勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第6章 旅館

第129話 屋台4

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 それから、どのくらい時間が経ったのか分からない。
 ぼんやりしていた意識が戻り、気づくとアリーの声が聞こえた。

「あぁ……ごめん。それで、何の話だったっけ?」

「あ、ラン。気づいたんだね。あれから2、3分くらい固まってたから、ちょっと心配したよ」

「えっ!?2、3分も!?」
 思わず声が裏返った。そんなに時間が経っていたなんて、全く気づかなかった。

「ご、ごめん……。それは心配かけたね」

「本当だよ……!」
 ティアナが少し大きな声を出した。
「ランが立ったまま気絶でもしたのかと思ったよ。もし、あーしの言葉で気絶したんだとしたら……って思うと……」

 ティアナの言葉が、胸の奥に突き刺さった。
 彼女が本気で心配してくれたのが伝わってくる。

「それで……なんで固まっちゃったの?」
 アリーが穏やかに問いかけた。

「あぁ……アリーに、『もしティアナと別れたら教えられない』って言われて……そのことを考えてたんだ」

「そんなことで?」
 アリーが少し呆れたように笑った。

「うん……。だって約束したんだし、守らないとって思って……」

 ティアナが小さく息をつき、静かに言った。
「そこまで気にしなくてもいいよ。もし、文字を覚える前に別れることになったとしても、その時は『運がなかったんだな』って思うだけ。
 教わった分だけを大事にして、あとはあーしが頑張ればいいしね」

 その言葉を聞いた瞬間、胸の中の重たいものが少しだけほどけた気がした。

「……ありがとう、ティアナ。そんな考え方、俺にはなかったよ」

「よかったね、ラン」
 アリーが優しく笑う。俺は小さくうなずき、ティアナの方を見た。
 彼女の顔を見ていると、自然と何かがこみ上げてきて……涙が、ひと粒だけこぼれ落ちた。

「ラ、ラン!?どうしたの?何か嫌なことでもあった?」

 焦ったようなティアナの声。俺は慌てて首を振った。
「え?別に何も……なんで?」

 その時、アクオスが真剣な声で言った。
「ラン……お前、今どんな顔してると思ってる?」

「え?俺……変な顔してるのか?」

「あぁ……いつもよりずっと悲しそうな顔してるよ。涙がこぼれるくらいに、な」

「……え?」
 アクオスの言葉に、俺は息を呑んだ。
 ……そんな顔を、していたのか。
 自分では気づけなかったけれど、胸の奥では確かに何かが揺れていた。


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