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ラブスターミッション16
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『アジアの教会』と呼ばれた古代遺跡・・・。かなり巨大だ。千年は砂に埋もれていたのだろう。しかし、今は半分以上は発掘が済んでいる。内部に入り込んでいた砂は殆どが除去されている。周囲に衛兵の気配がしなかったから、我々は中央へ、中央へと進んでいった。中央へ進む程スロープが下方へ向かっており、中央付近はほぼ地下一階位の深さとなる。
そこにあったのは、『箱』だった・・・。
この箱は、魔仮面の男によって、ここへ持ち込まれたようだ。そして、この古代遺跡の真中に置いた。それは明白だ。魔仮面の男は、この建造物がピラミッドパワーのようなものを発生させる装置であると考えているのだろうか。今まで、いくつかの報告は読んだ事がある。エジプト・カイロ市のギザの巨大ピラミッドは、その中央部で何らかのエネルギーを発生させるための装置である可能性もある、とか、古代インドの遺跡もまた未知の巨大エナジー装置である、とか、そういう話だ。魔仮面の男は、この遺跡もそのような力を持つと考えているのか。たしかに、私は考古学も又、専門分野だがそれは、机上の論理のみで、レポートをずっと読んできた人間に過ぎない。経験はほとんどない。そうだ、私はそんな男だ。研究ばかりだ。それはそれでいいことだが、実地訓練が足りていない。
私たちは、『箱』に近寄った。 ・・・! 何か、危険な気配がする。現在の私はあまり分析装備を持ち合わせていない・・・。通信式の電脳は機能しなくなっていたし、独立設計で、やや旧型の型式のポータブル電脳はこの種の分析が何処迄可能か分からない。しかし、やってみよう。私は、ポータブル電脳の超小型アンテナを『箱』に向けた。このポータブル電脳はそのモニターがいくつかの色を表示することでしか、物事を通達出来ない。だが、それが一九五五年の超科学力の限界だ。現代人の限界。
モニターが真っ赤になった! これは、危険度を示すと同時に、・・・そう、この箱の中に核兵器が収納されていることを示している!
「核兵器だ・・・」私は、震えながら言った。
オレンジボーイの顔が一瞬険しくなった。
私は注意を促した。
「オレンジボーイ、これ以上、あの箱に近寄るな。あの中には核兵器が入っている。どうやってか分からないが、魔仮面の男は、ここに核兵器を持ち込み、あの箱の中に収納したのだ・・・!」
これは、危険な任務だ・・・。魔仮面の男のグループ自体は十名と聞いている。村民が最後の正確な情報修正では、七十名・・・。脱出できるか・・・? そもそも、なぜ、魔仮面の男らは、核武装したテログループになったのだ・・・? そして、魔仮面の男は、このグループに於ける独裁者なのだ。「そもそも」論を、あまりやりたくない、という人もいるが、こうした人々は、どこかで独裁を生み出す手助けをしているように感じる。かつて日本軍も独裁国家の国軍だった。これは、「そもそも」論を行わないという日本人の問題点が生み出した結果ともいえるし、いまなお、そもそも・・・ということを考えずに独裁と権威にのっかっていく危険な国家もある。
リセに居た時から、私は『独裁政治』がなぜ起きたのか、考えていたし、リセを出てからも、思索に耽り、助けになりそうな本を読んだ。
社会学の祖・エリックフロムの代表作『自由からの逃走』では、全体主義・独裁の心理学的起源を明らかにした。そしてデモクラシー・民主主義が取るべき道を明らかに示した。 フロムは言う。人間は自分の成長と自己実現が阻まれると、一種の危機に陥る。この危機の中で、人間は、攻撃性、サディズム、マゾヒズム、権威への従属に向かう傾向がある。この傾向を打開するために、自分自身の有機体としての生産性を実現する生活が大切と言った。フロムはスピノザと同じく「幸福は徳の証」と考えた。生産的生活と人間の幸福を願う人道主義を持てば、人は幸福になれると言った。権威主義・サディズム・マゾヒズムは人間性が開花されないときに起こるとした。ファシズムの勃興を心理学的に彼は分析した。近代において発生した個人の自由がいかにして権威主義とナチズムを生み出したのか? サディズム・マゾヒズム・権威主義を、人間の、「自由からの逃走のメカニズム」とし、真のデモクラシーを保つためにどうすべきか考えていた。
