6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

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1章

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後ろから強い衝撃を受けた、と同時に腹に熱した鉄を貫かれたような、そんな熱さと痛みを感じた。
なんだ、これは。
全身に力が入り過ぎて上手く立てない。
「…ぁ、あ」
何が起こったのか、すぐには分からなくて、意味を持たない母音が俺の口から漏れた。
自分の腹を見た。
薄く赤い液体を纏った銀色が腹から飛び出ていた。
それからすぐに腹を通った銀色が俺の体から抜けて、その銀色を支えに立っていた俺は膝をついた。
ああ、あの人が何かを叫んでいる。
すぐ近くにいるはずなのにその声が何を言っているのか、俺には分からない。
腹の中心より少し右側に空いた穴から赤く生暖かい液体が溢れ出る。

そうか、刺されたのか。

そこでようやく俺は、六度目の人生が終わるのだと悟った。
今回は案外長かったな、なんて呑気な事を考えながら顔を上げ、霞む視界に映るあの人の__俺の生物学上の父親の姿を眺めた。
彼は怒りに満ちた表情で、手入れのされた金髪を赤黒く染め、髪と同じ色に染った剣を右手に持っている。
どうして今、貴方がそんな顔をするの。 
何に怒っているの。
そう問いたかったのに、口からは鉄臭い液体ばかりが溢れて音にはならなかった。

ああ、あの人の姿がぼやけて見えなくなってきた。
言葉どころか音も聞こえなくなってきた。
鉄の臭いも味も、感じなくなってきた。
そうして最期に、腹の痛みすらも分からなくなった。

6度目の人生
6度目の死

二度三度と繰り返せば、初めは恐怖を感じたものに対しても不思議と何も思わなくなってくる。
死の間際に、次の生への恐れとほんの少しの期待を抱いて意識を手放すようになったのは、何度目のことだろうか。
それももう5度目の死までのこと。

もう疲れてしまった。
いや、むしろよく6回も希望を捨てずにいられたものだ。
期待をするからそれを裏切られるのだ。
夢を見るから現実との差に打ちひしがれてしまうのだ。
ああ、疲れた。
もう繰り返したくない。
もうボロボロなのだ、心も体も。
これ以上の繰り返しに耐えられる気がしない。

独りは嫌だ。
ずっとずっと、独りで寂しかった。
誰かに愛されたかった。
けれどそれと同じくらい、人から向けられる悪意が怖かった。 
人の温もりを知りたかった。
腹違いの兄弟が当たり前のように受け取っている愛を、俺にも分けて欲しかった。
一緒に居てくれる誰かが欲しかった。 
ずっと叶わぬ夢を追い続けてきた。
いつか、いつか、と願い続けた結果が“また”これだ。
自嘲の笑みを浮かべながら、徐々に襲い来る眠気に身を任せた。

最期の最後、なにか暖かいものに包まれたような気がした。

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