26 / 51
「ゼロから千まで」26話
しおりを挟む
「ゼロから千まで」26話
零一が名残惜しそうにこちらへ手を振りながら通学路を歩いていく。
「夕方、また来るからね。」
「うん。」
「来んでいい。」
まだ祖父は横で愚痴を言っていたが、千歳は自分の部屋に戻るなり、自分の手を見つめる。さっきまでずっと零一と手を握っていた為、手の平はまだ温かった。恋というものをよく知らないが、この感覚は好きだった。大人しく零一の言われた箇所を復習しようと思ったが、まだ昨日のぬくもりと唇の感触が襲い、中々手がつかなかった。千歳は頑張って気を逸らそうと友人たちのことを考えることにした。
今頃みんなは文化祭の準備をしている頃だろう。参加できないことに寂しさを覚える。こっそり学校に行っても良いだろうかと思ったが、さっきの零一とのハグや手を繋ぐ行為を思い出し、気後れする。学校では零一とどう付き合っていけばいいのだろうかと考えを巡らす。いつも通り自由に過ごしたいが、二葉たちの言う周りからの牽制というものが気になった。
「恋するって、こんなに不自由なんだな。」
千歳は机に突っ伏す。恋愛というものがこんなに大変なものだとは思わなかった。しかし、だからといって零一と離れるのは嫌だった。ずっと考えても何も進まない気がしたので、そのまま千歳は机に突っ伏すことにした。
気がつけば、外は夕方になっていた。今日は二葉たちと会ってからまた零一と会う予定だった。
暫く窓を眺めていると、二葉たちが制服姿でこちらへやってきた。千歳が勢い良く玄関から飛び出ると二葉たちに確保された。
「相変わらず勢いあるなぁ。」
「熊かと思ったよ。」
「みんな、文化祭の準備してるの?」と千歳が三人の顔を見回すと、三人とも頷いた。
「千歳が寂しがってるだろうと思って、買い出しついでに来たってわけ。」と手に持っているレジ袋を三来が見せつけてくる。
「まあ、彼氏ができた千歳は寂しくないだろうけどねぇ」と二葉がニタニタ笑いながら玄関で靴を脱ぎ始めた。彼氏という言葉に千歳は縋るように二葉の背中に抱きつく。驚いた二葉が抱きつく千歳の頭を掴む。
「なになに!?どうした!?」
「みんなに聞きたいことがあるんだけど」
千歳はみんなを自分の部屋に入れると、昨日の出来事を身振り手振りで説明した。千歳のバタバタしたジェスチャーに二葉は顔を赤らめ、三来は真っ青になり、世羅は黙って聞いていた。
「何だか、前より他人の視線が気になるっていうか、零一を見ると変な感じがするんだ。」
三人とも言葉を失っている様子だった。
「これって、びょ、病気?」
すると三人全員が大きな溜息をついた。
「ここまで来るとまあ、病気かもね。」
「え!ど、どうしよう!」と三来の言葉に千歳は口をパクパクさせる。
そんな千歳の動揺を他所に世羅は顎に手を当て唸り始める。
「それにしたって、いくらなんでも霧崎のやつ、過保護じゃないか?」
腕組みする世羅をみんな見上げる。三来も苦笑していた。
「えー、霧崎って結構束縛するタイプなんだね。百合愛も大変だったんだねぇ」
「そうかな。」と二葉が口を挟む。
「だって、学校でそんな感じじゃなかったと思うけど。寧ろ、百合愛の方がグイグイ行ってる感じがあった。」
「千歳がこんなんだから、多少強引になってるだけじゃないの?」
みんなの会話を千歳は黙って正座しながら聞いていた。
気持ちを晴らす為のほんの少しだけの相談会は、想像以上に長引くということを千歳の折り曲げた足の痛みが教えていた。
零一が名残惜しそうにこちらへ手を振りながら通学路を歩いていく。
「夕方、また来るからね。」
「うん。」
「来んでいい。」
まだ祖父は横で愚痴を言っていたが、千歳は自分の部屋に戻るなり、自分の手を見つめる。さっきまでずっと零一と手を握っていた為、手の平はまだ温かった。恋というものをよく知らないが、この感覚は好きだった。大人しく零一の言われた箇所を復習しようと思ったが、まだ昨日のぬくもりと唇の感触が襲い、中々手がつかなかった。千歳は頑張って気を逸らそうと友人たちのことを考えることにした。
今頃みんなは文化祭の準備をしている頃だろう。参加できないことに寂しさを覚える。こっそり学校に行っても良いだろうかと思ったが、さっきの零一とのハグや手を繋ぐ行為を思い出し、気後れする。学校では零一とどう付き合っていけばいいのだろうかと考えを巡らす。いつも通り自由に過ごしたいが、二葉たちの言う周りからの牽制というものが気になった。