「自由からの逃避のメカニズム」として破壊性と機械的画一性も指摘された。思考や感情や意思や欲求は個人の自発的なもの由来ではなく、社会や他人による影響の大きさがあり、自分自身によってのみ思考し感じ欲求することの難しさも指摘した。
エリックフロムは人間性を破壊する権威主義の危険を説いた。そして人間性を守り育てようとする人道主義の重要性を語った。人間は人道主義的な倫理を信奉して生産的に生きることが大切だと。それに反するのが権威主義だ。これはナチズムに傾倒していったドイツを考察したことから生み出された思索だ。何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか。その思索だ。
社会そのものが自由の意味を履き違えた、というのが、ナチスドイツを生み出した原因ともいえる。自由というものは本来はそれが与えられることに対しての孤独や責任を受け止めるということが求められるわけであり、その覚悟を持った上で自由を希求して得た者によって構成される社会こそが望ましい社会の形態といえるわけである。だが当時には孤独や責任を受け止める覚悟を持たずとも全ての人間に対して自由が与えられており、その時に自由が与えられていた大衆というのが自主的に孤独や責任を受け止める覚悟を持とうとすることもなく、自身の幸福を追求することのみの人生を送っていたということから国家そのものがあのような状況へと進んでいったというわけである。また当時の国民は自らが希求して自由を得たということではなく、自由を得るということが義務づけられていたということも自由の意味を本来とは履き違えていたとされている。書は自由について書かれており、自由と孤独について書かれている。自由であるための義務や責任は社会的な常識や期待に関わることであるが、自分が考える思考、感じる感情や欲求や意思が、社会的に周りのひとから期待される社会的常識などによる思考や感情や意思や欲求で形成されていて、本当に自分自身に由来するものなのかを問いかけている。無意識的な欲求を抑圧することで起きている社会心理学的な現象についても書かれている。自由から逃避するメカニズムとして権威主義的性格、破壊性、機械的画一などが書かれている。
権威主義的性格、破壊性、機械的画一に気をつけよ!
全体主義台頭の根底に“自由”から逃れ、権威に“服従”しようとする人民の願望が存在したのだ。孤独と不安が蔓延する時代に(うさんくさい)「強い指導者」を求める人間社会の危機への提言、それがフロムの著作である。
『アジアの教会』と呼ばれた古代遺跡・・・。かなり巨大だ。千年は砂に埋もれていたのだろう。しかし、今は半分以上は発掘が済んでいる。内部に入り込んでいた砂は殆どが除去されている。周囲に衛兵の気配がしなかったから、我々は中央へ、中央へと進んでいった。中央へ進む程スロープが下方へ向かっており、中央付近はほぼ地下一階位の深さとなる。
そこにあったのは、『箱』だった・・・。
この箱は、魔仮面の男によって、ここへ持ち込まれたようだ。そして、この古代遺跡の真中に置いた。それは明白だ。魔仮面の男は、この建造物がピラミッドパワーのようなものを発生させる装置であると考えているのだろうか。今まで、いくつかの報告は読んだ事がある。エジプト・カイロ市のギザの巨大ピラミッドは、その中央部で何らかのエネルギーを発生させるための装置である可能性もある、とか、古代インドの遺跡もまた未知の巨大エナジー装置である、とか、そういう話だ。魔仮面の男は、この遺跡もそのような力を持つと考えているのか。たしかに、私は考古学も又、専門分野だがそれは、机上の論理のみで、レポートをずっと読んできた人間に過ぎない。経験はほとんどない。そうだ、私はそんな男だ。研究ばかりだ。それはそれでいいことだが、実地訓練が足りていない。
私たちは、『箱』に近寄った。 ・・・! 何か、危険な気配がする。現在の私はあまり分析装備を持ち合わせていない・・・。通信式の電脳は機能しなくなっていたし、独立設計で、やや旧型の型式のポータブル電脳はこの種の分析が何処迄可能か分からない。しかし、やってみよう。私は、ポータブル電脳の超小型アンテナを『箱』に向けた。このポータブル電脳はそのモニターがいくつかの色を表示することでしか、物事を通達出来ない。だが、それが一九五五年の超科学力の限界だ。現代人の限界。
モニターが真っ赤になった! これは、危険度を示すと同時に、・・・そう、この箱の中に核兵器が収納されていることを示している!
