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おまけ
ユリタンの非日常な日常
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気づけば俺は、自分の背丈より大きな黄金の大蛇に巻き付かれていた。
く…苦しい……
緑の目が俺を射抜き、大口が俺の頭を飲み込もうと――
!!!
ぱっと目が覚めた。
……夢!?よかったぁ。
でもまだ苦しい!
見れば――俺を締め上げているのは、レイの長い腕と脚。
まるで大蛇のように絡みついていて。
恐る恐る顔を向けると――
「ひっ……!」
レイは目を閉じて眠って……いなかった。
大蛇と同じ緑の瞳で、俺をじーっと見据えていて――喉が凍りついた。
「あの…いつから見て……?」
「ユリタンが寝落ちてからかな」
寝ないでずっと!?
しかもこの巻き付きで!?
その顔が近づいてきて――
「食べられる!」
俺は思わず目をぎゅっと閉じた。
ちゅっ。
……可愛いキス。
「……え?」
「寝ぼけたユリタン……可愛い」
レイの美しい眉が、きゅっと寄る。
一瞬、胸がざわつくほど真剣な表情に変わって――
「ユリタン……今日はどうしても仕事に行かなきゃならなくて」
あ、そっか……。
もう一週間、朝から晩まで二人でベッドの上で過ごしていて……。
そりゃそうだよね……。
レイは俺みたいに無職じゃないし、責任のある立場なんだから。
「決してユリタンのことは一時たりとも忘れないよ。私がユリタンのことを思っていることを、どうか忘れないで」
レイが俺の手をとって、必死に何かを言ってる。
……そういえば、この一週間、俺はベッドルームから一歩も出ていなかった。
食事はいつも、俺が寝ているあいだにレイが用意して、ベッドの上で餌付け。
バスルームだって部屋についているから、外に出る理由なんてほんとになかった。
いつもいつもレイの執着に包まれて……ぬくぬくと勝手に安心してた。
――でも、それじゃダメだ。
俺だって、ちゃんと働いて世界と繋がっていたい。
よし、今日は仕事を探しに行こう。まずはハローワークかな。
「じゃあ、俺も一緒に出ます」
俺が背を起こそうとすると、レイがしっかりと肩を押さえてきた。
そのまま俺の首に顔をうずめて――
ちくり。
思いっきり目立つところに、キスマークつけてきやがるんですが?
「俺も一緒に出るって、たった今言いましたよね?」
「外出するなら、何十にも守護をかけないとね」
うん、わけわかんない。
ふっとレイが悲しそうな表情をする。
ばさばさの長いまつ毛が緑の瞳に影をつくって……
あ……哀愁が……。
ずきゅんと俺の心臓を締め付ける。
美の化身のようなレイが哀愁を漂わせると、あまりにも悲しそうでやりきれなくて。
レイをここまで悲しませてまで外出する必要はあるのだろうか。
やっぱり、今日のところは家にいることにしたほうが……。
この部屋はレイの指紋じゃないと開かない仕様。
せめてこの部屋から出ておきたい。そう、7日ぶりに。
「もう起きたんで……なにか作って待ってますね」
完璧な口実のはず!
喜んでね!
でも、レイの眉はさらにきゅっと寄った。
「作るって……材料は?」
「それは、もちろん買い出しに……」
ちょっとくらいなら……キスマークも……ね。
「ユリタン、ストーカーがいたよね? 危ないよね?」
「それは一応解決したんで」
「解決って? そんな変態に捕まったら、もう二度と出してもらえなくなるかも知れないよね?」
はい、正解!
今まさにストーカーに捕まって出してもらえてません!
「それに獣もいるよね? ユリタンは頭からぱくりと食べられてしまうかも知れないよね?」
それも正解!
目の前の獣にいつもぱくりぱくりと食われています!
俺はジト――っとレイをにらむ。
でも……この人、何言っても分からないんだろうな。
そういえば会話、通じたことあったっけ?
