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暗雲
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しおりを挟む「本日は晴天なり!運動会日和だねぇ!」
「正確には体育祭な」
あっという間に時間が流れ、体育祭当日を迎えていた。当日まで、クラスでの練習や風紀の仕事の手伝いで忙しかった聖月である。ストレスを発散するかの如く、目を輝かせて開催を今か今かと待っている。大体の事情を聞いている蓮は苦笑気味だ。因みに、その後ろではすでに燃え尽きている少年が一人、逃走防止の生徒を張り付けて立っていた。
「やっぱり人身御供は実行委員だったか」
「しっ。これ以上ダメージ与えたら崩れちゃう」
「え、あれは燃え尽きた炭……というか、灰なの?」
体育祭の出場種目を決定するクラス会議。ゲテモノの障害物競争と借り物競争は、人気がなかった。やりたがるのは、ネタを求めた芸人気質の馬鹿のみ。さて、どうなる、と面白そうに見つめていた聖月だが、一向にその話が出てこず。訝し気な顔をしたのは実行委員もだった。
「おい、委員長、借り物と障害物は」
「え、それはもう決まってるけど?」
きょとん、とした顔で返される。クラスから出す人数は、それぞれ三人。複数回の出場も可能。さて、ここまで来て察した人間はどれだけいるだろうか。あーと笑った聖月。首を傾げた蓮と実行委員だったが、一瞬の後に察したのは実行委員だった。顔色を変えて委員長の手からプリントを奪う。ワナワナと震えた委員が叫ぶ。
「なんで、俺が両方にエントリーする事になっている訳?!」
「大丈夫。蓮と聖月も一緒だから」
「それのどこが大丈夫な訳?!」
ぐっとサムズアップされた委員。しかし、素早く突っ込んだのは蓮。目を剥いて抗議する。何となくそんな感じがした、と聖月は苦笑するだけだ。だってぇ、とくねくねと体を揺らす委員長は確信犯。
「是非とも、3人の可愛いコスプレ姿みたいじゃん?」
「きゃっ……」
「異議なし!」
却下、と叫ぼうとする蓮と委員。しかし、それをかき消すはクラス全員の賛成。あれよあれよという間に障害物競争は3人で決定。借り物競争に関しては、ネタを求めた馬鹿が一枠だけでも、と懇願したのと、運動神経の良い聖月をリレーに回したいという魂胆から蓮と委員の二人が強制となったが。
「つか、俺たちも人身御供って分かってる?」
「え、別に?楽しそうじゃん」
恨みがましい目で見られるも、聖月は首を傾げるだけ。どこまで行っても楽しいことが先行する聖月である。もう嫌だ、と蓮は半泣きである。そこに、アナウンスが流れてきた。
『れでぃーす、あんど、じぇんとるめん!待ちに待った、運動会の開始だよぉ!』
『レディースはいないだろうが馬鹿委員長。それに、運動会じゃなくて体育祭だ、小学生じゃあるまいし』
いつもの如くテンションの高い放送委員会委員長と塩対応な副委員長だ。顔を見合わせた蓮と聖月はさっとクラスの元へと走っていった。波乱の体育祭の幕開けだった。
『体育祭のトップを飾るのは、ムカデ競争!繋がれた足でどこまで走れるのか!』
『なんか、繋がれた足って嫌な表現だな』
『まずは1年生の部。……レディ、ゴォ!ああっと、トップのクラスの先頭を務めるのはイケメンだぁ!そのまま顔面から飛び込んでしまえ!』
『僻みと呪詛は禁止って先に言ったよな委員長?この場から引きずり出されたいか……って』
『うぉぉい!トップのクラス、そのままゴールイン!ついでに頭から突っ込んだ!ザマァ見ろイケメン!滅んでしまえ!』
『おい、そこの風紀。コイツつまみ出せ』
『ちょっとぉ?!』
「相変わらず愉快だね、放送委員」
「真面目に実況すると面白いって噂なんだけど。テンション上がると仕事放棄するって事でも有名なんだよね」
テンションマックスな放送。それに乗じてイケメン滅べ!なんて中層の男子勢が勢いづくからタチが悪い。イケメン推進派とイケメン敵視派の戦争の如くなってきている。
「いや、クラス対抗しようぜ」
「全くだ」
思わず突っ込みを入れたくなる二人だった。暫く代打の放送委員が実況をしていたが、すぐに委員長と副委員長が戻って来た。
『続きまして、棒倒しとなります。出場される選手はお集まりください』
『……。もう少しテンション上げろ馬鹿委員長。拗ねるな子供か』
「え、何が起きたん、委員長」
「多分、相当説教喰らったんじゃない?」
今日も平常運転な放送委員だった。
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