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2章
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しおりを挟む「は!?それ本当か?」
「はい」
お世話係の先輩に答えながら、ジル様と共に過ごすうちに忘れかけていた違和感を思い出す。誰も何も教えてなどいないのにテーブルマナーを身に付けていたことも、お手本となる人すらいなかったはずなのに一つ一つの所作が美しいことも。それどころか、文字や言葉だって何も教えてない。そんな異質でしかないことをジル様と一緒に過ごすうちに、そういうものだと何も理解しないまま飲み込んでしまっていた。
ジル様が離宮にいた頃に誰かがこっそり教えていたとしたって、ややこしいことも多いテーブルマナーを五歳の子供が完璧に覚えきるのは難しいし、その洗練された所作や言語能力を身につけるのはもっと難しいだろう。
現に幼い頃から教育を受けている第一王子殿下も違和感ないように一通りのテーブルマナーを身につけたのは、学園に入学する少し前だったと聞いている。
その上、先輩は現段階でもジル様の方が所作が綺麗だと言う。俺にはジル様と第一王子殿下の所作の違いなど気付けなかったが、俺たちよりもずっと長く王侯貴族の方々を見てきた先輩が言うならそうなのだろう。
それにノア先生が使う医療用語だって、幼児が理解するにはあまりに早すぎる。
誰にも何も教わらずに完璧に身につけるなんて、可能なのだろうか。天賦の才の一言で片付けられるものだろうか。
「一体どうやって……?離宮の方で誰かが教えてた……って言うのも無理あるよねぇ。本当は七歳じゃなかったりして」
「あの見た目でなけりゃ、成人済みだって言われた方が納得できるんだがな」
「……どう生きてきたんだろうな」
あはは、と冗談混じりに交わされる先輩方の会話に笑えずにいると、独り言ちるような声が横から聞こえてきた。
ジル様がどう生きてきたか、なんて想像もできずに、そうだな、と言葉を返そうとして。
ガタン、
とそれまで安定して走っていた馬車が大きく揺れ、そのすぐ後に馬車が止まった。外からは馬の鳴き声が聞こえてくる。
「なんだ?まだ王宮まではかかるだろ」
「アレク、構えろ。行くぞ」
暗い茶髪の先輩の言葉に頷こうとして、すぐに明るい茶髪の先輩がアレクに向けて言葉を放った。その言葉につられてそちらを向くと、護衛の先輩とアレクが互いにアイコンタクトを取っていて、それを確認した次の瞬間には左右の扉が勢いよく開いて二人は外に飛び出して行った。
扉が開いても馬の鳴き声とアレク達のであろう足音しか聞こえなかった。
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