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2章
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しおりを挟むあおいさんと朝陽の家へ行った日から数日
掃除をしていれば、つけていたテレビからお花見を楽しんでいる様子が流れていた
アナウンサーが公園に訪れていた家族連れに話を聞いていて
あの日から家族連れに自然と目がいくようになった
2人が幸せそうにあかりちゃんを見ている姿に感化されたのは間違いなくて、、、
"幸せな家族" そのものだったあの空間に憧れた
あかりちゃんへの接し方を見ても優人さんが子供を好きな事は感じた
優しい優人さんのことだ
子供が出来れば今より過保護になるだろう
生まれた後も積極的に協力してくれるだろう
我が子を大事に育ててくれるだろう
そう思うのに、、、
俺は子供を産むのを怖いと感じていた
身体への負担もそうだが
"親に愛されずに育った俺がきちんと親になれるのだろうか?"
この気持ちが何より大きかった
もう愛情を知らなかったあの時の俺とは違う
今の俺には愛される喜びも、愛す幸せも知っている
だけど、ふとどうしても不安になる時はあって、、、
自分の子に躊躇わずに手を挙げていたあの母親の血が流れている自分が堪らなくこわくて
ふとした時に、"この手で我が子を傷付けたら" そう考えたら怖くて、、、
どうしても "2人の子供" の話題を出す事が出来なかった
するとメッセージを知らせる音に気付き見てみれば
[駅前の公園、結構桜咲いてるみたいだよ!今日は早めに帰れそうだからお花見しない?]
優人さんからのお誘いだった
無事試験を合格し、大学を卒業した優人さんはかずさんと同じ病院で研修医として働いていた
毎日忙しそうにしていて疲れているだろうに、こうして早く帰る日や休みの日にはデートに誘ってくれる
[お花見したいです!時間教えて貰えたらそれに合わせて公園向かいますね。]
[いいよ、家にいて。俺1回帰るから、そこから2人で公園に行こう]
[でも、それだと優人さん二度手間じゃ、、、]
[俺がそうしたいの!ダメかな?]
[ダメじゃないです、、、]
[ありがとう。それじゃあ終わったらまた連絡するね。]
そんなやり取りの後に少しでもオシャレをしようと掃除をさっと終わらせ、クローゼットへ向かう
気温を確認し薄い長袖の上からカーディガンに袖を通す
優人さんから貰ったピアスをつけ鏡でチェックする
「これでいいかな、、近くの公園で花見だしあまり気合い入れても...だよな。」
そう呟き時計を確認すればまだお昼を過ぎたばかりで
「いくらなんでも準備早すぎたか....」
なんて呟きながら思わず自分に対して笑いが込み上げる
"どれだけ楽しみにしてるんだよ"
そう思いながらリビングへ戻り、つけていたテレビを眺めながら時間が過ぎるのを待った
再放送していた映画に夢中になっていれば、あたりがオレンジ色に染まり外から聞こえる声が増えてきた事に気付く
時刻はもう夕暮れで、、、
再びそわそわとした気持ちになりながら優人さんからの連絡を待った
すると聞こえた着信音
急いで確認すれば優人さんで
「もしもし!」
「あっなつ!今、外出たからあと20分ぐらいでつくよ!」
「分かった、待ってるね。」
電話を切ったあとは念の為、と鏡の前に立つ
どこかおかしいとこはないかと上から下まで再度確認していく
"大丈夫そうだな。" そう思って時間を見るけど、あの電話からまだ5分も経っていなくて、、、
ソファーに座りながら待っているけど落ち着かなくて、待ちきれなくなった俺は思わず外に出た
マンションの下で優人さんが帰ってくる方を見ながら今か今かと待つ
少し冷えた手先を擦り合わせながらその時を待っていれば見慣れた姿に走り出す
そんな俺の姿に気付いた優人さんは驚きながらも抱きついた俺をしっかりと抱きとめてくれた
「どうしたの?」と優しく問いかけてくる優人さんに言葉を返そうと顔を上げた時、思ったよりも近くにあった顔に「あっ、」そう言ってゆっくりと離れた
待ちきれなくて思わず外で待っていたけど、自分の行動を改めて思い返すと何だか恥ずかしくなって俯けば「なつ?」と名前を呼ばれる
「どうした?」
「、、なんでもない、、」
「なぁつ?」
「、、恥ずかしくなっただけ」
「かわいい」
「可愛くない、、」
「かわいい!いつも玄関で待っててくれるのも嬉しいけど、こうやって迎えてくれるのも嬉しい。疲れ吹き飛んだ」
「ほんと?、」
「ほんと」
その言葉に嬉しくなって顔を綻ばせれば優人さんが俺の手をとり指を絡ませる
「せっかく下まで降りてきてくれたけど、荷物だけ置きに部屋行ってもいい?」
「うん。」
「ありがとう」
「べつに、、何も持たずに出てきちゃったから俺も戻りたかったしいーよ。」
そう言って手を繋いだままマンションの中に戻り部屋へ向かう
鍵を開け一度玄関の扉を閉めた瞬間、抱きしめられた
「優人さん?」
「お花見中はこうやってくっつけないでしょ?だから少しだけ、、、」
それに俺も腕を回し抱きしめ返す
ほんの1分程抱きしめ合い「そろそろ行こうか。」そう言って離れた優人さんに「うん」と返すけど、離れた温もりに少し寂しく感じる
すると、クスッと笑う声が聞こえたかと思えば唇に感じた温かくて柔らかい感触
驚いて顔を上げれば「この先は帰ったらね。」そう言って悪戯な笑みを浮かべる優人さんと目が合った
そのまま俺の手を絡め取り玄関の扉を開け「行くよ」と声をかけてきた
嬉しそうに歩く優人さんの横で、俺は必死に赤くなった顔を隠しながらお花見に向かった
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