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2章
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しおりを挟む「おかあさま、おとうさま」
「怪我はしてない?痛いところはない?」
部屋に入った時には診察は既に終わっていたようで、すぐに後ろに下がったノアと入れ替わるように、ベッドのすぐ横に腰を下ろしながらそう尋ねました。
「ないよ。……僕は、どこも怪我してないから」
「そう、良かった……怖かったでしょう。あなたが無事で、本当によかったわ」
「おかあさま……ねぇ、ジルは?ジルはまだ見つからないの?」
「ジルベールはまだ見つかっていない。……疲れているところ悪いが犯人の姿は見たか?」
平静を装った声色で今度は陛下が答え、そしてフェリクスに尋ねましたが、フェリクスはすぐに力なく首を横に振り俯いてしまいました。
「ぼく、ほんとうに何も見ないまま、気絶させられちゃったから……」
「なら人数はどうだ?馬車に乗り込んで来た相手は何人いた?」
「それなら、多分だけど二人はいたよ。両側の扉が同時に開いたから。それで、ぼく、ジルを守らなきゃって思って、咄嗟にジルを抱き締めたけど、なんの役にも立てなかった……ちゃんと護身用の剣を持ってたのに、守れなくてごめんなさいっ……」
ポロポロと大粒の涙を零しながら謝るフェリクスに、なんと言ってあげれば良いのか、検討もつきませんでした。あなたは何も悪くない、きっとジル様もあなたを責めない、そう言ったところで、この子の心を軽くすることは叶わないでしょう。
明るく笑うことの多いこの子の痛々しい姿に胸を痛めながらも、どこかで安堵している自分もいました。大切な人を守ろうとすることができて、その人を想って泣くことができる優しい子になってくれている、と。
私が何も言えずにいると陛下が私の後ろから手を伸ばして、ソッと壊れ物を扱うかのようにフェリクスの頭を撫でました。
「フェリクス、お前はよく頑張った」
「でも……」
「お前の言う“守る”方法は剣を交えることだけか?」
「それは……違う」
「そうだな。確かに剣を交えることで守れることもあるだろうが、今回のように出入口を塞がれた狭い馬車の中で剣を抜けば、お前が守ろうとしたジルベールを怪我させていたかもしれない。犯人を逆上させて誰かが血を流すことになったかもしれない。犯人の目的も何も分からない状況で下手に動かず、ジルベールを守ろうと行動したフェリクスは誰がなんと言おうと、最善を尽くしたんだ」
普段は口数が多くない陛下の珍しい姿に驚いたのか、その落ち着いた声音で紡がれた言葉につられたように、先程よりも落ち着きを取り戻し聞き入っている様子でした。
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