モブっと異世界転生

月夜の庭

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モフモフのモブ

龍族の先輩に気に入られた

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「まぁまぁまぁまぁ♡なんとも可愛らしい猫ちゃんではないかえ!わらわは龍族の翡翠じゃ、名を教えてたもれ」


物凄く長い黒髪をお姫様カットにした頭には、黒く大きな角を生やして、爬虫類を思わせる細身の赤い瞳は綺麗で、学園の制服である白いセーラー服の背中には黒い蝙蝠みたいな羽根が生えた女の子に呼び止められていました。


絵本のかぐや姫を思い出します。


私とカメリアは、入学式の1週間前である今日、荷物を運び入れる為に、下見を兼ねて女子寮に来ていました。


すると広い女子寮の玄関で、龍族の美女に呼び止められた。


「薄いラベンダー色の毛並みが美しい♡」


白くて長い指が、遠慮がちに私の長い髪に触れてきた。


「フワフワでサラッサラじゃ♡」


「あの?」


「名はなんと申すのじゃ??」


「あ………猫族のサクラです」


「サクラ♡名前も可愛らしいのぉ♡」


頬を染めながら近付いてきた翡翠さんの大きな胸に抱きしめられた。


「あぁ可愛らしい♡学園で何か困った事があれば、わらわを頼っておくれ。サクラの為なら力を貸そう」


「ちょっと。サクラが苦しそうだから離れて」


巨乳で窒息する寸前で、カメリアに助け出されてホッと息をついた私を泣きそうな顔で翡翠さんが見詰めていた。


「すまぬ。あまりの可愛いさに加減を忘れてしもぅた。許してたもれ」


「大丈夫です。翡翠先輩と、お呼びした方が良いのでしょうか?」


「いい響きじゃのぉ。むさ苦しい雄共に呼ばれたら、確実に踵落としで沈めるのじゃが、サクラの愛らし声で先輩と呼ばれるのは嬉しいぞよ」


かっ踵落とし??


見た目に反して武闘派みたいです。


「わらわは2年生なのじゃ」


ヒロインと同級生です。


この学園は15歳~20歳までの6年間を過ごすので1年生~6年生が在籍するのです。


「今年入学するんです。私とカメリアと、もう1人男子生徒でノエルは3つ子なんです」


「ほぉ。黒い猫ちゃんも可愛らしいと思っておったが姉妹か」


「はい。よろしくお願いします、翡翠先輩」


「うむ」

翡翠先輩の話では、1年生~6年生専用の寮に別れていて、男女を含めたら12建の寮が存在するらしく、同じ部屋を6年間 使用するそうです。


「今年の新入生が下見に訪れ始めておるのは知っておったからのぉ。先輩として様子を見に来たのじゃ」


そう言いながら寮内を案内してくれた。


個室には小さな風呂とトイレが付いた1LDKのベランダ付きマンションみたいな作りをしている。


「食文化の違いでのぉ。全員分の食事を用意するのは大変でなぁ。学園内にはレストランやカフェがあるが、寮の食事はそうもいかんのでな。各自で用意するの事になっておる」


飲食店みたいに、提示されたメニューから選ぶなんて、寮の食堂で出来るはずがありません。


それこそ12個の寮で用意するのなんて無理な話です。


「じゃから、個人の部屋を広くしておるのじゃ」


食堂を省いたスペース分、各自の部屋を広くした結果、大きなマンションの様な寮になってみたいです。


「同性ならば、料理人を連れて来ても良い事になっておる」


「………あたしはサクラの手料理を食べるから大丈夫」


「むむむむむ?サクラの手料理とな?」


「うん。茶色が多いけど美味い」


ぐっと親指を立てて見せるカメリア。


「茶色が多いは余計だと思う」


「サクラは醤油が好きだから、ほぼ茶色い」


本当の事だけど、かなり恥ずかしいです。


「ほほほほほっ。ほんに仲良し姉妹なのじゃなぁ。羨ましいのぉ」


和やかな雰囲気で女子寮の下見を終えた私達は、翡翠先輩に連れられて学園内も案内し貰いました。


すると保健室に入って直ぐに、仕事をしていたジャスパーお兄様に攫われてしまいました。


「な??!サクラが!」


「………大丈夫。ジャスパーは兄だから」


「兄とな?」


「うん。重度のシスコンだから、サクラ欠乏症の発作が出ただけ。サクラに任せておけば大丈夫」


「難儀じゃのぉ」


「全くね」


そんな会話なんて耳に届くこと無く、ジャスパーお兄様にお姫様抱っこされたまま、構内の廊下を凄いスピードで移動していました。


「ジャスパーお兄様!怖いです!!」


「ちゃんと掴まっているんだよ」


「えぇ~??!」


落ちそうで恐いので、腕をお兄様の首を回して抱き着けば、更に廊下を移動するスピードが上がった。


「何処に向かっているんですか?!」


「まだ秘密。それよりも舌を噛むから、少し黙ってて」


「*$<♪♡?!@℃☆#&??!」


声にならない悲鳴を飲み込んで、ジャスパーお兄様にしがみついていました。


ドサッと音を立てて降ろされたのは、学園らしくない応接セットしか置いていない部屋の赤いベルベット生地が貼られたソファの上でした。


ガチャっと扉に鍵を掛けて、ジャスパーお兄様が戻って来るとソファの上に座ったまま抱き締められた。


「あぁ………サクラだ。本物のサクラ。やっと会えたね」


「お久しぶりです、ジャスパーお兄様」


「うん。ゴメンね……猫族の王国は遠くて、中々帰れなかったから。サクラに会えなくて寂しかったよ」


「あの、ここは何処ですか?」


「来客用の応接室だよ。番を探しているのは学生だけじゃないからね。ここなら鍵を掛けられるし、誰にも邪魔されないから」


私を抱き締めたまま顔を肩に埋めて、話してくれるジャスパーお兄様の耳や首筋が少し赤い気がする。


「サクラ…サクラ………サクラ」


一心不乱に私の名前を呼ぶお兄様の手が、小刻みに震えている。


私は黙ってアッシュグレーの頭を撫でながら、身を委ねていました。


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