……ああ、お互いに眉間に深いしわ。
まるで俺たちの意思疎通の困難さの象徴。
「……分かりました。じゃあ、あり合わせで作ります」
「でも……ユリタンが包丁持つなんて……もし指を切ったら……私は心配で仕事に手がつかないかな。やっぱり寝て待っていようか。この部屋なら監視カメラも完全配備だし、サーモセンサーで体温変化があれば連絡も入るし」
絶対にこの部屋から出たい!
いや、出る!
「じゃあ、包丁つかわない料理でも……」
……できるかな?
レタスちぎるとか?
ザ・男料理みたいな?
「でも火を使うでしょう?ユリタンがやけどしたらと思うと……それに今夜も寝かせてあげられないから……ユリタンは今のうちに寝て待っていよう?」
やけどって、なにそれ?!
「あのっ!!俺、もう子供じゃないんで!」
「でも、ユリタンはユリタンでしょう?」
どういうこと!?!?
俺は頭を抱えてうめく。
ああ、イライラが止まらない……!
目の前が真っ赤に染まっていく。
もし俺に尻尾があったら、ビタンビタン床を叩きつけてるのに。
ああ、尻尾が欲しい!
切実に――
「尻尾が……!ああ、尻尾が!!」
レイが俺の様子を見て、さっと携帯を出す。
「安藤?ユリタンの調子がまだ良くないようだから、今日は休みで」
『てめぇ!蜜月だろ!やってることはやってんだろうが!』
電話の向こうからぎゃーぎゃー怒鳴り声。
でも俺はそれどころじゃない!
尻尾の代わりに、ぽすっぽすっと枕を叩き続ける俺。
「尻尾……尻尾……!」
レイが携帯を俺に向けると、
さっきまでギャーギャーわめいていた声が、ぴたりと止んだ。
部屋には俺のつぶやきと枕の音だけが響く。
『やべぇな……分かった。今日は許す。でも……お前、レオぴょんみたいに逃げられたくなかったら――』
……こうして、急に心を入れ替えたレイと一緒に外出することに!
アレクシスさまが何か言ってくれたらしい。
異世界でも現実世界でも、俺を救いあげてくれて、また頑張ろうって思わせてくれる。
どの世界においても俺の推しだ!
俺はクローゼットから、前のアパート時代の持ち物をあさる。
出てきたのは履歴書。職歴を書き足す。
……たった一行だけ。
新しい資格も、何もなし。
ああ……あんなに頑張って就活したのに。
たった半年で辞めちゃったんだなぁ。
そのあと、レイのコーディネートで――
シルクの白シャツ、深緑のパンツ。
キスマーク隠しの鮮やかな緑スカーフ(金字刺繍入り)。
……いやいや。現実社会なんだから。
異世界チックな自分色コーデ、やめませんか?
そして俺は高級車に押し込まれた。
「まだまだ暑い!」と文句を言った結果、車内は冷蔵庫みたいにきんきん。
ごめんなさい、運転手さん。
そうして俺たちは――
高級車でハローワークに到着。
……なんかもう、ごめんなさい、皆さん。
それでも、ただ外に出ただけなのに、
胸の奥の空気が一気に入れ替わった気がした。
今は、いかにも生命力があとちょっとで尽きそうな疲れた職員さんと面談中。
「えっと…正社員希望、年収希望なし、住所は…タワーマンション60階ペントハウス…?」
「それは、60階全面、私の所有ということだね」
「……はぁ」
遠い目。
「あ、でも俺、まだベッドルームでしか過ごしてなくて……夜景が綺麗だなって程度で、よく分かってないです」
「……はぁ」
さらに遠い目。
あ、これって言う必要なかった?
「えっと……王子さんは左手薬指に指輪をされていますし、独身っていうのは書き間違えでは……」
レイがさらさらと流れる髪をゆらして、うんうんと頷く。
「そうだね、これは私と永遠の愛を誓い合った指輪で間違いないから、既婚と書き直そうか」
「婚約指輪で、独身です!」
「……はぁ」
あまりに遠い目。
生命力のつきかけも相まって、そろそろ幽体離脱ですか?って思った時――
「あっ!!!」
急に生命力を取り戻した職員さんが、俺の指輪を凝視する。
「これ……あれですよね?!以前びぃえる商事の特集で出ていた、カルティ〇とタッグを組んで開発した世界最小GPS搭載リング!私こういう科学的挑戦、大好きなんです!」
え、これGPS入ってたの?!
