墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
3 / 227
第一章 墜落

3 洞窟

しおりを挟む
「う、うう……?」

 うっすらと意識が戻って最初に感じたのは、とにかく寒さだった。次に、痛みだ。

「あ、いっててて……」

 なにしろ体じゅうが痛い。無理もない。あんな高い場所からまっすぐに地面に落ちてきたのだ。鎧装がいそうした状態でなければ、まちがいなく即死だっただろう。
 《鎧装》とは武神の子たちが成長して、《BLレンジャー》となるための装備である。世界に横溢する勇者パワーを体に集め、「《武神鎧装ぶしんがいそう》」と唱えることで変身が叶うのだ。

 無意識に右手をあげて眺めてみれば、鎧装は当然のように解除されてしまっていた。激しいショックを受けたり、自分が失神するなどすると簡単に解除されてしまうのが鎧装の弱点だともいえる。
 いまは普通の人間としての自分の手がそこにあった。そうでなければ、いつもの《BLレッド》としての赤く丈夫な手甲装備をつけているはずなのだ。
 ゆっくりと視線をめぐらせると、ごつごつした岩肌が目に入った。背中に当たる固い感触といい、どうやらここは洞窟の中のようだ。薄暗いが、左の方からふんわりとした明るさとぬくもりを感じる。そばで焚火をしている者がいるようだ。

「って。お前えっ!」

 カッと目を見開いて飛び起きた……つもりだったが、全身の痛みですぐに停止してしまった。なんとか悲鳴をあげずに済ませた自分をほめてやりたい。そのまま「痛ててて……」とうずくまるように元通り撃沈してしまったので、それでもやっぱりカッコ悪いには違いないが。
 焚火のこちら側で大きなマントの背中を向けて座っていたのは、魔王エルケニヒだった。あちらはと言えば、いかにも面倒くさそうにちらりと視線を投げてよこしただけで沈黙している。
 あれだけの戦闘で大暴れしたはずなのに、ゆったりとしたマントにも魔王としての装備にもたいした汚れは見られない。魔法でいちいちきれいにしているのだろうか。だとしたら意外とマメな野郎だ。

(相変わらず、クソでけえな)

 エルケニヒは一見すると一般的な人間と似たような姿をしてはいる。だが、体のサイズはバカでかい。普通の人間の男の頭一つ、いや二つぶんぐらいは背が高いのだ。精悍な浅黒い肌に、さらさらとなびく銀髪。赤く輝く瞳に牙。頭にはねじれた角が二本。瞳の真ん中には、人間ではありえない爬虫類のような縦に細長い虹彩が浮かんでいる。
 どこからどうみても人間離れしているが、実は相貌そのものはよく整っている。角とまがまがしい赤い目を除けば、鼻筋の通った品のいい横顔は、そこいらの王子様といっても通りそうな端正なものだ。
 そこは、口うるさい武神仲間のイエローからいつも「リョウマは見るからに野生児よね! 見た目も頭の中もほんと野生児!」なんて茶化される自分とはずいぶん違う。

 自分はごわつきやすくてすぐにあっちこっちにはねてしまう、性格の悪い黒髪と黒い瞳。肌は黄色みの混ざったクリーム色だ。顔自体はけっしてブサイクだとは思わないが、だからといってこの男ほど「男前です」と堂々と言えるほどでないことは自覚している。
 なんだか理不尽な怒りがふつふつと湧きあがってきて、リョウマは口を尖らせた。

「お、前ぇ……どういう、つもりだよ」

 体の痛みをこらえながら唸るように言うと、魔王はやっぱり面倒くさそうにこちらを一瞥した。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター
BL
 ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。 自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。 ――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。  そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように―― 「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」 「無理。邪魔」 「ガーン!」  とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。 「……その子、生きてるっすか?」 「……ああ」 ◆◆◆ 溺愛攻め  × 明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け

処理中です...