私の主人が自分を悪役令息だというのですがそれは大きな問題ではございません

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私の主人、この経緯については生涯知り得る機会はない(お伝えする事もない)

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「フォジュロン!私たち命で償わなくても良いかも!!」
「本当か!」

ペルソンはそう叫ぶと、侯爵達が話している中に割って入って行きました。
「ちょっとちょっと、悲観的になるのはまだ早いかもしれないです!」
「どういう事?」
諦めるようにさめざめと涙を流している侯爵夫人はハンカチで鼻をかみながらで聞き返されました。
「さっきのガスピアージェの息子さん、エノーム君の案を採用しましょう」
「純血のエルフ様、それは、私の息子に死ねと仰っているのですか?」
「本人は死ぬつもりはないみたいだよ。それにね、貴方を見て気がついたんだけど、貴方よりも息子さんの方が僕らに近いんだ!」
「「「は?」」」
はしゃぐように放った言葉に、ペルソン以外の全員が声を揃えました。

冗談でも止めていただきたい。
貴方に近いなんてこれ以上ない侮辱です。

「フォジュロン、ペルソンは何を言ってるんだ?」
「侯爵様、申し訳ねぇですがワシにも分からんです」
「私の息子が貴方に近いと?どういうことでしょうか?確かに息子は魔術が得意ではありますが……」
「だーかーらぁ、ガスピアージェの家の初代って僕らと同族なんだよね。息子さんには子爵よりも祖先の血が強く残ってるように視える」
「ーー隔世遺伝でしょうか?」
「それかも!いや、今まで君しか見ていなかったからガスピアージェ家はみんなそうなのかと思ってたんだけどさ、子爵を見たらフッツーの人間なんだもん」
「私は人間ではないと仰るのでしょうか?」
「ほとんど人間だけど、純粋な人間に比べれば魔力が大分強い。それに寿命も長い。今まで視てても長いなーとは思ってたんだけど、家系的にそうなのかなって思ってたんだよね☆ で、その親が禁じてるんならそれ相応のリスクと思ってたんだけどさ、子爵の定規と息子さんの定規は違うみたい」

その言葉にようやく合点がいったとフォジュロンが付け足し始めました。
「つまり、今まではガスピアージェの坊ちゃんしか見てなかったから『ガスピアージェ家の普通』は『人間の普通』とは違うと思っとって、命を削る事に問題があると思ってたが、子爵を見たら他の人間と変わりなく、ガスピアージェの坊ちゃんだけが俺たちに近い状態なのが分かったってことか」
「そう!さっすがフォジュロン!」
「普通の人間でありゃ命をかけねぇと出来ないレベルの事が、ガスピアージェの坊ちゃんなら」
「そうそう!人より多い分で賄えるはず!」
それからペルソンは私の方を振り返りました。
「人と同じだけ生きられれば結構です。長く生きられるとしても、1人で生きる時間が増えるなんて願い下げです」
「ん?私なら君よりもずっと長い寿命だから全然一緒に楽しんであげるよ?」
「素晴らしい提案ですね」

私の返答にペルソンは肩をすくめると、そのまま侯爵へ話を続けました。
「ということで、君たちが心配していたエノーム君の命問題は解決って思って良いんじゃないでしょうか」
「エノームよ、お前自身はそれで良いのか?サーヴィユも、嫌なら断って良いのだ。寿命は金では買えないものだ。せっかくの長寿をわざわざーー」
「侯爵、今も申し上げましたが、人と同じだけ生きられれば私は十分です。何よりもシニフェ様やプラン、父上や皆さんと同じ時を過ごせれば私は幸せなのです。今までの人生はずっとシニフェ様とプランと一緒だったのです。シニフェ様が居ない孤独な人生も長寿はいりません。父上、私は自分の意志で自分の命を使いたいのです」
「そうか。……それがエノームの選択なら、私からはもう何も言わないよ。思う通りにしなさい」

父上の答えを聞くとペルソンはすぐに移動する為になにやら魔法陣のような物を書き始めました。
侯爵家の絨毯の上に直接、という点は彼には全く問題ではないのでしょう。
そして当然のように私とプランにそこの陣の中に入るように手招きをして、侯爵達には入らないように告げました。

「侯爵には残って、してもらいたい事がふたつあるんだ」
「なんだ。私に出来る事があれば何でもしよう」
「まず一つめは、グロワ家の息子さんに手伝ってもらうように向こうの家に使いを送って欲しい。あの子じゃなきゃこれが使えないから」
これ、と空中に手を突っ込むような動きをしますと、どこからともなく赤い槍が現れました。
「できればな、その子には報償みてェなもんをあげてくれネェか?」
フォジュロン氏の補足に侯爵が聞き返しました。
「本来でありゃ、その子は英雄になれる力があんだが、おそらくアルダーズを還すことで力がなくなっちまう。キツイ言い方をすりゃ、グランメションの坊ちゃんを助ける為に、才能を開花させる前に消化しちまうようなもんだ」
侯爵はその言葉を聞いて力強く頷きました。
「勿論だ。ふたつめはなんだ」
その問いかけにペルソンが侯爵夫人の方へ視線むけると、侯爵夫人は扇を広げて顔を背け私は何も聞いていないと言う顔を浮かべノワールを連れて部屋の外へ出て行きました。
「王族や隣国にはこの件を知られないようにしたい」
「ほう。なぜだ?」
「侯爵家のためってとこかな」
「わかった。努力しよう」
と侯爵が答えて頷くのとほぼ同時に、ペルソンは指を鳴らしました。
つまり、ペルソンは侯爵の返事は求めておらず、彼が口にした時点で侯爵が実施するのは確定事項という意識なのでしょう。
この対応一つとっても、侯爵家はペルソンとの雇用関係を契約満了とすべきと思います。
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