ぎょっとしてレイを振り向く。
「もちろんだよ。ユリタンがどこでさらわれても、どこへ行っても、私が必ず見つけ出して、この腕の中に取り戻す。だから……安心して?」
そっと俺の手をとり、優雅な所作でキスを落とすレイ。
――いやいや、安心してって……
不安と不満が胸に渦巻いているんですけど?!
この人、どうしてここまでストーカー行為を胸張って肯定できるんだろうか。
でも、それがレイの愛し方で。
重いし、うざいし、執着丸出しだし。
……息苦しいのに、なぜかこの腕の中じゃないと息ができない気がして。
俺はますます自分が分からなくなる。
職員が目を輝かせて、ぐいっと身を乗り出す。
「それに! このエメラルドの下には奇跡と呼ぶしかないレベルの精密機械が!」
「あの……仕事の話に……」
「そうだね、でも私とユリタンとの出会いの方が奇跡と呼ぶにはふさわしいかな?」
「だから……仕事を紹介……」
今度は机を叩きそうな勢いで、さらに身を乗り出す。
「さらに! この指輪、東京のど真ん中に一軒家が立つ値段で!」
「ひっ……!」
レイが涼しい顔で肩をすくめる。
「まあでも、そんな値段では私のユリタンへの愛は測れないかな?」
「その……そろそろ仕事を……」
ついに職員が立ち上がり、声を張り上げた。
「そして! この金属部分が形状記憶で二度と抜けないという!」
「えーーー……」
その後も職員さんの科学トークが止まらず。
レイも斜め上の解答を連発。
俺の仕事探しは、完全に俺たちの間をすり抜けていき……
結局、仕事を見つける以前に、仕事の話すらできず。
でも、アレクシスさまが背中を押してくれたから。
まだまだいびつで、束縛全開ではあるけれど、
ちょっとだけレイが俺の自由を認めようとしてくれたから。
今回は空振りだったけど……
また次も頑張ろう――そう思えた。
く…苦しい……
緑の目が俺を射抜き、大口が俺の頭を飲み込もうと――
!!!
ぱっと目が覚めた。
……夢!?よかったぁ。
でもまだ苦しい!
見れば――俺を締め上げているのは、レイの長い腕と脚。
まるで大蛇のように絡みついていて。
恐る恐る顔を向けると――
「ひっ……!」
レイは目を閉じて眠って……いなかった。
大蛇と同じ緑の瞳で、俺をじーっと見据えていて――喉が凍りついた。
「あの…いつから見て……?」
「ユリタンが寝落ちてからかな」
寝ないでずっと!?
しかもこの巻き付きで!?
その顔が近づいてきて――
「食べられる!」
俺は思わず目をぎゅっと閉じた。
ちゅっ。
……可愛いキス。
「……え?」
「寝ぼけたユリタン……可愛い」
レイの美しい眉が、きゅっと寄る。
一瞬、胸がざわつくほど真剣な表情に変わって――
「ユリタン……今日はどうしても仕事に行かなきゃならなくて」
あ、そっか……。
もう一週間、朝から晩まで二人でベッドの上で過ごしていて……。
そりゃそうだよね……。
レイは俺みたいに無職じゃないし、責任のある立場なんだから。
「決してユリタンのことは一時たりとも忘れないよ。私がユリタンのことを思っていることを、どうか忘れないで」
レイが俺の手をとって、必死に何かを言ってる。
……そういえば、この一週間、俺はベッドルームから一歩も出ていなかった。
食事はいつも、俺が寝ているあいだにレイが用意して、ベッドの上で餌付け。
バスルームだって部屋についているから、外に出る理由なんてほんとになかった。
いつもいつもレイの執着に包まれて……ぬくぬくと勝手に安心してた。
――でも、それじゃダメだ。
俺だって、ちゃんと働いて世界と繋がっていたい。
よし、今日は仕事を探しに行こう。まずはハローワークかな。
「じゃあ、俺も一緒に出ます」
俺が背を起こそうとすると、レイがしっかりと肩を押さえてきた。
そのまま俺の首に顔をうずめて――
ちくり。
思いっきり目立つところに、キスマークつけてきやがるんですが?
