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2章
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しおりを挟む完全に意識がない。
何度か倒れたことはあったけれど、意識をなくしていること自体、滅多になかった。それに、かなりの確率で発作を起こす少し前には、俺かサロモンが異変に気づけていたから、こんなに急に倒れる姿を見るのは本当に久しぶりだ。思い返してみても、やはりジル様に異変はなかったように思う。
そんなことを頭の片隅で考えながら、緊張と恐怖から震える手を抑えて、必死にノア先生が教えてくれた手順をなぞる。
大丈夫、何度か見せてもらったことはある。大丈夫、そんなに難しい作業じゃない。大丈夫、アレク達が医務室から帰ってくるまでの間だけだ。大丈夫、すぐに戻って来る。
自分に言い聞かせるように何度も大丈夫を繰り返して、もし少しでも間違えたら、なんて嫌な想像を頭の中から追い出していく。
汗がこめかみを伝うのを拭う暇もなく、自分の手を動かしながらサロモンに手伝いを頼みながら、俺にもできるくらいの簡単な処置を施す。
「リュカ!連れて来たぞ!」
永遠にも感じたその時間は、温室の出入口から聞こえてきた頼もしいその声で終わりを告げた。
聞き慣れたその声にハッと顔を上げると、ノア先生のお師匠様と同じくらいの年齢の男性がアレクの背に担がれていて、後ろにいるスピネル公爵子息が医療器具らしき物を持っている。
体力馬鹿なアレクが軽く息を切らしながら男性を下ろし、男性はスピネル公爵子息から医療器具の入っているであろう箱を受け取り足早にこちらに来た。それに合わせて俺は後ろに下がった代わりに、俺がいた場所に男性がつくと、すぐに手際よく処置が進んでいった。
その光景を後ろから見て、やっと自分の心臓が痛いくらいに脈打っていることに気がついた。手も足も震え、嫌な汗を体中にかいていて、大人一人背負って走ってきたアレクと同じくらいに息を切らしている。
自分が立てているのが不思議なくらいに体はガタガタで、少しでも気を抜けば倒れてしまいそう。そんな状態にあることを、アレクには見抜かれていたのだろう。自分も疲れているだろうに、俺の体を支えるように肩を貸してくれた。
そんな一連の流れの間も俺の視線はジル様から一時も離れなくて、ただ見慣れぬ男性医師の治療を受ける姿を見続けていた。
大丈夫。いつもの事だ。意識をなくしても、数時間後には目を覚ましてくれる。だから大丈夫。心配だけど、それまでの辛抱だ。ノア先生のお師匠様と同じくらい腕が立つ人だ。だから大丈夫。
祈るように、願うように、再びそう繰り返す。そうでもしていないと、すぐにでも座り込んでしまいそうだったから。
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