モブっと異世界転生

モブっと巻き戻し

アンジェの属性鑑定の儀式

引き取ったアンジェは、養女にはせずメイド服を着用して働いている。


これは元の世界に帰ることを諦めたくないという彼女の希望でした。


「もし元の世界に帰れなくても、助けてくれた人達の村に帰ります」


そこで1年はメイドとして働きながら、5歳になったら神殿で属性鑑定はして、村に帰ることことになりました。


お金を稼ぎながら常識を学び、属性鑑定の結果を持って帰るのです。


村には居ませんでしたが、王都には耳無しと呼ばれる人間に近い外見の人も珍しく無く、耳だけで尻尾が無い人や耳だけが猿族みたいな小さくて尻尾がある人など色々な外見の獣人が生活していた。


迫害なんて面倒臭い事はしません。


そもそも猫族は、あまり他人の容姿に興味がありません。


その人のそばに居て居心地が良いのか、悪いのかで判断するのです。


人間とは価値観が違うのです。


「村に帰る許可が出るまでは、お世話になります」


歩くだけで花が咲く人は珍しく、それこそ森の生態系を破壊しないか調査をしながら、ついでに属性鑑定を待ちながら、お小遣いを稼いでいるのです。


だから小百合ちゃんの時みたいな気安さは、一切ありませんでした。


あくまで家主の子供と使用人。


アンジェが態度を崩すことはありませんでした。


子供の1年は早いもので、今から神殿に向かいアンジェの属性鑑定をする予定です。


今度は特例として、私とカメリアとノエルも繰り上げで鑑定される。


あの時とは逆ですね。


『桜姫様は白いリボンが似合いますね』


私の髪にリボンを編み込んで結んでくれているのはマリーです。


紫色のリボンを編み込んだお揃いのエプロンドレスを着たカメリアがソファで………寝ていません。


「マリーと契約してから眠くない」のだそうです。


そして前回のと違いは、私の隣に座らされたノエルがカメリアの手で可愛い女の子の姿にされていました。


短い髪に青いリボンが付いたヘアピンを付けて、青いエプロンドレスを着ている。


「僕が男だから置いて行かれるんだ！僕は今日から女の子になる！！」


アンジェを連れてきた一件で、カメリアも戻って来ると疑わなかったノエルは、精霊と契約してまで最後まで一緒に居たカメリアに驚愕しショックを受けていた。


泣き腫らしたノエルが家族の前で、女装して生活すると宣言し、私達は度肝を抜かれた。


そしてズボンをやめてドレスを着ているけど、まだ『僕』が抜けない感じが余計に可愛いと、お母様とカメリアがノリノリで付き合っていました。


「ノエルは女の子にも付ける名前だから、バレるギリギリの年齢まで頑張ろう」


「女の子として学園を卒業してみせる！」


「その意気」


「うん」


段々女子力を上げていくノエルを最初は不安な気持ちで見守っていたけど、3人セットで扱われることが増えると、嬉しそうにドレスを選ぶ姿に、気が済むまで付き合おうと思っていた。


3人で手を繋いで向かうと、シンプルな紺色のワンピースを着たアンジェと、お父様と お母様が待っていた。


そして階段の下には白虎が直立不動で立っていた。


『今日もお美しい』


満面の笑みで私に向かって手を差し伸べられる。


「大袈裟」


『とんでもないです。まだ言い足りないくらいです』


ちょっと恥ずかしいけど、差し伸べられた手の上に、自分の手を乗せた瞬間に抱き上げられた。


『僕が足となり、お連れ致します』


一度、自分で歩くと断ったら、この世の終わりでも訪れたように床に崩れ落ち、起き上がれないくらいショックを受けていたので、今では抵抗をしない事にしていた。



そしてノエルとカメリアはお父様に抱っこされていました。


神殿に到着して異変は起きました。


「なんでアンタが男爵家に引き取られたのよ！」


般若の面みたいな顔で怒り狂った紫色の猫族女が、私達を見つけると凄い勢いで詰め寄ってきて、アンジェの顔を殴り飛ばした。


両手が塞がっている お父様の反応が遅れた為に、取り押さえるタイミングが遅れてしまう。


再び殴りかかろうとする紫から引き離すために、カメリアが闇魔法でアンジェをマリーの後ろに移動させた。


「忌々しい！」


この光景は、かつて私が受けた一方的な暴力を思い出させたのでした。


「白虎」


震える手で白虎の首に抱き着き、その肩に顔を埋めると少し大きめな手が、私の後ろ頭を撫でてくれる。


『大丈夫です。桜姫様には、絶対に近寄らせませんから』


白虎がいれば大丈夫な気がするから不思議です。


少し気持ちが落ち着いた私は、神殿での暴行事件が相手を変えて再現された事に気が付いた。


幼いハーシェルではなく、アンジェに変わり、これで紫色の猫族の学園入学が遅れる。


あくまでシナリオ通りに進め、自分をヒロインにする為に手段を選ばない。


もうゲームは関係ないのに。


現に属性鑑定で紫とアンジェはピンク色の光しか水晶から放たれなかった。


木属性の発展系の花属性だと結論が出ました。


アンジェは山奥の村に帰ることが決まり、問題は紫の処遇でした。


今の紫には聖属性がありません。


つまり神殿が保護する理由がありません。


それでも神殿以外に彼女を安全に保護できる場所はありません。


猫族の王国中を毒花で満たす訳には行きませんから。


奇しくも前回同様、神殿の地下に拘束されることになりました。