ザ・ライヤーズ・ジャーナル

yoshimax

文字の大きさ
35 / 157
第二章 1995

MONICA

しおりを挟む
><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><

 この町は、ヤワラート。そうは言っても、知らない人も多いだろう。最寄りのメトロ駅はファランポン。この辺りは華人系移民が多い。蔵鷹は、その一角のアパルトマンに期間限定で住んでいた。彼には都市計画の才能があったから、このヤワラートの部分的なリニューアルをも任されていた。ヤワラート・エリアには、多くのアジアからの物産も数えきれないほど流入している。
 私はこの町で、驚くべき再会をした。トゥトゥベだ。妻はあのスーソだと言うのだ。五十一歳になっていた。東南アジア及び華人ゾーンでかなり若者に人気の、電子機器製造企業の長になっていた。息子が居るらしい。私はその子、ケンの家庭教師を頼まれてしまった。ケンは十二歳だ。私には何故か、教職という宿命が付いて廻る。帝政時代に、私の曽祖父が教員をしていたことが運命に乗っかって来ているのだろうか・・・。オーストリア・ハンガリー帝国のフランツ・ヨーゼフ一世の時代のことだが。
 だが、私は今日丸一日眠たかった。ケンにフランス語を教えながら、うとうとしていた。何故なら、昨夜は明け方迄、私はセックスに明け暮れたからだ。ヤワラートに来てから、よく行くパン屋があったのだが、そこの女主人と恋仲になったのだ。彼女はモニカといった。モニカは四十三歳で二人の子供が居たが、離婚していた。彼女は二十歳の私と倍以上、歳の離れた女だった。
 ヤワラート・エリアを含むBKK(バンコック)は、スコールも多い。ある日、夕方ごろだった。夕食用のパンをモニカのパン屋で買った後、帰路に着こうとするや否や、突然のスコールで私はびしょ濡れ。パン屋の軒下に戻り、しばらくスコールを逃れて立っていた。すると、突然のことだったが、私の腕に、しっとりした女性の腕が絡んだ。モニカの腕だった。「ここに居るのも大変でしょ、しばらく中に入って、シャワーもあるから、奥で着替えなさい」彼女はそう言うと、私の手を引いて、店の中に入れ、店のシャッターを下ろした。「まだ少し閉店迄、時間があるけどスコールで客足も遠のいたから今日は閉めるわ」。 店の奥へ行くと、白い簡素な階段があり、それを登り、中二階のような場所がシャワー室だった。モニカは言う、「前の彼氏の置いていった新品の着替えがあるから、それを着たら良いわ」。 モニカはにこりと笑った。
 私はシャワーに入った。汗とスコールでずぶ濡れになっていたので、シャワーでさっぱりした。その時、大理石の床になっている、比較的広いシャワー室にモニカが真っ裸で入って来た。彼女の肉感的な身体に私は逆らう術など皆無。彼女のセックスは情熱的で激しかった。こうして、私たちの関係は始まり、私たちは非常に歳の離れた恋人となった。そして昨夜も情熱的に交わった。まるで、彼女が「私の中でこの世界の全てを忘れてしまいなさい」とでも言うような、甘く激しく官能的なめくるめく時間が過ぎて行ったのだ。
 それで私は今日も眠たいのだ。仕事が終わり、ヤワラートの通りを見ながら、歩いてゆっくり帰ることにした。
 一九九五年、バンコック・ヤワラート地区。私の知らない日本企業が多く、ここに拠点を持ち、進出していた。いろいろなサインが目に留まった。SONY, PANASONIC, SHARP, NEC, SANYO, FUJITSU, CANON, TOYOTA, HONDA, VICTOR/JVC, SUZUKI ・・・。私が知っていたのは、NINTENDOと、日本コロムビアレコードくらいだ。前者は、かつては花札やプレイングカードの会社だった。この九十年代は、電脳ゲームによって知られているようだ。
 今日は、ガパオライスを夕食に食べることにした。旨そうな店が目に入ったからである。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

処理中です...