6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

さんかく

文字の大きさ
23 / 101
1章

22(ジルベールside)

しおりを挟む
ジルベールside

呆れただろうか。
怒らせただろうか。
酷いわがままだ。
出会ってそう時間も経っていないような相手が死ぬかもしれないというだけで泣いてしまうような、こんなにも優しい人達の思いを踏みにじって、わがままを押し通そうとしている。
最低だ。
分かってる。

ノア先生はこれが珍しい病気だと言った。
ならば、俺の体を実験台にしてもいい。
たとえそれが原因で死期が早まろうと、問題はない。
でも、俺が生きながらえるために長い時間を治療に費やして、ルル達に会えなくなるのだけは嫌だった。

これだけは、絶対に譲れない。
譲りたくない。

初めて、そう思った。
初めてそんな感情を抱いた。
初めてこんなわがままを言った。

初めて言った酷く自分勝手な言葉に喉が渇く。
嫌われることも、見放されることも、言葉を無視されることも、怒鳴られることも、全て覚悟していた。

なのに。
「それなら、このようにするのはいかがでしょう」
ノア先生は俺の予想したどの反応でもなく、一瞬だけ逡巡してからいくつかの提案をしてくれた。

そのうちの一つが、俺のいる部屋の隣の部屋へのルル達の引越しだった。
元々ルル達の小屋が作られた庭園は四方を囲まれていて、逃げ出したりできないような造りになっていたのが理由でそこに建てられた。
一方でこちらの庭園は離宮に繋がる道が塞がれておらず、いつでも逃走が可能。
動物が医務室に入るのも衛生面上良くない。
けれど一室に閉じ込めるのもルル達にとって良くない。
安全のためにもこちらに移せなかったらしい。
それをノア先生は、いつでも外へ出入り自由な部屋にルル達を移動させ、問題の庭園には元の庭園と同じように四方を囲わせると言う。
ルル達の健康も医務室の衛生も、俺の希望も全て叶えてくれた。

いいのだろうか。
ただ自分のわがままを押し通した俺にこんな提案をしてくれても。
そんな不安が顔に出ていたのか、ノア先生は安心させるように微笑みを向けてくれた。
「それで良いのですよ。もちろん、ジルベール様の体調が一番です。ですが、ジルベール様が納得していない状況での治療に意味はありません。ジルベール様はもっと欲張りになってもいいのですよ。貴方の人生です。望みを口にしなくては誰も叶えてはくれませんよ」
「……せん、せ」

その言葉に胸がきゅう、と締まって思わず泣きそうになって。
でも俺が泣く訳には、となんとか堪えて顔を上げる。
いつも通り優しい笑みを浮かべるノア先生。
目を真っ赤に染めたサロモン。
今にも泣きそうなリュカ。
少し強そうな力で二人の背を叩くアレク。

傷付けたのに、誰も怒った素振りも見せない。
それどころか、みんな笑っている。

こんなわがままを受け入れてもらうのもまた初めてで、少し驚いてしまった。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!

はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。 本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる…… そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。 いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか? そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。 ……いや、違う! そうじゃない!! 悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!! 

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

拗らせ問題児は癒しの君を独占したい

結衣可
BL
前世で限界社畜として心をすり減らした青年は、異世界の貧乏子爵家三男・セナとして転生する。王立貴族学院に奨学生として通う彼は、座学で首席の成績を持ちながらも、目立つことを徹底的に避けて生きていた。期待されることは、壊れる前触れだと知っているからだ。 一方、公爵家次男のアレクシスは、魔法も剣術も学年トップの才能を持ちながら、「何も期待されていない」立場に嫌気がさし、問題児として学院で浮いた存在になっていた。 補習課題のペアとして出会った二人。 セナはアレクシスを特別視せず、恐れも媚びも見せない。その静かな態度と、美しい瞳に、アレクシスは強く惹かれていく。放課後を共に過ごすうち、アレクシスはセナを守りたいと思い始める。 身分差と噂、そしてセナが隠す“癒やしの光魔法”。 期待されることを恐れるセナと、期待されないことに傷つくアレクシスは、すれ違いながらも互いを唯一の居場所として見つけていく。 これは、静かに生きたい少年と、選ばれたかった少年が出会った物語。

英雄の溺愛と執着

AzureHaru
BL
転生した世界は前世でどハマりしたBLゲーム。最推しは攻略対象!ではなく、攻略対象達の剣術の師匠である、英雄の将軍閣下。メチャクチャイケオジでドストライクだった主人公はこのイケオジみたさにゲームをやっていた。その為に、ゲームの内容など微塵も覚えていなかった。 転生したからには将軍閣下を生でみないとというファン根性で付きまとう。 付き纏われていることに気づいていた将軍だか、自分に向けられる視線が他とは違う純粋な好意しかなかったため、戸惑いながらも心地よく感じていた。 あの時までは‥。 主人公は気づいていなかったが、自分達にかけらも興味を持たないことに攻略対象者達は興味をそそられ、次第に執着していく。そのことにいち早く気づいたのは剣術指南役の将軍のみ。将軍はその光景をみて、自分の中に徐々に独占欲が芽生えていくのを感じた。 そして戸惑う、自分と主人公は親子ほどに歳が離れているのにこの感情はなんなのだと。 そして、将軍が自分の気持ちを認めた時、壮絶な溺愛、執着がはじまる。

悪役の僕 何故か愛される

いもち
BL
BLゲーム『恋と魔法と君と』に登場する悪役 セイン・ゴースティ 王子の魔力暴走によって火傷を負った直後に自身が悪役であったことを思い出す。 悪役にならないよう、攻略対象の王子や義弟に近寄らないようにしていたが、逆に構われてしまう。 そしてついにゲーム本編に突入してしまうが、主人公や他の攻略対象の様子もおかしくて… ファンタジーラブコメBL 不定期更新

異世界転生してBL漫画描いてたら幼馴染に迫られた

はちも
BL
異世界転生した元腐男子の伯爵家三男。 病弱設定をうまく使って、半引きこもり生活を満喫中。 趣味と実益を兼ねて、こっそりBL漫画を描いていたら── なぜか誠実一直線な爽やか騎士の幼馴染にバレた!? 「……おまえ、俺にこうされたいのか?」 そんなわけあるかーーーっ!! 描く側だったはずの自分が、 誤解と好意と立場の違いにじわじわ追い詰められていく。 引きこもり腐男子貴族のオタ活ライフは、 王子と騎士に目をつけられ、 いつの間にか“逃げ場のない現実”へ発展中!? 誠実一直線騎士 × 流され系オタク 異世界・身分差・勘違いから始まる リアル発展型BLコメディ。

『2度目の世界で、あなたと……』 ― 魔法と番が支配する世界で、二度目の人生を ―

なの
BL
Ωとして生まれたリオナは、政略結婚の駒として生き、信じていた結婚相手に裏切られ、孤独の中で命を落とした。 ――はずだった。 目を覚ますと、そこは同じ世界、同じ屋敷、同じ朝。 時間だけが巻き戻り、前世の記憶を持つのは自分だけ。 愛を知らないまま死んだ。今度こそ、本物の愛を知り、自ら選び取る人生を生きる。 これは、愛を知らず道具として生きてきたΩが、初めて出会った温もりに触れ、自らの意思で愛を選び直す物語。 「愛を知らず道具として生きてきたΩが転生を機に、 年上αの騎士と本物の愛を掴みます。 全6話+番外編完結済み!サクサク読めます。

塩対応だった旦那様が記憶喪失になった途端溺愛してくるのですが

詩河とんぼ
BL
 貧乏伯爵家の子息であったノアは家を救うことを条件に、援助をしてくれることとなったラインドール公爵家の若気当主のレオンに嫁ぐこととなった。  塩対応で愛人がいるという噂のレオンやノアを嫌う義母の前夫人を見て、ほとんどの使用人たちはノアに嫌がらせをしていた。  そんな中、レオンが階段から転落し、レオンは記憶を失ってしまう。すると――

処理中です...