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証言者たち
オットーの証言~禁断の魔術~その3
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クララの質問にオットーは答える。
「うむ。話には、まだまだ続きがある。チューリンを倒した後、私たちはその場に来ていた帝国軍にチューリン殺害の罪で捕えられてしまうんだ。でも、ちょうどその時、皇帝が謁見の間から出てきて、師だけ解放しろと言って、師と皇帝は一緒に謁見の間に入ってしまった。アクーニナや私たちはそのまま牢に入れられてしまったので、この後の話は師本人から伝え聞いた話だ」。
イリーナとクララは固唾をのんで話に聞き入る。
「実は皇帝も偽物で、アーランドソンという魔術師によって体を乗っ取られていたんだ。その魔術はヴィット王国で使用が禁止されているもので、憑依魔術という “禁断の魔術” だったらしい。そのアーランドソンは、次の憑依する体を捜していたんだよ。島に師を行かせたのは、そのテストだったのさ。島で生き残れるほどの剣の腕や才覚の持ち主であれば、次の体としてふさわしいと。そして、皇帝は師の体を乗っ取ろうとして、そこで、戦いが起こった。皇帝の魔術も強力で師も危なかったらしい。もう、だめだと思ったところをオレガが助けたんだ」。
「オレガ?!」
「そう、オレガ・ジベリゴワ。師の弟子だが、その時は城で働くただの召使いだったんだが、彼女がその場に居合わせて、師がやられそうになったところを助けたそうだ。彼女がアーランドソンに剣を突き刺したことで隙ができ、師はその隙をついて倒したと言っていた」。
驚きの証言だった。
皇帝が魔術師に体を乗っ取られていた偽物だって? そして、それをユルゲンが倒したという。
まったく想像もできない内容だった。ユルゲンが倒した翼竜の事件と、“チューリン事件” は全く関係のない出来事だと思っていたが、そんな繋がりがあったとは。
「皇帝は体を乗っ取られて死んでいたので、師が倒したのは偽の皇帝ということで、罪にはならずに済んだ。そして、娘のイリアが即位するが、彼女は国内の混乱を恐れて皇帝が偽物であったことは完全に秘密にされ、死んでいたことも半年間伏せられた。そして、この“チューリン事件”と呼ばれるようになった騒動は、側近チューリンが、権力を不法に手中にしていたということで、公式には皇帝親衛隊によって排除されたということなった」。
「そのアーランドソンという魔術師の事は?」
「もちろん、表には一切公表されていないんだよ。だから誰も知らないだろう? アーランドソンが皇帝の体を乗っ取っていた偽物だった事は、師によると、本人が倒される直前にそう言っていたそうだ」。
「なぜ、公表されなかったのでしょう?」
「そうだなあ…。帝国の頃は、その事が公表されると体制の維持に悪い影響があるから、おそらくそうしたんだろう。革命後に人民共和国政府がそのことを公開されないのは、多分、帝国は、この事件を文書として残していなかったんじゃないかな。いまの政府も帝政時代の文書は全部調べているはずだしね。師も “回想録”には書かなったようだし、この事実を知るのは限られたごくわずかな人間だけだ」。
「「へー」」。
イリーナとクララは感嘆の声を上げた。
「こんな、貴重な話が聞けて、とてもうれしいです」。
「おどろきです」。
オットーは微笑んだ。
「よかったね」。
三人は他にも、傭兵部隊の頃の話を聞いたりするなど、しばらく雑談をする。
クララが尋ねた。
「お爺様はどんな人でしたか?」
「そうだね…。軍人だったけど戦いはあまり好きではなかったようだね。特に住民や軍に関係ない人の犠牲をできるだけ出さないように考える人だったね。後は、頼まれるとあまり嫌とは言わない、お人好しなところもあったね」。
そう言うとオットーは笑って見せた。そして、話を続けた。
「剣の腕はかなりのものだったけど鼻に掛けたりせず、傭兵部隊の隊長だったときも、あまり偉そうにすることもない、どちらかというと気さくな人で、多くの人に好かれていたね」。
「へー。良い人だったんですね」。
イリーナが感心して声を出した。
「私も小さいころの記憶しかないけど、お爺様はとても優しかったです」
クララがオットーのいうことに同意するようにそう言った。
「あまり軍人っぽくなかったね。もちろんいい意味でだよ」。
オットーはそういって話を締めくくった。
オットーは高齢なので、あまり長居をするのは良くないと思い、イリーナとクララは礼を言って早々に去ることにした。彼からは“チューリン事件” の事だけしか聞けなかったが、十分な内容であった。
「ありがとうございました」。
二人は礼を言う
「この後は、ズーデハーフェンシュタットに行くのかい?」
「はい。ソフィア・タウゼントシュタインさんにお会いします」。
「彼女にも長らく会っていないね。私がよろしく言っていたと伝えてくれ」。
「わかりました」。
イリーナとクララはオットーの家を後にした。
二人は宿屋に戻り、オットーの証言で“チューリン事件”について新たに判明したことを確認した。
イリーナはメモを書いた。
【分かったこと】
・ブラミア帝国の皇帝スタニスラフ四世が殺されアーランドソンという魔術師に体を乗っ取られていた。
・“チューリン事件”のチューリンや怪物はアーランドソンに魔術で操られた傀儡だった。
・魔術師アーランドソンを倒したのはユルゲン・クリーガーであった。
「うむ。話には、まだまだ続きがある。チューリンを倒した後、私たちはその場に来ていた帝国軍にチューリン殺害の罪で捕えられてしまうんだ。でも、ちょうどその時、皇帝が謁見の間から出てきて、師だけ解放しろと言って、師と皇帝は一緒に謁見の間に入ってしまった。アクーニナや私たちはそのまま牢に入れられてしまったので、この後の話は師本人から伝え聞いた話だ」。
イリーナとクララは固唾をのんで話に聞き入る。
「実は皇帝も偽物で、アーランドソンという魔術師によって体を乗っ取られていたんだ。その魔術はヴィット王国で使用が禁止されているもので、憑依魔術という “禁断の魔術” だったらしい。そのアーランドソンは、次の憑依する体を捜していたんだよ。島に師を行かせたのは、そのテストだったのさ。島で生き残れるほどの剣の腕や才覚の持ち主であれば、次の体としてふさわしいと。そして、皇帝は師の体を乗っ取ろうとして、そこで、戦いが起こった。皇帝の魔術も強力で師も危なかったらしい。もう、だめだと思ったところをオレガが助けたんだ」。
「オレガ?!」
「そう、オレガ・ジベリゴワ。師の弟子だが、その時は城で働くただの召使いだったんだが、彼女がその場に居合わせて、師がやられそうになったところを助けたそうだ。彼女がアーランドソンに剣を突き刺したことで隙ができ、師はその隙をついて倒したと言っていた」。
驚きの証言だった。
皇帝が魔術師に体を乗っ取られていた偽物だって? そして、それをユルゲンが倒したという。
まったく想像もできない内容だった。ユルゲンが倒した翼竜の事件と、“チューリン事件” は全く関係のない出来事だと思っていたが、そんな繋がりがあったとは。
「皇帝は体を乗っ取られて死んでいたので、師が倒したのは偽の皇帝ということで、罪にはならずに済んだ。そして、娘のイリアが即位するが、彼女は国内の混乱を恐れて皇帝が偽物であったことは完全に秘密にされ、死んでいたことも半年間伏せられた。そして、この“チューリン事件”と呼ばれるようになった騒動は、側近チューリンが、権力を不法に手中にしていたということで、公式には皇帝親衛隊によって排除されたということなった」。
「そのアーランドソンという魔術師の事は?」
「もちろん、表には一切公表されていないんだよ。だから誰も知らないだろう? アーランドソンが皇帝の体を乗っ取っていた偽物だった事は、師によると、本人が倒される直前にそう言っていたそうだ」。
「なぜ、公表されなかったのでしょう?」
「そうだなあ…。帝国の頃は、その事が公表されると体制の維持に悪い影響があるから、おそらくそうしたんだろう。革命後に人民共和国政府がそのことを公開されないのは、多分、帝国は、この事件を文書として残していなかったんじゃないかな。いまの政府も帝政時代の文書は全部調べているはずだしね。師も “回想録”には書かなったようだし、この事実を知るのは限られたごくわずかな人間だけだ」。
「「へー」」。
イリーナとクララは感嘆の声を上げた。
「こんな、貴重な話が聞けて、とてもうれしいです」。
「おどろきです」。
オットーは微笑んだ。
「よかったね」。
三人は他にも、傭兵部隊の頃の話を聞いたりするなど、しばらく雑談をする。
クララが尋ねた。
「お爺様はどんな人でしたか?」
「そうだね…。軍人だったけど戦いはあまり好きではなかったようだね。特に住民や軍に関係ない人の犠牲をできるだけ出さないように考える人だったね。後は、頼まれるとあまり嫌とは言わない、お人好しなところもあったね」。
そう言うとオットーは笑って見せた。そして、話を続けた。
「剣の腕はかなりのものだったけど鼻に掛けたりせず、傭兵部隊の隊長だったときも、あまり偉そうにすることもない、どちらかというと気さくな人で、多くの人に好かれていたね」。
「へー。良い人だったんですね」。
イリーナが感心して声を出した。
「私も小さいころの記憶しかないけど、お爺様はとても優しかったです」
クララがオットーのいうことに同意するようにそう言った。
「あまり軍人っぽくなかったね。もちろんいい意味でだよ」。
オットーはそういって話を締めくくった。
オットーは高齢なので、あまり長居をするのは良くないと思い、イリーナとクララは礼を言って早々に去ることにした。彼からは“チューリン事件” の事だけしか聞けなかったが、十分な内容であった。
「ありがとうございました」。
二人は礼を言う
「この後は、ズーデハーフェンシュタットに行くのかい?」
「はい。ソフィア・タウゼントシュタインさんにお会いします」。
「彼女にも長らく会っていないね。私がよろしく言っていたと伝えてくれ」。
「わかりました」。
イリーナとクララはオットーの家を後にした。
二人は宿屋に戻り、オットーの証言で“チューリン事件”について新たに判明したことを確認した。
イリーナはメモを書いた。
【分かったこと】
・ブラミア帝国の皇帝スタニスラフ四世が殺されアーランドソンという魔術師に体を乗っ取られていた。
・“チューリン事件”のチューリンや怪物はアーランドソンに魔術で操られた傀儡だった。
・魔術師アーランドソンを倒したのはユルゲン・クリーガーであった。
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