モブっと異世界転生

月夜の庭

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獣耳イケメン王子達とドキドキ学園ライフ

マンモス校のXクラス

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とにかく在校生が多い学園なので、学年ごとに校舎が用意されています。

アルファベットのAから始まりZまでの26クラスまでの教室が有る校舎が6つ放射線状に建っており、2階の渡り廊下を進むと、中心に図書室や美術室の特別教室や生徒会室、職員室、保健室、学園長室、レストランにカフェがある特別棟と呼ばれる校舎が建つ構造になっている。在校生の数により使われない教室がありますが、AとXだけは必ず使用する。

Aは問題児の集まりで、最上階の1番隅に押し込める意味合いが有る。だから反対にZクラスには成績上位者や上位貴族、サクラとカメリアみたいなレア属性保持者など、優秀な生徒が集められると思いきや、1フロアに8クラスの構造の校舎なのでYとZの教室は配置が悪くて使いにくいのです。


1番下の階の奥になり、手前には多目的教室という名の空き教室があるので孤立しており、よほど在校生が多くない限り使用されないのがYとZなのです。


だから使いやすくて、1番に特別棟に近い教室がXクラスになるので、各学年の優秀な生徒はX組みに集められるのです。


とりあえず担任の先生と合流すべく、職員室に………今更ですが、手ぶらで向かいます。


「翡翠先輩、私達は鞄や筆記用具を持ってきていません。辛うじて、お財布だけです」


「ほほほほほっ今日は、1年生と同様に新しい教科書の配布と役員決めしかせぬゆえ、必要ないぞえ」


ちなみに学園長室に用意されていた青いリボンタイに交換してある。やっぱり青は落ち着くわ。


そういえばゲームのヒロインって、赤いリボンタイだった。なんだか妙なゲームとのズレを感じます。やはりゲームだった事は忘れるべきなのかも知れません。これは現実なのだと、奇しくもアンジェによる暴力から受けた怪我の痛みで、よく分かっています。


ゲームの世界かもしれないけど、私はココで生きています。それは変えようの無い事実です。


職員室出て迎えてくれたのは、1年生のXクラスの担任の鹿族特有の無駄に大きな茶色い角が特徴のバレンティン先生は、大きな角が示す通り男性で、ほんわかした癒し系の空気をまとったサッパリした顔立ちの男性でした。


日本人だった記憶がある私には、馴染みのある顔立ちで、短い尻尾が可愛らしいです。


「お二人の担任になれないのは残念ですが、諸々の事情は理解できますので仕方ありませんからね。何か困った事があれば、気軽に相談してきて下さい。この学園の教師であることには変わりませんから」


「ありがとうございます」


笑顔で答えれば、大きな手が私の頭を撫でた。


「これは噂以上に可愛らしい。きっと素直なサクラさんの味方になってくれる大人は多いことでしょう。私も、その1人であると覚えておいてくださいね」


大人限定なの?とか思って私は、小首を傾げながら先生を見上げると”グッ”と声を上げて胸に手を当てて床に崩れ落ちた先生が首を横に振っている。


思わずパチパチと瞬きいてしまいます。


「守りたい、その笑顔」


「黙れ!!変態臭い!」


その後頭部に膝蹴りを食らわす真っ青なタイトスカートに白いジャケットを着た、金髪ショートの美女が豹柄の尻尾を揺らしている頭には丸い耳が可愛らしいけど、言わずと知れた豹族の女性です。


「あたしが2年X組の担任のシイナよ」


豪華な肉食系美女が担任の先生みたいです。


あっ男性教師じゃない。


確か掛け金すると攻略可能になる、男性教師だったはずですが、当然ながら無掛け金の私は攻略なんてしていない。


名前も………………覚えてない。飲んでた芋焼酎の銘柄は覚えているのに、キャラの名前は覚えていません。もう忘れよう!カメリアと翡翠先輩と一緒に学園ライフを満喫します!これ決定!!


どうせモブだもんね。


「サクラです。よろしくお願いします」


「カメリア………よろ」


「あはははっ流石だよ!入学式をすっぽかして保健室で爆睡するだけはある。闇属性の保持者らしいけどね」


半分寝ているカメリアの頭をガシガシと撫でながら、豪快に笑う美女に好感が持てます。


マイペースなカメリアを笑って許してくれる器の大きな先生が担任なのは嬉しいです。


「行くか。可愛い猫族の女子生徒が2人も増えると、昨日から浮き足立っている野郎が多いが、あたしと翡翠姫が居れば、一瞬で黙らすからね」


「無論じゃ。わらわの可愛らしい友を怯えさせるオスなど喰いちぎっ………いや、万死に…………えぇい!一生後悔されてやるのじゃ!!」


食べちゃダメです(笑)


でもシイナ先生と翡翠先輩が睨みを利かせる教室で、落ち着いて自己紹介が出来ました。


心配されていた混乱も無く、和やかな空気で受け入れられたのでホッと胸をなで下ろしていると、隣の席に座ったマルカブ先輩がこちらを見ている事に気が付いた。


窓際(猫族が好きな日当たりがいい席を用意してくれていたみたいです)の最後尾にはカメリアが既に爆睡しており、一つ前の席に私が座り、私の前には翡翠先輩が座っている。


「昨日は、カメリアを保健室に運んでくださり、ありがとうございました。今日から隣の席なので、よろしくお願いしますマルカブ先輩」


「いやいや、全校生徒が集まる入学式で気分が悪くなる生徒が出るのは毎年の事なんだよ。僕は男として当然の事をしただけだから。それよりサクラちゃんに、先輩と呼ばれるのは寂しいな。マルカブって呼び捨てで良いから」


「確かにクラスメイトだもんね。みんな先輩になっちゃう」


「可愛いサクラちゃんに先輩と呼ばれるのも捨て難いけど、出来れば友達になりたいな。教科書が揃うまでは、一緒に見よう」


「はい。ありがとうございます」


急遽決まった飛び級なので、何冊か教科書が間に合っわずに他の生徒達よりも、机に置かれた教科書の山が小さいのです。


紳士的で優しいマルカブが隣の席で良かったです。


入学式にお姫様抱っこして現れたマルカブを見ていた同級生達により、私の隣の席が良いだろうと気を利かせてくれたと、後でシイナ先生に教えられ、思ってもいなかった気遣いに恥ずかしいやら嬉しいやらで、朝の落ち込んでいた気持ちやアンジェの登場で湧き上がってきた不安が軽くなっていました。

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