勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 第4章 馬車

第64話 人間不信3

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 翌朝……

「皆さん、おはようございます」

「おはよう!」

 ディーンとマックは明るく挨拶を返してくれた。けれど、ルネサスは……黙ったままだ。昨日の話がまだ尾を引いているのかもしれない。

 その沈黙が気になって、つい口が滑った。

「ルネサスさん、体調……大丈夫ですか?」

 言ってから、『しまった』と思った。ルネサスの表情が、ほんの一瞬だが歪んだのが見えた。

 そして返ってきたのは、低く冷えた声。

「この状態が……大丈夫に見えるのか?」

 その一言で、場の空気が一気に張り詰めた。

「……それは……」

 アリーが戸惑いながら言葉を継ごうとしたが、それがかえって火に油を注いだ気がした。

 俺はそっとアリーの腕を引き、ルネサスから少し距離を取った。そして小声で言う。

「アリー、今は何を言っても、ルネサスさんには届かないよ。だから……ディーンさんかマックさんに、ルネサスさんの様子を見てもらおう」

「う、うん……。すぐ呼んでくる!」

 アリーは部屋の奥にいるディーンたちの方へ駆けていく。入り口近くにいた俺は、自然とルネサスと二人きりになった。

 重く、気まずい沈黙。

 けれど、このまま放っておくのは違う。俺は意を決して声をかけた。

「ルネサスさん、何か……食べましたか? なんとなく、脱水に近いような気がして……」

 ルネサスは少し間を置いて、ぽつりと呟いた。

「……何も口にしたくない……」

 その言葉に、俺は絶句した。

 まさかここまでとは思っていなかった。想像以上に、ルネサスの心も体も限界に近いのかもしれない。昨日の会話が、こんなにも重くのしかかっていたとは……

 そんなふうに考えていた時、バタバタと足音が聞こえてきた。アリーがディーンたちを呼びに行ったのだろう。

 俺はルネサスから一旦距離を取り、ディーンに静かに伝えた。

「ルネサスさん、何も食べていないみたいです。俺はまたそばに戻りますね」

「わかった、こっちは任せて」

 そう返すディーンに軽くうなずき、俺は再びルネサスのそばへ戻った。

「ルネサスさん……。言いたいことだけでいい。無理に話さなくてもいいから、少しだけ……聞かせてほしい」

 しばらく沈黙が続いたあと、ルネサスが、ぽつりとつぶやいた。

「……別に……俺のことなんか、どうでもいいだろ。昨日だって……」

 その言葉に、俺の心が凍る。

 昨日の話は、ルネサスにとって本当にギリギリだった。ずっと限界の中にいたのかもしれない。

 俺は何とか言葉を探していた。
『みんなの過去が気になっただけ』
 ……そんな軽い理由で、踏み込んではいけない場所に踏み込んでしまったのだろうか。

「だいたい……俺は、過去の話なんかしたくなかったんだ。それを、お前たちは……」

「ご、ごめん……。そこまで思い詰めてるとは、思わなくて……」

 するとルネサスが顔を上げた。そして驚いたように言った。

「あ、ごめん……。ランだったのか。……八つ当たりみたいなことして……」

「いや、大丈夫だよ」

 俺がそう言うと、ルネサスは少しだけ目を伏せながら言葉を続けた。

「ディーンかマックがそばにいるもんだと思ってた……」

 その声は、少しだけ弱々しく、けれどどこか安心したようでもあった。

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