「俺も一緒に出るって、たった今言いましたよね?」
「外出するなら、何十にも守護をかけないとね」
うん、わけわかんない。
ふっとレイが悲しそうな表情をする。
ばさばさの長いまつ毛が緑の瞳に影をつくって……
あ……哀愁が……。
ずきゅんと俺の心臓を締め付ける。
美の化身のようなレイが哀愁を漂わせると、あまりにも悲しそうでやりきれなくて。
レイをここまで悲しませてまで外出する必要はあるのだろうか。
やっぱり、今日のところは家にいることにしたほうが……。
この部屋はレイの指紋じゃないと開かない仕様。
せめてこの部屋から出ておきたい。そう、7日ぶりに。
「もう起きたんで……なにか作って待ってますね」
完璧な口実のはず!
喜んでね!
でも、レイの眉はさらにきゅっと寄った。
「作るって……材料は?」
「それは、もちろん買い出しに……」
ちょっとくらいなら……キスマークも……ね。
「ユリタン、ストーカーがいたよね? 危ないよね?」
「それは一応解決したんで」
「解決って? そんな変態に捕まったら、もう二度と出してもらえなくなるかも知れないよね?」
はい、正解!
今まさにストーカーに捕まって出してもらえてません!
「それに獣もいるよね? ユリタンは頭からぱくりと食べられてしまうかも知れないよね?」
それも正解!
目の前の獣にいつもぱくりぱくりと食われています!
俺はジト――っとレイをにらむ。
でも……この人、何言っても分からないんだろうな。
そういえば会話、通じたことあったっけ?
……ああ、お互いに眉間に深いしわ。
まるで俺たちの意思疎通の困難さの象徴。
「……分かりました。じゃあ、あり合わせで作ります」
「でも……ユリタンが包丁持つなんて……もし指を切ったら……私は心配で仕事に手がつかないかな。やっぱり寝て待っていようか。この部屋なら監視カメラも完全配備だし、サーモセンサーで体温変化があれば連絡も入るし」
絶対にこの部屋から出たい!
いや、出る!
「じゃあ、包丁つかわない料理でも……」
……できるかな?
レタスちぎるとか?
ザ・男料理みたいな?
「でも火を使うでしょう?ユリタンがやけどしたらと思うと……それに今夜も寝かせてあげられないから……ユリタンは今のうちに寝て待っていよう?」
やけどって、なにそれ?!
「あのっ!!俺、もう子供じゃないんで!」
「でも、ユリタンはユリタンでしょう?」
どういうこと!?!?
俺は頭を抱えてうめく。
ああ、イライラが止まらない……!
目の前が真っ赤に染まっていく。
もし俺に尻尾があったら、ビタンビタン床を叩きつけてるのに。
ああ、尻尾が欲しい!
切実に――
「尻尾が……!ああ、尻尾が!!」
レイが俺の様子を見て、さっと携帯を出す。
「安藤?ユリタンの調子がまだ良くないようだから、今日は休みで」
『てめぇ!蜜月だろ!やってることはやってんだろうが!』
電話の向こうからぎゃーぎゃー怒鳴り声。
でも俺はそれどころじゃない!
尻尾の代わりに、ぽすっぽすっと枕を叩き続ける俺。
「尻尾……尻尾……!」
レイが携帯を俺に向けると、
さっきまでギャーギャーわめいていた声が、ぴたりと止んだ。
部屋には俺のつぶやきと枕の音だけが響く。
『やべぇな……分かった。今日は許す。でも……お前、レオぴょんみたいに逃げられたくなかったら――』
……こうして、急に心を入れ替えたレイと一緒に外出することに!
アレクシスさまが何か言ってくれたらしい。
異世界でも現実世界でも、俺を救いあげてくれて、また頑張ろうって思わせてくれる。
どの世界においても俺の推しだ!
