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2章
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しおりを挟む「そろそろ部屋に戻りましょう」
そう声をかけると、彼女はもう一度あの方達が座るテーブルを見て、気まずそうに頷いて席を立ちました。そんな彼女に倣って私も立ち上がり、あの方達に背を向け歩を進めます。最後に見たあの方は、やはり不思議な雰囲気を纏っていらっしゃいました。
「綺麗な方だったわね」
「……そうね」
ポツリと零した声は思っていたよりも小さく独り言のようで、でも彼女にも届いたらしく返事がありました。
「優しい表情をしていたわね」
「……えぇ」
誰が、など、言わなくても伝わりました。
「呪いの子なんかじゃなかったわ。美しくて人から愛される、人の子よ」
「わ、分かってるわよ。もう怖くなんてないわ。瞳も……そうね、今思えばルビーのように見えなくもないわ」
「えぇ。確かにルビーのようで綺麗だったわ。血を吸ってなんかない。少し考えれば分かることよ。それなのに……実はね、私も少しだけ恐ろしいと思ってしまったの」
「……ぇ?」
バツが悪そうに床を見つめていた彼女は、不意をつかれたような表情を浮かべた顔を上げて、その瞳に私を映しました。その瞳の中にいる私は自嘲するように薄く笑っています。
「貴女が言うように、私もあの方の瞳を血を吸ったような色だと思ってしまったわ。もしかしたら噂は本当なのかもしれないって」
そんな私に、彼女を責める権利などあるはずがありません。私もあの方から見たら責められるべき立場なのです。実際に咎められる事はない、とは思いたいですが、もしも罪に問われるとしたら、私も彼女と同罪になるでしょう。
「……でも、噂はやっぱり噂ね。特に“病弱なのが出鱈目”ってやつは特に分かりやすいわ。一体誰がそんな分かりやすい嘘を吹聴したのかしら」
「ぇ?……あぁ、確かにそうね。あまりご飯も食べられてないみたいだったものね」
「えぇ、本当に」
本当に、私は愚かしい。あれほど第一王子殿下からもスピネル公爵子息からも、使用人達からも傍から見て分かるほど大切に想われるような方が、恐ろしい存在であるはずがありません。あの方には外見や所作だけでなく、きっと内面にも美しさを兼ね備えているのでしょう。
来年、もしもあの方が学園に入学することが出来たなら、あの御三方が仲睦まじくお過ごしになるお姿をまた見たい。そしてもし叶うなら、ほんの少しだけで良いから、あの美しい方とお話をしてみたい。
いつかそんな時が来ればいいと、願わずにはいられませんでした。
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