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「ゼロから千まで」45話
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「ゼロから千まで」45話
「百合愛は今、学校にいる。教室にいるのを見た。」
零一は一時間前に届いた世羅のメッセージを確認していた。胸を撫で下ろすと、屋上の整理をしていた。前に文化祭の準備中、勝手に生徒が屋上にあるものを使ったという事件があったようで、それからはこの時期、美化委員が定期的に確認するようになったらしい。
置かれてあるゴミ箱の数やいらないカゴの数が合っているのを確認しては表にチェックを入れた。しかし、零一の頭は夥しい数の備品の名前が書かれてある表には向いてはいなかった。
百合愛と出会ったのは校庭横の小道だった。零一は相変わらず木を登っている千歳を眺めていたが、部活仲間に話しかけられ、気がついたら百合愛とも話をしていた。百合愛とは読んでいる本など趣味が合った。しかし、それだけで他の男子たちの様に惹かれる部分は無かった。
ところが、それからよく百合愛が自分に近づいてくるようになった。行動は中学の頃の女子たちと同じなのだが、どこか百合愛の様子は違う気がしていた。自分に好意があるような素振りを見せているが、観察されているような、そんな居心地の悪さを感じていた。それは好きな人を見ているというより、実験に使用される動物を眺めているような、そんな不気味さがあった。
話をしている分には楽しかった。話を聞いている限り、千歳という友人を大事に思っているのを聞いて、気が合うなとは思っていた。しかし、それは異性としての恋情ではなく、ただ親近感が湧くという、ただそれだけだった。
そんな零一とは裏腹で周りの反応は盛り上がる一方だった。その視線は零一もひしひしと感じていた。どうすれば良いか分からないまま、気がつけば体育祭後に百合愛に告白され、結局付き合うことになった。中学の時と状況は似ていた。零一はまた本心を隠して過ごすことになってしまった。そのことに初めは百合愛に対して申し訳なさを感じていた。
しかし、次第に零一は百合愛に不信感を抱くようになっていった。なぜそんな感情を抱いたかと言うと、どこか百合愛の自分に対する対応が機械的に感じたからだ。まるで用意された回答をしているかのように百合愛の話す言葉は相手が喜ぶ言葉しか使わなかった。相手が有頂天になるよう仕向けているようで零一は違和感を感じていた。周りは羨ましそうに零一を見てくるが、零一はその気持ちを理解できる気がしないし、零一の違和感を誰も気づきはしないだろうと思った。
零一は百合愛と別れることを決意した。しかし千歳の顔がチラつく。千歳の友人を傷つけるようなことはなるべくしたくはなかった。理由をどうしようかと悩んでいる間、時は徐々に過ぎていってしまい、気がつけば数ヶ月も過ぎていた。途方に暮れている中、零一の焦りは日が短くなっていくと共に増していった。
そして、あの事件が起きた。
「百合愛は今、学校にいる。教室にいるのを見た。」
零一は一時間前に届いた世羅のメッセージを確認していた。胸を撫で下ろすと、屋上の整理をしていた。前に文化祭の準備中、勝手に生徒が屋上にあるものを使ったという事件があったようで、それからはこの時期、美化委員が定期的に確認するようになったらしい。
置かれてあるゴミ箱の数やいらないカゴの数が合っているのを確認しては表にチェックを入れた。しかし、零一の頭は夥しい数の備品の名前が書かれてある表には向いてはいなかった。
百合愛と出会ったのは校庭横の小道だった。零一は相変わらず木を登っている千歳を眺めていたが、部活仲間に話しかけられ、気がついたら百合愛とも話をしていた。百合愛とは読んでいる本など趣味が合った。しかし、それだけで他の男子たちの様に惹かれる部分は無かった。
ところが、それからよく百合愛が自分に近づいてくるようになった。行動は中学の頃の女子たちと同じなのだが、どこか百合愛の様子は違う気がしていた。自分に好意があるような素振りを見せているが、観察されているような、そんな居心地の悪さを感じていた。それは好きな人を見ているというより、実験に使用される動物を眺めているような、そんな不気味さがあった。
話をしている分には楽しかった。話を聞いている限り、千歳という友人を大事に思っているのを聞いて、気が合うなとは思っていた。しかし、それは異性としての恋情ではなく、ただ親近感が湧くという、ただそれだけだった。
そんな零一とは裏腹で周りの反応は盛り上がる一方だった。その視線は零一もひしひしと感じていた。どうすれば良いか分からないまま、気がつけば体育祭後に百合愛に告白され、結局付き合うことになった。中学の時と状況は似ていた。零一はまた本心を隠して過ごすことになってしまった。そのことに初めは百合愛に対して申し訳なさを感じていた。
しかし、次第に零一は百合愛に不信感を抱くようになっていった。なぜそんな感情を抱いたかと言うと、どこか百合愛の自分に対する対応が機械的に感じたからだ。まるで用意された回答をしているかのように百合愛の話す言葉は相手が喜ぶ言葉しか使わなかった。相手が有頂天になるよう仕向けているようで零一は違和感を感じていた。周りは羨ましそうに零一を見てくるが、零一はその気持ちを理解できる気がしないし、零一の違和感を誰も気づきはしないだろうと思った。
零一は百合愛と別れることを決意した。しかし千歳の顔がチラつく。千歳の友人を傷つけるようなことはなるべくしたくはなかった。理由をどうしようかと悩んでいる間、時は徐々に過ぎていってしまい、気がつけば数ヶ月も過ぎていた。途方に暮れている中、零一の焦りは日が短くなっていくと共に増していった。
そして、あの事件が起きた。
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