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2章
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しおりを挟むふぅ、と腰を落ち着けて、それからジルの方に再び視線を向けると、ジルは軽く頭を動かしながら部屋の中を見渡していて、ある一点を視界に収めるとその表情をホッと和らげた。
その視線を辿って見れば、ジルより分かりやすく頬を弛めたリュカくんが一人で立っていて、さっき部屋を出ていったのはアレクくんだったことに気づく。
__いや、それよりも。今のジルの表情に、さっきの既視感がさらに強まった。やっぱり見たことがある。どこかで、さっきジルと同じ表情を見た。いつも僕の前で見せる表情とは違う、さっきの違和感のある強ばったような表情と、今の安堵した表情。どこだ、どこで見た。
今がジルの無事を喜ぶべき時間だと言うのは分かっている。それでも今のこの感覚を無視できなかった。
「失礼します」
あ。
医者の先生が部屋に入ってきた、その時のその言葉。
ようやく思い出した。
ジルのあの表情をどこで見たのか。僕がジルと初めて会った、あの夜だ。あの夜のノア先生も同じように言って部屋に入ってきた。
あの夜のことは今でも鮮明に覚えている。窓から射し込む月明かりに照らされたジルの姿が、驚くほどに綺麗だったから。
それで、その時に見たジルの表情がさっき僕を見た時の表情と全く同じだった。リュカくんに見せた安堵の表情とは程遠い……緊張?
ああ、そうだ。あれは緊張していたんだ。初めて会った時は僕も今より幼かったし、感情の機微を悟れるほどジルを知らなかったから気づかなかった。
でも、そうか。ジルは僕を見て、緊張していたのか。
__もしかして、気付けなかっただけで今までずっと、僕と顔を合わせる度に緊張していた?__だけど、どうして?
初めて会ったあの日なら、突然来た初めて見る相手に緊張するのも分かる。でも、もうあれから二年以上も経つし、毎日のように一緒にいるわけではないとはいえ、かなりの時間を一緒に過ごしてきた。
僕が学園に入学する前は頻繁に、庭で遊ぼう、とか、お菓子を食べよう、とか、ジルの体調の良い日を見計らって誘っていたけど、一度も断られることもなかった。たまにだけど、ジルが小さく笑っている姿も見た。
だからライアンも含めた三人で仲良くなれていると思っていたのだけれど、僕の勘違いだったのかな。ジルはずっと、無理して僕といたのかな。……ジルは僕のこと、嫌いなのかな。
そんなことを考え始めてしまったら、さっきオスカーとリュカくんに励ましてもらったばかりなのに、さっき以上に不安になってしまう。
ジルに嫌われることが、拒絶されることが、なにより怖くてたまらなかった。
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