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2章
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しおりを挟むそれから馬車から連れ出されてから洗う暇もなくて汚れているからと、何をするよりも先に公爵家のお風呂に入れられた。お風呂から出るとほんの少し大きなサイズの服が準備されていて、それを身に纏うと普段着ているものと大差なく着心地が良くて動きやすかった。
その服を着て、車椅子がまだないからとここに来た時と同じように男に抱えられたまま移動した先では三人分の食事が用意されていた。その食事に戸惑っていると、毒が入っていないか心配していると思われたのか、毒味をするようにまず男が一口食べて、それからスプーンに掬ったスープを俺の口に入れられた。お風呂に入っている間に作ってくれていたのか、それはまだ温かかった。
食事を終えて、長時間続いた緊張状態が少し緩んだからか、すぐに危害を加えられることはないと判断したからか、強い眠気に襲われて気絶するように眠りに落ちてしまった。
彼らは俺が寝てしまうまで本当に一度も危害を加えないどころか、俺を運んだりお風呂に入れたりする時も嫌な顔一つしなかった。ずっと二人で軽口を叩きながら、たまに俺に答えを必要としない声掛けをして。付かず離れずの程よい距離感が心地よかった。
その行動や言動は全て、なにか目的があっての事かもしれない。いや、誘拐までして目的がないわけがないのだけれど、俺を油断させて目的を達成するための可能性も十分にある。これから先、なにをされるかも全く分からない。
それなのに彼らに対して警戒心を持てないのはなぜだろうか。
誘拐されて来たこの場所が嫌だと思えないのはなぜだろうか。
次に目を覚ましたら、“あの人”の元に連れて行かれるのか。彼らは俺にはなにも言わなかったけれど、多分そうなのだろう。
その時になったら教えてくれるかもしれない。俺を誘拐した目的も、こんなにも親切にしてくれている理由も。
「おっ、起きたな。気分はどうだ?」
男はずっと部屋にいたらしく、俺が目を覚ましたのに気づくとすぐに声をかけてきた。
「へいき、です。……はょ、ござい、ます」
「おお、おはよう。なんだ、喋れたんだな」
男の言葉に返事をすると軽く目を見開いて驚いた表情をしながら、朝の挨拶を返された。言われてみればずっと首を動かして答えていただけで、言葉にはしていなかったかもしれない。
そんな風に考えていると男は楽しげに笑いながら俺の頭を撫でて、それで、と言葉を続けた。
「これから俺らの主の所に行くんだが、あんま失礼のないようにしてな。さすがに主からは庇ってやれねぇから」
「は、い」
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