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「ちゃんちゃら」81話
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「ちゃんちゃら」81話
「この度は、うちの息子がご迷惑をお掛けして申し訳ない」
「あらやだ!良い男じゃないの~」
大和がBARに着くなり頭を下げるので、空島は慌てていた。恐らく忙しい中、慌てて来たのだろう。大和はスーツ姿だった。しかし、その一方でマスターは大和に見惚れていた。
「あたしのここ、空いてるわよっ」と徐に自分の隣の席を指差す。しかし、困惑している大和の肩を軽く引っ張り、雫が大和を自分の隣の席に座らせた。
「残念だけど、もう予約済みなんだ」
「あら、本当に残念。」
「こらこら、やめないか。」
大和が動揺しているのは珍しい光景だった。同じことを考えていたのか、自分の前に座っている大知が頬杖をつきながら大原が切り分けたケーキを手に取る。
「相変わらずラブラブ夫夫だねー」
「お前はもう少し反省しろ」と大地が大知のケーキを手に取る。それを見た大知は即刻抗議した。
「他人の食べ物を奪うなんて横暴だー!」
「迷惑かけたお前が全く反省の色がないからだ!」
微笑ましい兄弟喧嘩を海斗はジュース片手に眺める。
「痛み、大丈夫すか?」
「んー、何とか。」
横を見遣ると流川の背中を空島が気にしていた。流川は場違いだと言いながらもこの賑やかな空間を甘んじて受け入れていた。思わず受け入れたくなる気持ちは海斗にもよく分かった。
みんなそれぞれがそれぞれの好きなように行動し喋り、好きなように生きていく。それでもみんなに繋がりは確かにあった。海斗はBARの奥のシンクへ行って、そんな胸が温かくなるような様子を微笑みながら眺めていた。
「体調悪いのか?」
気になったのか、大地がこちらへ歩いてくる。海斗はコップに水を入れた。
「喉乾いただけ。」
「そうか。」
二人でBARを眺める。この賑やかな様子はBARの照明よりも明るく感じるというのは、大袈裟ではないと思った。
「俺、やっぱり金城家になりたいな。」
大地が海斗の肩に手をそっと置く。
「俺は大歓迎だ。」
どこか肩に触れた手が震えた気がしたが、海斗は大地の頬にそっとキスをした。いつもだったら大地は喜ぶのだが、今日は無反応だった。
「俺、大地にプレゼントがあるんだけどさ。」
「待ってくれ。そんな最高のニュースはまず俺の話を聞いてからにしてくれ。」
「いや、本当に大したプレゼントじゃないから、期待し過ぎるとこっちが心配になるっていうか」
「聞いて欲しいんだ。」
真剣な大地の顔が海斗の目の前まで迫る。その様子にどうやらおちゃらけて言ってるわけではないことを海斗は悟った。
「海斗にとっては悪いニュースになると思う。」
その言葉にズキリと胸が痛む。幸せというものを味わっている今、一体どうなってしまうのか、不安が心を支配し始める。
「指輪、見て欲しいんだ。」
海斗は薬指に嵌めていた指輪を取って眺める。相変わらず綺麗で、海斗は指輪を気に入っていた。
「その、表面じゃなくて内側なんだ」
大地は直視できないのか、視線を逸らしている。先が想像つかず、とりあえず言われた通りに海斗は持つ指輪の角度を変える。すると、指輪の内側に小さい凹凸があるのが薄らではあるが、確認できた。
「なるべく分かりづらいやつにしたんだけど、やっぱり罪悪感の方が勝って」
「これ、なんだ?」
一人弁明を始めている大地に海斗は指輪を指差す。大地は回りくどい言い方はやめたのか、息を目一杯吐き出してから一言言った。
「GPS。」
海斗は目を丸くして指輪を見遣る。洗練された指輪のデザインにばかり目が行って全く疑問にすら思っていなかった。
「南雲先生から色々聞いて、その、どうしても心配になって。黙ってて本当にごめん。」
大地が頭を下げているにも関わらず、海斗は指輪を凝視していた。そればかりか、「最近の指輪ってこんなのもあるんだなぁ」と呑気なことを言い始める。
「おい、何とも思わないのか?監視されてるようなものだぞ。海斗は俺に怒っていい。」
仕掛けた側であるはずなのに、大地の方が腰に手を当てて海斗を睨んでいた。しかし、海斗はキョトンとした顔で大地を見ている。
「え?俺を心配してつけたんだよな?別にただ仕事しに行くだけだし。良いんじゃないか?」
あまりにも危機感が無く、大地に全て身を預けているような海斗の様子に大地は不安と歓喜が両方押し寄せ、気が狂いそうになった。
