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1章
22(ジルベールside)
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ジルベールside
呆れただろうか。
怒らせただろうか。
酷いわがままだ。
出会ってそう時間も経っていないような相手が死ぬかもしれないというだけで泣いてしまうような、こんなにも優しい人達の思いを踏みにじって、わがままを押し通そうとしている。
最低だ。
分かってる。
ノア先生はこれが珍しい病気だと言った。
ならば、俺の体を実験台にしてもいい。
たとえそれが原因で死期が早まろうと、問題はない。
でも、俺が生きながらえるために長い時間を治療に費やして、ルル達に会えなくなるのだけは嫌だった。
これだけは、絶対に譲れない。
譲りたくない。
初めて、そう思った。
初めてそんな感情を抱いた。
初めてこんなわがままを言った。
初めて言った酷く自分勝手な言葉に喉が渇く。
嫌われることも、見放されることも、言葉を無視されることも、怒鳴られることも、全て覚悟していた。
なのに。
「それなら、このようにするのはいかがでしょう」
ノア先生は俺の予想したどの反応でもなく、一瞬だけ逡巡してからいくつかの提案をしてくれた。
そのうちの一つが、俺のいる部屋の隣の部屋へのルル達の引越しだった。
元々ルル達の小屋が作られた庭園は四方を囲まれていて、逃げ出したりできないような造りになっていたのが理由でそこに建てられた。
一方でこちらの庭園は離宮に繋がる道が塞がれておらず、いつでも逃走が可能。
動物が医務室に入るのも衛生面上良くない。
けれど一室に閉じ込めるのもルル達にとって良くない。
安全のためにもこちらに移せなかったらしい。
それをノア先生は、いつでも外へ出入り自由な部屋にルル達を移動させ、問題の庭園には元の庭園と同じように四方を囲わせると言う。
ルル達の健康も医務室の衛生も、俺の希望も全て叶えてくれた。
いいのだろうか。
ただ自分のわがままを押し通した俺にこんな提案をしてくれても。
そんな不安が顔に出ていたのか、ノア先生は安心させるように微笑みを向けてくれた。
「それで良いのですよ。もちろん、ジルベール様の体調が一番です。ですが、ジルベール様が納得していない状況での治療に意味はありません。ジルベール様はもっと欲張りになってもいいのですよ。貴方の人生です。望みを口にしなくては誰も叶えてはくれませんよ」
「……せん、せ」
その言葉に胸がきゅう、と締まって思わず泣きそうになって。
でも俺が泣く訳には、となんとか堪えて顔を上げる。
いつも通り優しい笑みを浮かべるノア先生。
目を真っ赤に染めたサロモン。
今にも泣きそうなリュカ。
少し強そうな力で二人の背を叩くアレク。
傷付けたのに、誰も怒った素振りも見せない。
それどころか、みんな笑っている。
こんなわがままを受け入れてもらうのもまた初めてで、少し驚いてしまった。
呆れただろうか。
怒らせただろうか。
酷いわがままだ。
出会ってそう時間も経っていないような相手が死ぬかもしれないというだけで泣いてしまうような、こんなにも優しい人達の思いを踏みにじって、わがままを押し通そうとしている。
最低だ。
分かってる。
ノア先生はこれが珍しい病気だと言った。
ならば、俺の体を実験台にしてもいい。
たとえそれが原因で死期が早まろうと、問題はない。
でも、俺が生きながらえるために長い時間を治療に費やして、ルル達に会えなくなるのだけは嫌だった。
これだけは、絶対に譲れない。
譲りたくない。
初めて、そう思った。
初めてそんな感情を抱いた。
初めてこんなわがままを言った。
初めて言った酷く自分勝手な言葉に喉が渇く。
嫌われることも、見放されることも、言葉を無視されることも、怒鳴られることも、全て覚悟していた。
なのに。
「それなら、このようにするのはいかがでしょう」
ノア先生は俺の予想したどの反応でもなく、一瞬だけ逡巡してからいくつかの提案をしてくれた。
そのうちの一つが、俺のいる部屋の隣の部屋へのルル達の引越しだった。
元々ルル達の小屋が作られた庭園は四方を囲まれていて、逃げ出したりできないような造りになっていたのが理由でそこに建てられた。
一方でこちらの庭園は離宮に繋がる道が塞がれておらず、いつでも逃走が可能。
動物が医務室に入るのも衛生面上良くない。
けれど一室に閉じ込めるのもルル達にとって良くない。
安全のためにもこちらに移せなかったらしい。
それをノア先生は、いつでも外へ出入り自由な部屋にルル達を移動させ、問題の庭園には元の庭園と同じように四方を囲わせると言う。
ルル達の健康も医務室の衛生も、俺の希望も全て叶えてくれた。
いいのだろうか。
ただ自分のわがままを押し通した俺にこんな提案をしてくれても。
そんな不安が顔に出ていたのか、ノア先生は安心させるように微笑みを向けてくれた。
「それで良いのですよ。もちろん、ジルベール様の体調が一番です。ですが、ジルベール様が納得していない状況での治療に意味はありません。ジルベール様はもっと欲張りになってもいいのですよ。貴方の人生です。望みを口にしなくては誰も叶えてはくれませんよ」
「……せん、せ」
その言葉に胸がきゅう、と締まって思わず泣きそうになって。
でも俺が泣く訳には、となんとか堪えて顔を上げる。
いつも通り優しい笑みを浮かべるノア先生。
目を真っ赤に染めたサロモン。
今にも泣きそうなリュカ。
少し強そうな力で二人の背を叩くアレク。
傷付けたのに、誰も怒った素振りも見せない。
それどころか、みんな笑っている。
こんなわがままを受け入れてもらうのもまた初めてで、少し驚いてしまった。
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