墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
115 / 227
第七章 共闘

8 ミッションM

しおりを挟む

 翌朝。
 とんでもない体の重さを覚えつつ、リョウマは目を覚ました。
 昨夜は最終的に意識をとばしてしまうまであの男に抱かれていた、という記憶がうっすらと頭の奥からよみがえってくる。

「……あれ? エル?」

 窓の外から差し込む陽光の明るさから、すでに日はだいぶ高く昇っているらしいのがわかった。リョウマは重だるい体をどうにかこうにか寝具から引きはがし、ゆっくりと寝台から出た。

「いま何時だ? なんか変だな」

 そうなのだ。いつもなら早々に「朝の御仕度に参りました」などと言って起こしにきているはずの使用人たちが、今朝に限ってまったく現れない。普段なら、どんなに眠くて寝かせてほしくても「いい加減起きられませんと」などと小言を食らい、たとえば執事長ガガノフあたりに布団をひっぺがされるはずなのに。

 いつものように魔王がきれいにしておいてくれたらしく、体は十分清潔だった。それで置いてあった衣服を適当に身に着けて廊下へ出ると、扉の前には護衛のダンパが立っていた。彼だけはどんなことがあろうと、リョウマの側を離れることがないのだ。

「あ。おはよ」
「おはよう存じます、リョウマ様」
「みんな、どしたの? なんでだれもいねーの」

 廊下のあちこちに視線を走らせつつした質問には答えず、ダンパは穏やかな声でただ一言「朝食に参られますか」と訊いてきたのみだった。
 リョウマのイヤな予感は加速する。これは明らかにおかしい。なにか、いつもとは違う事態が起こったのに違いない。

「ダンパさんっ。何があった? ちゃんと教えてくれよ」
「まずは朝食を。そのあとで、トリーフォン閣下からお話があるとのことです」
「トリーフォンから?」

 どきん、どきんと心臓の音が早くなってくる。とにかく、ダンパは「まずは食事を」の一点張りでどうにもならないので、仕方なく朝餉を供される部屋に向かった。
 そこでも、普段ならいるはずの使用人の数が明らかに少なかった。ざっと見たところ、いつもの半分ぐらいの人員しかいない。リョウマは口の中に無理やり食物を押し込むようにして食事を済ませ、すぐに席を立って、ダンパに案内されるままとある部屋に向かった。

 そこは魔王城の中でも、政務を中心に行われている場所の一角だった。歩いているうちにも、文官や士官たちがなんとなく緊張した面持ちで忙しなく行き来するのが目立った。

(いったい、何があった……?)

 案内された部屋に入ると、そこにはすでに将軍トリーフォンが待っていた。かたわらで執務の手伝いをしていた文官、武官たちがすぐに人払いされ、部屋にはトリーフォンとリョウマ、そしてダンパの三名だけが残される。

「よく来てくれた」

 リョウマが応接セットのソファに腰をおろすと、茶を供するような手間もかけず、トリーフォンはすぐに本題に入った。

「魔王陛下より、そなたに伝言を頼まれている。落ち着いて聞いてもらいたい」
「伝言っ? って、どーゆーことだよ。エルがどっか行ったのか?」
「陛下は早朝、出立された。彗星の軌道変更、あるいは破壊作戦──我らはこれを『流星メテオ』から『ミッションM』と呼称しているが──これに、御身おんみみずから出向かれたのだ」
「なんっ……?」

 衝撃だった。

「ちょ……ちょっと待てよ。ダイダロスのおっさんの作戦結果は、今日わかるはずじゃ」
 トリーフォンとダンパがぴくりと反応し、一瞬だけ視線を交わし合うのが見えた。
「……そなた。陛下から聞き及んではいなかったのか」
「な、なにをだよっ」
「ダイダロスの作戦は失敗した。残念ながらな。その報はすでに、一昨日の時点で作戦司令部にもたらされていた」
「なっ……」

 「あの野郎、嘘をついたのか」。まず思ったのはそれだった。
 隠し事をするのは、多くはうしろめたいことがある場合だろう。だがこの場合、きっとそれはリョウマをここへ置いていくためだったのに違いない。そうでなければ自分は、「一緒につれていけ」「一緒に戦わせろ」と相当ゴネたに違いないからだ。

「それほど事態は切迫してきているということだ。魔王国民の宇宙への脱出作戦も、順次始まっておる。パニックを避けるため、多くは極秘裏にな。そなたら《レンジャー》には、速やかに人間の民の避難誘導に当たってほしいとの仰せである」
「くそっ……!」

 思わずリョウマはテーブルに拳を叩き落とした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

二つの顔を持つ二人 ~イケメン俳優×カフェの少年~ 彼の前でなら本当の自分を見せられる

大波小波
BL
 五条 颯真(ごじょう そうま)は、人気絶頂のイケメン俳優だ。  アクターとしてだけでなく、ミュージシャンやデザイナー、タレントなど、多岐に渡って活躍している。  海外からのオファーも多く、この国を代表する芸能人の一人だった。  しかし、颯真は旅番組のロケ中に、彼を全く知らない男子高校生・玉置 郁実(たまき いくみ)に出会う。  プライドを傷つけられた颯真だが、爽やかで愛らしい郁実の気を引こうと、悪戦苦闘を始める。  自分を印象付けて、郁実に認識してもらいたい、と始めた颯真の工夫や作戦の数々。  そんなプッシュに始めは戸惑っていた郁実だったが、次第に彼に好感を持つようになる。  颯真もまた、郁実の隣では心からリラックスできる自分を、発見していた。  惹かれ合い、触れ合うようになった二人。  しかし郁実には、次々と不幸が襲い掛かる。  颯真は、彼を支えることができるのだろうか……。

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

人気俳優に拾われてペットにされた件

米山のら
BL
地味で平凡な社畜、オレ――三池豆太郎。 そんなオレを拾ったのは、超絶人気俳優・白瀬洸だった。 「ミケ」って呼ばれて、なぜか猫扱いされて、執着されて。 「ミケにはそろそろ“躾”が必要かな」――洸の優しい笑顔の裏には、底なしの狂気が潜んでいた。 これは、オレが洸の変態的な愛情と執着に、容赦なく絡め取られて、逃げ道を失っていく話。

過保護な義兄ふたりのお嫁さん

ユーリ
BL
念願だった三人での暮らしをスタートさせた板垣三兄弟。双子の義兄×義弟の歳の差ラブの日常は甘いのです。

魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ
BL
気がつくと、なぜか、魔王になっていた俺。 魔王の手下たちと、俺の本体に入っている魔王を取り戻すべく旅立つが・・ なんで、俺の体に入った魔王様が、俺の幼馴染みの勇者とできちゃってるの⁉️ エブリスタにも、掲載しています。

処理中です...