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第一章 墜落
3 洞窟
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「う、うう……?」
うっすらと意識が戻って最初に感じたのは、とにかく寒さだった。次に、痛みだ。
「あ、いっててて……」
なにしろ体じゅうが痛い。無理もない。あんな高い場所からまっすぐに地面に落ちてきたのだ。鎧装した状態でなければ、まちがいなく即死だっただろう。
《鎧装》とは武神の子たちが成長して、《BLレンジャー》となるための装備である。世界に横溢する勇者パワーを体に集め、「《武神鎧装》」と唱えることで変身が叶うのだ。
無意識に右手をあげて眺めてみれば、鎧装は当然のように解除されてしまっていた。激しいショックを受けたり、自分が失神するなどすると簡単に解除されてしまうのが鎧装の弱点だともいえる。
いまは普通の人間としての自分の手がそこにあった。そうでなければ、いつもの《BLレッド》としての赤く丈夫な手甲装備をつけているはずなのだ。
ゆっくりと視線をめぐらせると、ごつごつした岩肌が目に入った。背中に当たる固い感触といい、どうやらここは洞窟の中のようだ。薄暗いが、左の方からふんわりとした明るさとぬくもりを感じる。そばで焚火をしている者がいるようだ。
「って。お前えっ!」
カッと目を見開いて飛び起きた……つもりだったが、全身の痛みですぐに停止してしまった。なんとか悲鳴をあげずに済ませた自分をほめてやりたい。そのまま「痛ててて……」とうずくまるように元通り撃沈してしまったので、それでもやっぱりカッコ悪いには違いないが。
焚火のこちら側で大きなマントの背中を向けて座っていたのは、魔王エルケニヒだった。あちらはと言えば、いかにも面倒くさそうにちらりと視線を投げてよこしただけで沈黙している。
あれだけの戦闘で大暴れしたはずなのに、ゆったりとしたマントにも魔王としての装備にもたいした汚れは見られない。魔法でいちいちきれいにしているのだろうか。だとしたら意外とマメな野郎だ。
(相変わらず、クソでけえな)
エルケニヒは一見すると一般的な人間と似たような姿をしてはいる。だが、体のサイズはバカでかい。普通の人間の男の頭一つ、いや二つぶんぐらいは背が高いのだ。精悍な浅黒い肌に、さらさらとなびく銀髪。赤く輝く瞳に牙。頭にはねじれた角が二本。瞳の真ん中には、人間ではありえない爬虫類のような縦に細長い虹彩が浮かんでいる。
どこからどうみても人間離れしているが、実は相貌そのものはよく整っている。角とまがまがしい赤い目を除けば、鼻筋の通った品のいい横顔は、そこいらの王子様といっても通りそうな端正なものだ。
そこは、口うるさい武神仲間のイエローからいつも「リョウマは見るからに野生児よね! 見た目も頭の中もほんと野生児!」なんて茶化される自分とはずいぶん違う。
自分はごわつきやすくてすぐにあっちこっちにはねてしまう、性格の悪い黒髪と黒い瞳。肌は黄色みの混ざったクリーム色だ。顔自体はけっしてブサイクだとは思わないが、だからといってこの男ほど「男前です」と堂々と言えるほどでないことは自覚している。
なんだか理不尽な怒りがふつふつと湧きあがってきて、リョウマは口を尖らせた。
「お、前ぇ……どういう、つもりだよ」
体の痛みをこらえながら唸るように言うと、魔王はやっぱり面倒くさそうにこちらを一瞥した。
うっすらと意識が戻って最初に感じたのは、とにかく寒さだった。次に、痛みだ。
「あ、いっててて……」
なにしろ体じゅうが痛い。無理もない。あんな高い場所からまっすぐに地面に落ちてきたのだ。鎧装した状態でなければ、まちがいなく即死だっただろう。
《鎧装》とは武神の子たちが成長して、《BLレンジャー》となるための装備である。世界に横溢する勇者パワーを体に集め、「《武神鎧装》」と唱えることで変身が叶うのだ。
無意識に右手をあげて眺めてみれば、鎧装は当然のように解除されてしまっていた。激しいショックを受けたり、自分が失神するなどすると簡単に解除されてしまうのが鎧装の弱点だともいえる。
いまは普通の人間としての自分の手がそこにあった。そうでなければ、いつもの《BLレッド》としての赤く丈夫な手甲装備をつけているはずなのだ。
ゆっくりと視線をめぐらせると、ごつごつした岩肌が目に入った。背中に当たる固い感触といい、どうやらここは洞窟の中のようだ。薄暗いが、左の方からふんわりとした明るさとぬくもりを感じる。そばで焚火をしている者がいるようだ。
「って。お前えっ!」
カッと目を見開いて飛び起きた……つもりだったが、全身の痛みですぐに停止してしまった。なんとか悲鳴をあげずに済ませた自分をほめてやりたい。そのまま「痛ててて……」とうずくまるように元通り撃沈してしまったので、それでもやっぱりカッコ悪いには違いないが。
焚火のこちら側で大きなマントの背中を向けて座っていたのは、魔王エルケニヒだった。あちらはと言えば、いかにも面倒くさそうにちらりと視線を投げてよこしただけで沈黙している。
あれだけの戦闘で大暴れしたはずなのに、ゆったりとしたマントにも魔王としての装備にもたいした汚れは見られない。魔法でいちいちきれいにしているのだろうか。だとしたら意外とマメな野郎だ。
(相変わらず、クソでけえな)
エルケニヒは一見すると一般的な人間と似たような姿をしてはいる。だが、体のサイズはバカでかい。普通の人間の男の頭一つ、いや二つぶんぐらいは背が高いのだ。精悍な浅黒い肌に、さらさらとなびく銀髪。赤く輝く瞳に牙。頭にはねじれた角が二本。瞳の真ん中には、人間ではありえない爬虫類のような縦に細長い虹彩が浮かんでいる。
どこからどうみても人間離れしているが、実は相貌そのものはよく整っている。角とまがまがしい赤い目を除けば、鼻筋の通った品のいい横顔は、そこいらの王子様といっても通りそうな端正なものだ。
そこは、口うるさい武神仲間のイエローからいつも「リョウマは見るからに野生児よね! 見た目も頭の中もほんと野生児!」なんて茶化される自分とはずいぶん違う。
自分はごわつきやすくてすぐにあっちこっちにはねてしまう、性格の悪い黒髪と黒い瞳。肌は黄色みの混ざったクリーム色だ。顔自体はけっしてブサイクだとは思わないが、だからといってこの男ほど「男前です」と堂々と言えるほどでないことは自覚している。
なんだか理不尽な怒りがふつふつと湧きあがってきて、リョウマは口を尖らせた。
「お、前ぇ……どういう、つもりだよ」
体の痛みをこらえながら唸るように言うと、魔王はやっぱり面倒くさそうにこちらを一瞥した。
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