「核兵器だ・・・」私は、震えながら言った。
オレンジボーイの顔が一瞬険しくなった。
私は注意を促した。
「オレンジボーイ、これ以上、あの箱に近寄るな。あの中には核兵器が入っている。どうやってか分からないが、魔仮面の男は、ここに核兵器を持ち込み、あの箱の中に収納したのだ・・・!」
これは、危険な任務だ・・・。魔仮面の男のグループ自体は十名と聞いている。村民が最後の正確な情報修正では、七十名・・・。脱出できるか・・・? そもそも、なぜ、魔仮面の男らは、核武装したテログループになったのだ・・・? そして、魔仮面の男は、このグループに於ける独裁者なのだ。「そもそも」論を、あまりやりたくない、という人もいるが、こうした人々は、どこかで独裁を生み出す手助けをしているように感じる。かつて日本軍も独裁国家の国軍だった。これは、「そもそも」論を行わないという日本人の問題点が生み出した結果ともいえるし、いまなお、そもそも・・・ということを考えずに独裁と権威にのっかっていく危険な国家もある。
リセに居た時から、私は『独裁政治』がなぜ起きたのか、考えていたし、リセを出てからも、思索に耽り、助けになりそうな本を読んだ。
社会学の祖・エリックフロムの代表作『自由からの逃走』では、全体主義・独裁の心理学的起源を明らかにした。そしてデモクラシー・民主主義が取るべき道を明らかに示した。 フロムは言う。人間は自分の成長と自己実現が阻まれると、一種の危機に陥る。この危機の中で、人間は、攻撃性、サディズム、マゾヒズム、権威への従属に向かう傾向がある。この傾向を打開するために、自分自身の有機体としての生産性を実現する生活が大切と言った。フロムはスピノザと同じく「幸福は徳の証」と考えた。生産的生活と人間の幸福を願う人道主義を持てば、人は幸福になれると言った。権威主義・サディズム・マゾヒズムは人間性が開花されないときに起こるとした。ファシズムの勃興を心理学的に彼は分析した。近代において発生した個人の自由がいかにして権威主義とナチズムを生み出したのか? サディズム・マゾヒズム・権威主義を、人間の、「自由からの逃走のメカニズム」とし、真のデモクラシーを保つためにどうすべきか考えていた。
「自由からの逃避のメカニズム」として破壊性と機械的画一性も指摘された。思考や感情や意思や欲求は個人の自発的なもの由来ではなく、社会や他人による影響の大きさがあり、自分自身によってのみ思考し感じ欲求することの難しさも指摘した。
エリックフロムは人間性を破壊する権威主義の危険を説いた。そして人間性を守り育てようとする人道主義の重要性を語った。人間は人道主義的な倫理を信奉して生産的に生きることが大切だと。それに反するのが権威主義だ。これはナチズムに傾倒していったドイツを考察したことから生み出された思索だ。何が原因であのような状況となり、また何に導かれてあのように進んで行ったのか。その思索だ。
社会そのものが自由の意味を履き違えた、というのが、ナチスドイツを生み出した原因ともいえる。自由というものは本来はそれが与えられることに対しての孤独や責任を受け止めるということが求められるわけであり、その覚悟を持った上で自由を希求して得た者によって構成される社会こそが望ましい社会の形態といえるわけである。だが当時には孤独や責任を受け止める覚悟を持たずとも全ての人間に対して自由が与えられており、その時に自由が与えられていた大衆というのが自主的に孤独や責任を受け止める覚悟を持とうとすることもなく、自身の幸福を追求することのみの人生を送っていたということから国家そのものがあのような状況へと進んでいったというわけである。また当時の国民は自らが希求して自由を得たということではなく、自由を得るということが義務づけられていたということも自由の意味を本来とは履き違えていたとされている。書は自由について書かれており、自由と孤独について書かれている。自由であるための義務や責任は社会的な常識や期待に関わることであるが、自分が考える思考、感じる感情や欲求や意思が、社会的に周りのひとから期待される社会的常識などによる思考や感情や意思や欲求で形成されていて、本当に自分自身に由来するものなのかを問いかけている。無意識的な欲求を抑圧することで起きている社会心理学的な現象についても書かれている。自由から逃避するメカニズムとして権威主義的性格、破壊性、機械的画一などが書かれている。
権威主義的性格、破壊性、機械的画一に気をつけよ!
全体主義台頭の根底に“自由”から逃れ、権威に“服従”しようとする人民の願望が存在したのだ。孤独と不安が蔓延する時代に(うさんくさい)「強い指導者」を求める人間社会の危機への提言、それがフロムの著作である。
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