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2章
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しおりを挟むそんなことを考えていれば、先程とは違ったわざとらしいため息が聞こえてきた。
「アンタなぁ……“王宮から戻ったら”ってなんだ。まさか一人で行くつもりか?俺らの主があいつらと話し合いに王宮へ行くってのに、護衛が留守番してるわけねぇだろ」
「さすがに俺でもその発想はなかったっすよ!?そもそもジル様って今まだ7歳ですよね?なおさら一人にさせられるわけないじゃないですか!?」
「ぇ……いっしょ、に、きてくれるの?」
「むしろ一人で行かせねぇよ。アンタが決断することとはいえ、俺はアンタとこの場所に無事に戻ることを望んでんだ。そのためなら俺はアンタの足にもなるし盾にも剣にもなってやれる。だから俺を連れてけ」
「俺はマルクほど強くはないけど……王宮の騎士辞めてこっち来てからもマルクに鍛えられてるんだし、ちょっとくらい戦力にはなれるから……その……おっ、置いてかれても勝手について行きますからね!?」
てっきり、一人で行くものだと思っていた。リュカたちと話をしに行くだけなのだから。
一人で大丈夫だと思っていた。なのに、2人が一緒に来てくれると聞いて、緊張が少し和らいだ気がした。
それで、なにも言葉が出てこないまま、頬を、なにかが伝って落ちていく。
「っ、わあぁぁぁ!待って待って待って!?ほんとにごめんなさい!そんなに嫌でした!?いややっぱ嫌ですよねごめんなさいぃぃぃ!」
「いや、じゃない、よ?」
「ならどうした?なにか心配事があるなら言ってみろ」
「あ、れ?」
酷く焦った様子のトリスタンと、俺の頬に手を添えるようにして“なにか”を拭うマルク。
泣いているのか。
自分のことなのに、そう気がついたのは二人の反応を見てからだった。
悲しくないのに、痛くないのに、怖くないのに、泣いている。
初めてリュカたちに会った日、ルルたちの無事を知った時と似たような感覚。嫌な焦燥感がフッと無くなったような、心地よい温もりに包まれるような、そんな感覚。
なんだろうか、これは。
「わかん、ない。なんで、ないてる、か……で、でも、や、じゃない。むしろ……すっきり、した?……んん……ちからが、ぬける?」
言い表すのが難しいけれど、マルクたちに伝わるだろうか。
なんて頭を悩ませていると、乗せられたままだったマルクの手が俺の頭をゆっくりと撫でるように動かされた。
「分かんねぇかぁ……んじゃあ、なにでそう感じたんだ?」
「なに、で……?ん、と……マルク、とトリスタンが、」
「やっぱり俺のせい!?」
「うるせぇって。んで、俺らが?」
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コメントありがとうございます!
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じゅん 様
コメントありがとうございます!
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うぅ、ジルくん大事な人みんな過去の加害者でかわいそ…狡猾と言われたサシャが何も策を講じていないとは思わないので、これからどうなっていくのか。公爵家が出たということは、政敵になるんでしょうか、アベラの生家もどう動くのか楽しみです
コメントありがとうございます!そう言っていただけるととても嬉しいです!
これからも是非よろしくお願いいたします。