いよ。
マナーモードで震える携帯を、布団のなかでずっと握りしめていた。
――今はまだ、隼の存在を感じていたかったから。
ごめんね、昌おじさん。
心配性の母ちゃんの前じゃ泣けなかったから……ほんと助かった。
隼が嫌がっていた温泉は……
隼のキスマークが身体中に残っていて、結局、部屋のお風呂を借りるはめになった。
隼、自分のどこを見ても、お前の痕跡ばかりで……苦しいよ。
でもできたら、もう少し、このままで……隼を感じさせていてください。
声を聞いたら涙腺が崩壊しそうで……
だから俺は、携帯を無視してバスに乗った。
そこでようやく、クッキーの包みを入れた袋に定期を入れていたことに気づいた。
そっか、そのことで電話くれてたんだ。
……俺のために、何度も。
胸がずきっと痛んだ。
でも、隼も明後日には帰ってくるし、その時受け取ればいい。
そう思って、お財布から小銭を取り出した。
バスに乗り、後ろへ歩いていたら――
窓の向こうに、隼が走ってくるのが見えた。
必死に、汗だくで追いかけてきている。
息が切れて、今にも倒れそうで。
公開練習をすっ飛ばして、来てくれた……
俺のために……?
また涙があふれて、喉が熱くなった。
ねぇ隼、もしかして俺たちはまだ、終わってない?
一番後ろの席に座り、窓越しにその姿を見つめる。
隼が車道に飛び出した。
危ない!
車が急ブレーキをかける。
それでも隼は何事もなかったように、まっすぐ俺だけを追いかけてくる。
思わず携帯を取り出し、電話をかけた。
隼は走りながら電話に出る。
『直央!!!』
「隼……危ない……から」
荒い息遣いが、電話越しにも伝わってくる。
『……泣いてる?』
「泣いて……ない」
『何が……あった?』
隼がもう俺なんかいらないんじゃないかって、怖かったから。
でも、やっぱり俺たちは大丈夫なんじゃないかって……
そう思っていいんだよね?
喉がつかえて、答えられなかった。
電話越しに車のクラクションが聞こえてくる。
このままじゃ、駄目だ。
バスを降りよう。
停止ボタンに手を伸ばした、その時――
美人セッターが自転車で追いかけてくるのが見えた。
自転車を放り出し、隼の腕にしがみついて歩道へ引っ張っていく。
ふらっとよろめいた隼を、しっかり抱きとめる。
「あ……」
ズキン――
……そうだよね。
隼には、もうあいつがいる。
もう、俺なんかいなくていいよね。
怒りがふつふつと湧き上がった。
分かっていたのに、簡単なことで勝手に期待してしまった――誰でもない、自分に対して。
『直央……駅で……待ってて』
「待たない」
『直央?』
「家に来ても無駄だから。おじさんの温泉宿に行くから」
『温泉……?』
どすの利いた低い声。隼が不機嫌なのが分かる。
でも――
「もう、隼は関係ない」
電話の向こうから、ひゅっと息をのむ音が聞こえた気がした。
隼の周りに、怒気のようなどす暗い空気があふれ出しているのが見えた。
でも、これからは美人セッターが何とかするよね。
そのまま電話を切ったら、
自分の世界が崩れ落ちるような喪失感が襲ってきた。
せっかく来てくれたのに、
どうしてこんな言い方しかできなかったんだろう。
もっと可愛げがあったら、隼だって――?
バスが加速し、遠ざかっていく。
隼が視界から消えた。
それが距離のせいなのか、涙のせいなのか……もう分からなかった。
俺たちはいつか、ただの幼馴染に戻れるのだろうか。
隼が美人セッターと一緒にいるのを、
笑顔で祝福できる日なんて来るんだろうか。
それとも、本当に嫌いになれたら楽なのかな。
せっかくの温泉宿なのに、俺は布団をかぶって泣き続けた。
ねぇ隼、枕が濡れて気持ち悪いよ。
マナーモードで震える携帯を、布団のなかでずっと握りしめていた。
――今はまだ、隼の存在を感じていたかったから。
ごめんね、昌おじさん。
心配性の母ちゃんの前じゃ泣けなかったから……ほんと助かった。
隼が嫌がっていた温泉は……
隼のキスマークが身体中に残っていて、結局、部屋のお風呂を借りるはめになった。
隼、自分のどこを見ても、お前の痕跡ばかりで……苦しいよ。
でもできたら、もう少し、このままで……隼を感じさせていてください。
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