6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

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1章

16

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その日から体調が良い日にはルル達に会いに庭園へ、体調が悪い日には医務室で大人しく寝る、そんな平穏な日々を送っていた、そんなある夜の事だった。
コンコン、とノックされて目を覚ますと、ゆっくりと小さな音を立てて扉が開かれた。
こんな夜更けに誰だろうか。
ノア先生が来るとも聞いていないし、リュカ達は寝ているだろうし、俺に危害を加えようとする人ならばノックをする必要はない。

そんな事を考えている間にその人物は部屋に入ってくる。
「……あ、おきてる。よかったぁ」
その聞こえた声に、見覚えのある顔に、思わず驚きに目を見開いた。
「はじめまして、だね。ぼくはフェリクス。きみのお兄ちゃんだよ」
俺の二つ上の異母兄でこの国の第一王子であるフェリクス様が、扉からベッドまでの短い距離を駆けてきた。
「ふぇり、くす…さま?」
寝起きの掠れた声でそう呼ぶと、ありありと不満そうな表情を浮かべて、何事かと聞く前に彼は枕元に身を乗り出した。
「ぼく、お兄ちゃんだよ?お兄ちゃんってよんでくれないの?」
「ぇ……」
いくら7歳とはいえ、記憶にある彼の姿はどれも冷たいものばかりで、今までとの差に呆気にとられながら、俺はその期待に満ちた表情に抵抗する術を持たなかった。
「ぉ、おにい、ちゃ…?」
「うん!お兄ちゃんだよ!ねぇ、ぼくはきみのこと、ジルって呼ぶね?」
「は、はぃ…」
「もー!ぼくたち兄弟なんだからふつうに話して良いんだからね?かたくるしいのは好きじゃないよぉ」
「ぇ、あ…わか、た……」
「うんっ!ありがとう。ぼくね、きみがこっちに帰ってくるって聞いてからずっと会いたかったんだぁ。でもお母様に言ってもダメだって言われちゃうし、全然会わせてくれないから、勝手に来ちゃった。お母様には内緒だよ?」
シーッ、と顔の前で人差し指を立てて言うフェ……お兄、ちゃんに、了承の意味を込めて軽く頷く。
内緒にすると言っても、俺は彼の母親であるアベラ様と会う機会はほとんどないのだから言いようもないのだけれど。

「ねぇ、ジルはお父様のお部屋に入ったことある?」
首を傾げながらそう問われて、ない、と横に首を振る。
「お父様の部屋にはね、みんなで描いてもらった絵があるんだよ。ぼくと、お父様と、ぼくのお母様と、ジルのお母様!ジルのお母様はね、目と髪がジルとおそろいでキラキラしてるの。すっごく本物みたいでキレイだから今度一緒に見に行こう!」
楽しそうに笑いながら扉の外を指さしてそう言う彼は、本当に俺の知るフェリクス様なのだろうか。
俺と顔を合わすのも名前を呼ぶのも嫌がっていたというのに。
同一人物だと頭では分かっていても、どこか他人と接しているような気がしてならなかった。
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