ザ・ライヤーズ・ジャーナル

yoshimax

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ラブスターミッション21

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 長い沈黙があった。
 携帯型電脳は、通信機能が制限されながらも、気象情報だけは正確に受信している。
 雷雨が来るようだ。
 もくもくと、グレイの雲が重なり、空を覆った。
 携帯型電脳は注意を呼びかけている。
「アテンツィオーネ、アテンツィオーネ!」そう言われても、こっちは牢屋の中。動くことは出来ない。たしか、聖書では、牢屋に囚われた使徒・聖パウロは、天使が起こした地震で(牢屋の)入口の鍵が壊れ、そこを脱出したとあったと思うが・・・。そういうことも、起こり得る。
 厚い雲同士がこすれ合っている。摩擦で、雲の漆黒の間から、金色の電流の様な、細長い光がチカチカ見えている。まだ、ここ迄、すこしの距離があるのだろう。雷鳴はさほど大きくはない・・・。こんな砂漠のようなゾーンでは、距離感が分からなくなる。遠いのか、近いのか。比較になるものが少ないからだ。太陽がほぼ、地平線の辺りから出現する世界だ。圧倒的空間の拡がりに驚く。その上空を、厚い雲が覆っている。かつて教会で神父様は、雲は神の出現を予感させるものだと言った。子供だった私はその光景を想像し、出会ってみたいと思った。神が出現する、又は、神の力が働くときに、もくもくと煙のように雲が立ち込めるということがあり、それをキリスト教会ではシャカイナ・グローリーというのだ。栄光のあらわれだ。だが、今、ほんとうに栄光はあらわれるのか・・・。
 長い沈黙は続く。
 仮面の男は、神ならぬモノに礼拝を捧げている。そして、神ならぬ男が、自らを神格化し、神になりかわろうというのか。
 とんでもない事件に巻き込まれたものだ。
 私は、長い沈黙の中で、東南アジア・インドチャイナ半島での生活を思い出していた。
 それはロングバケーション、のようなものだったと言えるだろう。
 母の世代のフランス女性マルグリット・デュラスが住んでいた頃から、インドチャイナ半島にはフレンチコロニアル・エリアがあったが、その影響で、東南アジアにはフランス風のカルチャーが生き続けていた。
 気温は暑かった、だが、きらいじゃない。
 時折、激しい雷雨があった、それもまあいい。
 私は東南アジアを楽しんでいた。
 東南アジアの食べ物は美味しい。
 うまいコーヒーもある。
 フランス風カフェもある。フレンチトーストを食しながら、フランスの漫画も読める。
 アメリカの商売人もけっこういる。ハワイ風のカフェを開いているアメリカンもいる。
 マラサダとコーヒーのブレイクタイムも楽しめた。
 マラサダの味がなつかしい。ハワイの揚げパンだ。
 アメリカ人がハワイから持ち込んだ漫画もあった。
 どきどきして読んだ。
 メコンで泳ぐ女性たちを見ながら、ブレイクにうとうとしていた・・・。
 あれは、ほんとうにいい時間だった。
 牢屋での、長い沈黙の間、そんなフラッシュバックが詩のようによみがえった。

 

 


 
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