1 / 101
1章
0(死ネタ注意)
しおりを挟む後ろから強い衝撃を受けた、と同時に腹に熱した鉄を貫かれたような、そんな熱さと痛みを感じた。
なんだ、これは。
全身に力が入り過ぎて上手く立てない。
「…ぁ、あ」
何が起こったのか、すぐには分からなくて、意味を持たない母音が俺の口から漏れた。
自分の腹を見た。
薄く赤い液体を纏った銀色が腹から飛び出ていた。
それからすぐに腹を通った銀色が俺の体から抜けて、その銀色を支えに立っていた俺は膝をついた。
ああ、あの人が何かを叫んでいる。
すぐ近くにいるはずなのにその声が何を言っているのか、俺には分からない。
腹の中心より少し右側に空いた穴から赤く生暖かい液体が溢れ出る。
そうか、刺されたのか。
そこでようやく俺は、六度目の人生が終わるのだと悟った。
今回は案外長かったな、なんて呑気な事を考えながら顔を上げ、霞む視界に映るあの人の__俺の生物学上の父親の姿を眺めた。
彼は怒りに満ちた表情で、手入れのされた金髪を赤黒く染め、髪と同じ色に染った剣を右手に持っている。
どうして今、貴方がそんな顔をするの。
何に怒っているの。
そう問いたかったのに、口からは鉄臭い液体ばかりが溢れて音にはならなかった。
ああ、あの人の姿がぼやけて見えなくなってきた。
言葉どころか音も聞こえなくなってきた。
鉄の臭いも味も、感じなくなってきた。
そうして最期に、腹の痛みすらも分からなくなった。
6度目の人生
6度目の死
二度三度と繰り返せば、初めは恐怖を感じたものに対しても不思議と何も思わなくなってくる。
死の間際に、次の生への恐れとほんの少しの期待を抱いて意識を手放すようになったのは、何度目のことだろうか。
それももう5度目の死までのこと。
もう疲れてしまった。
いや、むしろよく6回も希望を捨てずにいられたものだ。
期待をするからそれを裏切られるのだ。
夢を見るから現実との差に打ちひしがれてしまうのだ。
ああ、疲れた。
もう繰り返したくない。
もうボロボロなのだ、心も体も。
これ以上の繰り返しに耐えられる気がしない。
独りは嫌だ。
ずっとずっと、独りで寂しかった。
誰かに愛されたかった。
けれどそれと同じくらい、人から向けられる悪意が怖かった。
人の温もりを知りたかった。
腹違いの兄弟が当たり前のように受け取っている愛を、俺にも分けて欲しかった。
一緒に居てくれる誰かが欲しかった。
ずっと叶わぬ夢を追い続けてきた。
いつか、いつか、と願い続けた結果が“また”これだ。
自嘲の笑みを浮かべながら、徐々に襲い来る眠気に身を任せた。
最期の最後、なにか暖かいものに包まれたような気がした。
650
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
拗らせ問題児は癒しの君を独占したい
結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。
一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。
補習課題のペアとして出会った二人。
セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。
身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。
期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。
これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。
英雄の溺愛と執着
AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。
転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。
付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。
あの時までは‥。
主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。
そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。
そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。
悪役の僕 何故か愛される
いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ
王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。
悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。
そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて…
ファンタジーラブコメBL
不定期更新
異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた
はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。
病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。
趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら──
なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!?
「……おまえ、俺にこうされたいのか?」
そんなわけあるかーーーっ!!
描く側だったはずの自分が、
誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。
引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、
王子と騎士に目をつけられ、
いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!?
誠実一直線騎士 × 流され系オタク
異世界・身分差・勘違いから始まる
リアル発展型BLコメディ。
『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―
なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。
――はずだった。
目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。
時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。
愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。
これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。
「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、
年上αの騎士と本物の愛を掴みます。
全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。
塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが
詩河とんぼ
BL
貧乏伯爵家の子息であったノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれることとなったラインドール公爵家の若気当主のレオンに嫁ぐこととなった。
塩対応で愛人がいるという噂のレオンやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。
そんな中、レオンが階段から転落し、レオンは記憶を失ってしまう。すると――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる