6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

文字の大きさ
4 / 101
1章

3

しおりを挟む


微睡みから一気に醒めるような感覚に、七度目の人生の始まりを悟る。
今回も離宮にある廃れた部屋が始まりのようだと気づいて、起き上がることもせず再び目を閉じる。
視界が遮断され埃っぽい臭いと雨風が窓を叩く音が鮮明になったような気がした。
そのまま一晩経ってもざぁざぁと鳴り止まない雨音をぼんやり聞いていると、その中に別の音がするのに気が付いて体を起こした。
その際に身体が思うように動かせなかった事には気にとめないようにして、そのまま部屋を出て音の元へ向かう。
例の穴から外に出て、なおも聞こえる音を頼りに歩を進めると、一際大きな木の根元に白い毛を雨水でぺしゃんこにさせた小さな子犬を見つけた。

足音に気がついたのか、体を起こして俺の方を向き、キュウキュウか細い声で鳴きながら覚束無い足取りで近寄ってきた。
「……お前、一人なのか?親はどうしたんだ」
言葉が通じないとは分かっているものの、なんとなく声をかけると子犬はより一層弱った声で鳴き、俺のズボンの裾を引っ張ってどこかに連れて行こうとしているようだった。
それに大人しく着いて行くと、やがて少し開けた場所に辿り着き、そこには子犬の両親らしき白と黒の毛を持った大型犬が二匹、向かい合わせに倒れているのが見えた。
子犬が二匹に駆け寄ると、酷く弱ってはいるものの、二匹ともまだ息はあるようだった。
そうか、子犬は俺に助けを求めに来たのかと、子犬があそこで頻りに鳴いていた事に納得した。
けれどここで俺が何かをしたとして、助けられる保証はないし、俺が何かを間違えて悪化させてしまったら。
そんな怖気に囚われそうになった瞬間、子犬の声に意識が引き戻された。
俺の思い込みかもしれないが、助けを求めるような子犬の目を見てしまっては、無視することも出来ずに、手を差し伸べた。

それが、俺にとって初めて出来た“家族”との出会いだった。
その日から少しずつ回復していった二匹は一週間程で動き回れるほどになり、いつの間にか離宮に住み着くようになっていた。
どうせ一緒にいるならと白いオスの犬をブラン、黒いメスの犬をレイラ、子犬をルルと名付けたら気に入ってくれたのか、名前を呼べばちゃんと判別して答えてくれる。
初めは警戒されていたものの、時間が経つにつれて警戒は解かれていった。
それに対して俺も、人間が相手ではないからか最初のハードルも低く、そして何より感情に裏表のない彼らのそばにいることが、唯一安らぎを感じることの出来る時間になった。
それを実感した時だろうか。
俺は人間に生まれたこと自体が間違いだったのだと、思うようになったのは。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL 不定期更新

異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた

はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。 病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。 趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら── なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!? 「……おまえ、俺にこうされたいのか?」 そんなわけあるかーーーっ!! 描く側だったはずの自分が、 誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。 引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、 王子と騎士に目をつけられ、 いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!? 誠実一直線騎士 × 流され系オタク 異世界・身分差・勘違いから始まる リアル発展型BLコメディ。

『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―

なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。 ――はずだった。 目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。 時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。 愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。 これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。 「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、 年上αの騎士と本物の愛を掴みます。 全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。

塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが

詩河とんぼ
BL
 貧乏伯爵家の子息であったノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれることとなったラインドール公爵家の若気当主のレオンに嫁ぐこととなった。  塩対応で愛人がいるという噂のレオンやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。  そんな中、レオンが階段から転落し、レオンは記憶を失ってしまう。すると――

処理中です...