勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第3章 ロベルタ店

第36話 午前の仕事

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 仕事を始めようとしたものの、この部屋のどこで作業すればいいのか分からず、俺は声をかけた。

「あの……この部屋のどこで作業すればいいでしょうか?」

「あ、ああ……」
 エルザはちらりと部屋の中を見回し、それから小さく頷いた。

「この書類を持って、隣の部屋でやってくれ」

 そう言って、わざわざ俺たちをその部屋まで案内してくれた。

「ここなら誰も来ないから、集中してできるだろう」

 そう言い残すと、エルザは足早に元の部屋へと戻っていった。

「……さて、じゃあ書類を持ってこようか。アリー、ドアを開けてくれる?」

「うん、確かに誰かが開けないと入れないしね」

 アリーは頷きながら、俺の後ろについてきた。

「ラン、私も少し持とうか?」

「じゃあ、次の山は頼むよ。今は俺が運ぶから、ドアのほうお願い」

 ドアの前に着くと、俺は軽くノックした。

 トントン……

「エルザさん、書類を取りに来ました」

「入っていいよ。次からはノックしないで、勝手に持っていって構わないから」

「わかりました」

 山積みの書類のうち一束を持ち、アリーの開けてくれたドアを抜けて、作業部屋へと戻った。

 部屋に並べてみると、その量にあらためて息をのんだ。

「こうやって見ると……ほんと、すごい量だね……」

「まあ、そんなこと言ってても始まらないから。とにかく手を動かそう」

 ため息まじりに言いながら、俺たちはこつこつと書類を並べ替える作業に取りかかった。

作業を進めていると、どこからか音が聞こえてきた。

(……ん?なんの音だ?)

一瞬手を止めて耳を澄ますも、すぐに音は消えてしまい、そのまま俺は再び書類の整理に戻った。

その少し後だった。

「おい、お前ら!食事だ!早く来い!」

ドア越しに、エルザの怒鳴り声が響いた。

「えっ!? あ、はい……分かりました!今行きます!」

食事の時間になったことを知らせに来てくれたらしい。

「ラン、エルザさんが待ってるよ。早く行こ?」

「うん、行こうか」

俺たちは作業を簡単に片付けて部屋を出ると、エルザが待っていた。

「お待たせしました」

「お前ら、今日が初日だから食事場所はまだ知らないだろ?」

「は、はい……」
「この部屋と、さっきの部屋しか見ていません」

「だから、迎えに来た。じゃなきゃ、誰がいちいち呼びに来るかよ」

どこかぶっきらぼうながらも、ちゃんと気を遣ってくれているのが分かる言葉だった。

……なるほど。こういう細かい気配りが必要な職場だから、仕事が『きつい』って言われてたのかもしれないな。

「さっき、鐘みたいな音が鳴っただろう?」

「あ、はい。鳴ってました」

「ありゃ、食事の時間の合図だ。聞き逃すなよ」

俺は内心で『あぁ、あの音が合図だったのか』と納得しつつ、エルザの後についていった。
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