「お前は絶対に他の奴とじゃダメだ!俺とじゃなきゃダメだ!!このままだとヤバい奴に利用されちまう!」
急に大地が騒ぎ始めたので、海斗はギョッとする。
「え。なんだよ、急に。」
「危なっかしいから、俺と結婚しておけ!いいな!?」
「うん。結婚するけど…」
大地が海斗を強く抱きしめてくるので、海斗は水を咽せそうになる。
「相変わらずお熱いですね~」
空島が投げやりな合いの手を入れると、BARはみんなの笑いで包まれた。
「この度は、うちの息子がご迷惑をお掛けして申し訳ない」
「あらやだ!良い男じゃないの~」
大和がBARに着くなり頭を下げるので、空島は慌てていた。恐らく忙しい中、慌てて来たのだろう。大和はスーツ姿だった。しかし、その一方でマスターは大和に見惚れていた。
「あたしのここ、空いてるわよっ」と徐に自分の隣の席を指差す。しかし、困惑している大和の肩を軽く引っ張り、雫が大和を自分の隣の席に座らせた。
「残念だけど、もう予約済みなんだ」
「あら、本当に残念。」
「こらこら、やめないか。」
大和が動揺しているのは珍しい光景だった。同じことを考えていたのか、自分の前に座っている大知が頬杖をつきながら大原が切り分けたケーキを手に取る。
「相変わらずラブラブ夫夫だねー」
「お前はもう少し反省しろ」と大地が大知のケーキを手に取る。それを見た大知は即刻抗議した。
「他人の食べ物を奪うなんて横暴だー!」
「迷惑かけたお前が全く反省の色がないからだ!」
微笑ましい兄弟喧嘩を海斗はジュース片手に眺める。
「痛み、大丈夫すか?」
「んー、何とか。」
横を見遣ると流川の背中を空島が気にしていた。流川は場違いだと言いながらもこの賑やかな空間を甘んじて受け入れていた。思わず受け入れたくなる気持ちは海斗にもよく分かった。
みんなそれぞれがそれぞれの好きなように行動し喋り、好きなように生きていく。それでもみんなに繋がりは確かにあった。海斗はBARの奥のシンクへ行って、そんな胸が温かくなるような様子を微笑みながら眺めていた。
「体調悪いのか?」
気になったのか、大地がこちらへ歩いてくる。海斗はコップに水を入れた。
「喉乾いただけ。」
「そうか。」
二人でBARを眺める。この賑やかな様子はBARの照明よりも明るく感じるというのは、大袈裟ではないと思った。
「俺、やっぱり金城家になりたいな。」
大地が海斗の肩に手をそっと置く。
「俺は大歓迎だ。」
どこか肩に触れた手が震えた気がしたが、海斗は大地の頬にそっとキスをした。いつもだったら大地は喜ぶのだが、今日は無反応だった。
「俺、大地にプレゼントがあるんだけどさ。」
「待ってくれ。そんな最高のニュースはまず俺の話を聞いてからにしてくれ。」
「いや、本当に大したプレゼントじゃないから、期待し過ぎるとこっちが心配になるっていうか」
「聞いて欲しいんだ。」
真剣な大地の顔が海斗の目の前まで迫る。その様子にどうやらおちゃらけて言ってるわけではないことを海斗は悟った。
「海斗にとっては悪いニュースになると思う。」
その言葉にズキリと胸が痛む。幸せというものを味わっている今、一体どうなってしまうのか、不安が心を支配し始める。
「指輪、見て欲しいんだ。」
海斗は薬指に嵌めていた指輪を取って眺める。相変わらず綺麗で、海斗は指輪を気に入っていた。
「その、表面じゃなくて内側なんだ」
大地は直視できないのか、視線を逸らしている。先が想像つかず、とりあえず言われた通りに海斗は持つ指輪の角度を変える。すると、指輪の内側に小さい凹凸があるのが薄らではあるが、確認できた。
「なるべく分かりづらいやつにしたんだけど、やっぱり罪悪感の方が勝って」
「これ、なんだ?」
一人弁明を始めている大地に海斗は指輪を指差す。大地は回りくどい言い方はやめたのか、息を目一杯吐き出してから一言言った。
「GPS。」
海斗は目を丸くして指輪を見遣る。洗練された指輪のデザインにばかり目が行って全く疑問にすら思っていなかった。
「南雲先生から色々聞いて、その、どうしても心配になって。黙ってて本当にごめん。」
大地が頭を下げているにも関わらず、海斗は指輪を凝視していた。そればかりか、「最近の指輪ってこんなのもあるんだなぁ」と呑気なことを言い始める。
「おい、何とも思わないのか?監視されてるようなものだぞ。海斗は俺に怒っていい。」
仕掛けた側であるはずなのに、大地の方が腰に手を当てて海斗を睨んでいた。しかし、海斗はキョトンとした顔で大地を見ている。
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