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第一部
61.今のところはね
しおりを挟む「急に倒れたのでびっくりしました。体は大丈夫ですか?」
「っ、ええ、ありがとうございます」
―――やっぱり、苦手だな。
一度拒絶反応が出ると苦手意識が生まれるため、精神的に辛くなる。
「ユリはまだ少し疲れているようですので、このまま寝かせてもよろしいでしょうか」
「そうですよね。構いません」
「それと、ユリが寝ている間、少しお話を聞かせていただいてもよろしいでしょうか」
「? お話、ですか?」
「普段、どのようなことをしているのか知りたいんです。私は民族に関わる研究をしていたことがありまして」
「そうなんですね。あっちで待ってますね」
「ありがとうございます」
ルアがそう言うと、カレンは部屋から出て行った。
「……ルア、すごいね」
「あいつの調査をするためにここに来たんだ。当然だろ。あいつをなるべく、あんたに近づけずに話を聞くためにはあの理由が一番いいと思っていくつか設定の候補を考えていたんだ」
―――おぉ……さすがルア。有能。
いい従者を持ったな、と頷いた。
「寝ててもいいが……どうする? 会話の共有をかけとくか?」
「ん、お願い」
「眠くなったら寝ていいからな」
「ありがと、ルア」
「俺はあんたの従者だからな」
そう言うと、ルアは部屋から出て行った。
私はベッドに寝っ転がってルアから伝わる会話を聞いた。
「【それで、どんなことを知りたいのですか?】」
「【そうですね。ではまずあなたと会った花畑について教えてくださいませんか? あそこには季節でない花も咲いていました。どのような方法で育てているのですか?】」
「【! まさか、気づかれるとは思いませんでした】」
「【カレンさんが育てているのですか?】」
「【はい。薬にもなるんですお花で、色も明るいから、街が明るくなりますようにって育てているんです】」
「【それは素敵ですね】」
「【ふふっ、ありがとうございます】」
―――花、か。
たしかにあそこにはたくさんの花が咲いていた。
カレンが育てているのか。
ちょっと【解析】入れてみよ~っと。
主人公《ヒロイン》が育てた花ならすっごい効果とかあるかもしれないし。
「【村の人、みんなカレンさんのことをいい人だって言っていました。きっと、そのような行いからでしょう】」
「【まあ! 嬉しいです】」
……違和感があり過ぎて困るな。
いつものルアじゃない。
甘々のルアはルアじゃない。
―――口説いてるように聞こえる……。女慣れしてるとか?
「〈んなわけないだろクソ主人〉」
おや、ルアに聞こえていたようだ。
―――ニコニコ笑顔でヒロインスマイルゲットしてるくせに何言ってんのよ。
「〈言っとくが、全部演技だからな? 俺は基本的に笑わない。それと、ヒロインスマイルってなんだ?〉」
―――んー? カレンの笑顔のことだよ。
「〈カレン限定なのか?〉」
―――今のところはね。
主人公が複数いる可能性もあるのでなんとも言えない。
「〈ユリの服もそうだが、あんたの頭はどうなってるんだ?〉」
―――ああ、あれ?
ユリちゃんお気に入りの前世にあった『萌える猫×メイド』のことだろう。
―――私の頭の中にある知識ってだけで、私の趣味ではないわよ? あ、でも嫌いってわけじゃないから。私はあんまり得意じゃないけど、フリルとかリボンとか人が着てるのを見るのは好きなんだよね。ついつい熱が入る。
「〈もっと役に立ちそうなことに使えよ〉」
―――えー、やだ。私は私の好きなことにしか興味な
い、と言い終える前に、脳内で警報音が鳴り響いた。
さっき調べていたカレンの育てている花の情報が降りてきたのだ。
私は急いで魔法を発動させた。
―――【時間停止】!!
私は慌ててこの村の時を止めた。
ルアを残して、動けるのは私たちだけだ。
「〈おいユリアーナ、なにして……〉」
―――【転移】!
ルアと一緒に村から離れたところに【転移】する。
「っなんで【転移】なんか……」
「すぐにわかるよ。ルア、あれ、見える?」
「……?」
私は始めにいた花畑を指さす。
ルアはわけのわからない様子で見ていたが、やがて私の言いたいことを理解して驚愕した。
「まさか、あれ……」
「ええ。毒よ」
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