「恋するって、こんなに不自由なんだな。」
千歳は机に突っ伏す。恋愛というものがこんなに大変なものだとは思わなかった。しかし、だからといって零一と離れるのは嫌だった。ずっと考えても何も進まない気がしたので、そのまま千歳は机に突っ伏すことにした。
気がつけば、外は夕方になっていた。今日は二葉たちと会ってからまた零一と会う予定だった。
暫く窓を眺めていると、二葉たちが制服姿でこちらへやってきた。千歳が勢い良く玄関から飛び出ると二葉たちに確保された。
「相変わらず勢いあるなぁ。」
「熊かと思ったよ。」
「みんな、文化祭の準備してるの?」と千歳が三人の顔を見回すと、三人とも頷いた。
「千歳が寂しがってるだろうと思って、買い出しついでに来たってわけ。」と手に持っているレジ袋を三来が見せつけてくる。
「まあ、彼氏ができた千歳は寂しくないだろうけどねぇ」と二葉がニタニタ笑いながら玄関で靴を脱ぎ始めた。彼氏という言葉に千歳は縋るように二葉の背中に抱きつく。驚いた二葉が抱きつく千歳の頭を掴む。
「なになに!?どうした!?」
「みんなに聞きたいことがあるんだけど」
千歳はみんなを自分の部屋に入れると、昨日の出来事を身振り手振りで説明した。千歳のバタバタしたジェスチャーに二葉は顔を赤らめ、三来は真っ青になり、世羅は黙って聞いていた。
「何だか、前より他人の視線が気になるっていうか、零一を見ると変な感じがするんだ。」
三人とも言葉を失っている様子だった。
「これって、びょ、病気?」
すると三人全員が大きな溜息をついた。
「ここまで来るとまあ、病気かもね。」
「え!ど、どうしよう!」と三来の言葉に千歳は口をパクパクさせる。
そんな千歳の動揺を他所に世羅は顎に手を当て唸り始める。
「それにしたって、いくらなんでも霧崎のやつ、過保護じゃないか?」
腕組みする世羅をみんな見上げる。三来も苦笑していた。
「えー、霧崎って結構束縛するタイプなんだね。百合愛も大変だったんだねぇ」
「そうかな。」と二葉が口を挟む。
「だって、学校でそんな感じじゃなかったと思うけど。寧ろ、百合愛の方がグイグイ行ってる感じがあった。」
「千歳がこんなんだから、多少強引になってるだけじゃないの?」
みんなの会話を千歳は黙って正座しながら聞いていた。
気持ちを晴らす為のほんの少しだけの相談会は、想像以上に長引くということを千歳の折り曲げた足の痛みが教えていた。
0
あなたにおすすめの小説
ホストと女医は診察室で
星野しずく
恋愛
町田慶子は開業したばかりのクリニックで忙しい毎日を送っていた。ある日クリニックに招かれざる客、歌舞伎町のホスト、聖夜が後輩の真也に連れられてやってきた。聖夜の強引な誘いを断れず、慶子は初めてホストクラブを訪れる。しかし、その日の夜、慶子が目覚めたのは…、なぜか聖夜と二人きりのホテルの一室だった…。
ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない
斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。
襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……!
この人本当に旦那さま?
って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!
蛇の噛み痕
ラティ
恋愛
ホストへ行かないかと、誘われた佳代は、しぶしぶながらもついていくことに。そこであった黒金ショウは、美形な男性だった。
会ううちに、どんどん仲良くなっていく。けれど、なんだか、黒金ショウの様子がおかしい……?
ホスト×女子大学生の、お話。
他サイトにも掲載中。
お人形令嬢の私はヤンデレ義兄から逃げられない
白黒
恋愛
お人形のように綺麗だと言われるアリスはある日義兄ができる。
義兄のレイモンドは幼い頃よりのトラウマで次第に少し歪んだ愛情をアリスに向けるようになる。
義兄の溺愛に少し悩むアリス…。
二人の行き着く先は…!?
思い出さなければ良かったのに
田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。
大事なことを忘れたまま。
*本編完結済。不定期で番外編を更新中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる