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2章
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しおりを挟むお貴族様のお世話係になれるのは、ほんのひと握りだけ。お給金も良いし辞めた後も良い仕事を紹介してもらえることが多いから、応募する人も多くて倍率がすごく高い。
でもせっかく雇ってもらえたとしても、雇い主のお貴族様や使用人の先輩が嫌な人だったら当然環境も悪い。一日も経たずに辞めさせられる人もいるらしいし、暴言を吐かれたり暴力を振るわれることも多いらしい。
だから僕たちはものすごく恵まれている。主人のジル様は絶対に僕たちに暴言も理不尽なことも言わないし、僕が騒ぎ過ぎても仕事を失敗しても許してくれる。それに、この二年で僕たちに慣れてくれたのか、僕たちやノア先生の前では言葉に詰まることもほとんどなくなった。そんなとっても優しくて賢くて綺麗で可愛い人。
お給金だっていっぱい貰えているし、使用人の先輩達も良い人ばかりだし、リュカとアレクとも一緒にいられる。僕にとって今の環境は良いことづくしだ。
たまに孤児院の先生とか一緒に育った兄弟達が恋しくなったりもするけど、それ以上にここを離れたくない。ジル様のお傍にいたい。少しお傍を離れた隙になにかが起きたらと思うと、本当なら片時だって離れたくない。
でも僕はリュカみたいに頭が良いわけではないし、アレクみたいに強いわけでもない。だから三人の中でクビになるとしたら、きっと真っ先に僕になる。
だからずっと先の未来で僕がジル様のお傍に居れるかも分からないし、国内の力関係とかしきたりとか、お貴族様が言うような難しいこともよく分からないけど。やっぱりどんな未来でだって、ジル様には生きていてほしいし、笑っていてほしい。
本音を言えば、僕がジル様を笑顔にしたいし、特等席でジル様の笑顔が見たい。そのためにもずっと王宮で今のまま過ごしたいから、ジル様がスピネル家にお嫁さんに行っちゃうのも嫌だ。
想像しただけで、また胸がモヤモヤするくらい。
だけど王族であるジル様が、どこかへお嫁さんかお婿さんに行く未来が来ないという事は、ジル様の病気が治らない事とイコールになってしまうらしいから、それだけは絶対に嫌だ。
病気は絶対に治して、元気いっぱいに長生きしてほしい。
だからきっと、いざジル様が誰かと結婚することになったら。僕もリュカもアレクも寂しくなっちゃうけど、ジル様が幸せに生きていられるなら、もうなんでもいい。
……ほんの少しだけ。もしも僕が、すっごく偉い人の子供だったら、ジル様と並んで立てたかもしれないのになぁ、なんて考えてしまうこともあったけれど。
僕が今こうしてジル様のお傍にリュカとアレクと共に居られているのは、なんのしがらみもない孤児の産まれだからなんだと思ったら、それも悪くないような気がした。
それになにより、今のジル様の一番近くにいるのは第一王子殿下でもスピネル公爵子息でもなくて、僕たちだから。
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