俺はクローゼットから、前のアパート時代の持ち物をあさる。
出てきたのは履歴書。職歴を書き足す。
……たった一行だけ。
新しい資格も、何もなし。
ああ……あんなに頑張って就活したのに。
たった半年で辞めちゃったんだなぁ。
そのあと、レイのコーディネートで――
シルクの白シャツ、深緑のパンツ。
キスマーク隠しの鮮やかな緑スカーフ(金字刺繍入り)。
……いやいや。現実社会なんだから。
異世界チックな自分色コーデ、やめませんか?
そして俺は高級車に押し込まれた。
「まだまだ暑い!」と文句を言った結果、車内は冷蔵庫みたいにきんきん。
ごめんなさい、運転手さん。
そうして俺たちは――
高級車でハローワークに到着。
……なんかもう、ごめんなさい、皆さん。
それでも、ただ外に出ただけなのに、
胸の奥の空気が一気に入れ替わった気がした。
今は、いかにも生命力があとちょっとで尽きそうな疲れた職員さんと面談中。
「えっと…正社員希望、年収希望なし、住所は…タワーマンション60階ペントハウス…?」
「それは、60階全面、私の所有ということだね」
「……はぁ」
遠い目。
「あ、でも俺、まだベッドルームでしか過ごしてなくて……夜景が綺麗だなって程度で、よく分かってないです」
「……はぁ」
さらに遠い目。
あ、これって言う必要なかった?
「えっと……王子さんは左手薬指に指輪をされていますし、独身っていうのは書き間違えでは……」
レイがさらさらと流れる髪をゆらして、うんうんと頷く。
「そうだね、これは私と永遠の愛を誓い合った指輪で間違いないから、既婚と書き直そうか」
「婚約指輪で、独身です!」
「……はぁ」
あまりに遠い目。
生命力のつきかけも相まって、そろそろ幽体離脱ですか?って思った時――
「あっ!!!」
急に生命力を取り戻した職員さんが、俺の指輪を凝視する。
「これ……あれですよね?!以前びぃえる商事の特集で出ていた、カルティ〇とタッグを組んで開発した世界最小GPS搭載リング!私こういう科学的挑戦、大好きなんです!」
え、これGPS入ってたの?!
ぎょっとしてレイを振り向く。
「もちろんだよ。ユリタンがどこでさらわれても、どこへ行っても、私が必ず見つけ出して、この腕の中に取り戻す。だから……安心して?」
そっと俺の手をとり、優雅な所作でキスを落とすレイ。
――いやいや、安心してって……
不安と不満が胸に渦巻いているんですけど?!
この人、どうしてここまでストーカー行為を胸張って肯定できるんだろうか。
でも、それがレイの愛し方で。
重いし、うざいし、執着丸出しだし。
……息苦しいのに、なぜかこの腕の中じゃないと息ができない気がして。
俺はますます自分が分からなくなる。
職員が目を輝かせて、ぐいっと身を乗り出す。
「それに! このエメラルドの下には奇跡と呼ぶしかないレベルの精密機械が!」
「あの……仕事の話に……」
「そうだね、でも私とユリタンとの出会いの方が奇跡と呼ぶにはふさわしいかな?」
「だから……仕事を紹介……」
今度は机を叩きそうな勢いで、さらに身を乗り出す。
「さらに! この指輪、東京のど真ん中に一軒家が立つ値段で!」
「ひっ……!」
レイが涼しい顔で肩をすくめる。
「まあでも、そんな値段では私のユリタンへの愛は測れないかな?」
「その……そろそろ仕事を……」
ついに職員が立ち上がり、声を張り上げた。
「そして! この金属部分が形状記憶で二度と抜けないという!」
「えーーー……」
その後も職員さんの科学トークが止まらず。
レイも斜め上の解答を連発。
俺の仕事探しは、完全に俺たちの間をすり抜けていき……
結局、仕事を見つける以前に、仕事の話すらできず。
でも、アレクシスさまが背中を押してくれたから。
まだまだいびつで、束縛全開ではあるけれど、
ちょっとだけレイが俺の自由を認めようとしてくれたから。
今回は空振りだったけど……
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