勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 間章

第74話 馬車に乗って

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 ディーンたちの姿が見えなくなるまで見送ったあと、俺はそっと隣のアリーに目を向けた。

「……それじゃあ、俺たちもそろそろ馬車に乗ろうか。次はシーガル領に向かう感じになると思うけど……」

「うん。でもその前に、馬車引きさんに出発時間と、次の行き先を聞いておこうよ」

「確かに……。今着いたばかりなら、少し時間あるかもしれないし……、もし何か食べ物を買えれば助かるな……。それに、先の乗り換え情報とかも知っておきたいし」

 俺たちは軽くうなずき合って、近くで待機していた馬車引きのもとへ向かった。

「すみません……」

「うわっ!」

 馬車引きが驚いて、尻もちをついてしまった。

「あっ、ごめんなさい! 驚かせるつもりはなかったんです!」

 俺とアリーが慌てて頭を下げると、馬車引きは顔をしかめつつも、苦笑いを浮かべながら立ち上がった。

「いやいや、大丈夫。けど、後ろからいきなり話しかけるのは勘弁な。心臓に悪い」

 俺は曖昧な笑み浮かべながら、もう一度頭を下げた。

「すみません……。えっと……この馬車って、いつ出発しますか?」

「あと数分だよ。乗るなら、もう乗る準備してくれ」

「そうですか……。じゃあ、何か食べ物を買う時間はなさそうだな」
 俺は独り言を呟いたつもりだったが……

「まぁ、仕方ないよ」
 アリーに聞かれてたみたいだった。
 アリーと顔を見合わせ、何も買わないでそのまま馬車へと乗り込んだ。

 やがて馬車が動き出し、車輪が砂利を踏む音が一定のリズムを刻み始めた頃……
 森の奥から、ざわ……と木々が揺れるような音が聞こえてきた気がした。

 俺は不安になって、思い切って馬車引きに尋ねた。

「馬車引きさん……。今、森の中から何か音がしませんでしたか?」

「そんなの、しょっちゅうさ。風が枝を揺らしたか、動物が走ったか……この辺りじゃ日常茶飯事だよ。いちいち気にしてたら旅なんてできやしないさ」

 前を見つめたまま、落ち着いた声でそう返された。

「そういうものなんですね……」

 俺が納得しかけたとき、隣からアリーが静かに口を挟んできた。

「でも、ラン……馬車引きさんの言うことは、だいたい正しいけど……時々、例外もあるよ。何か『本当に危ない』と感じたら、逃げるのも選択肢だから」

 それを聞いた馬車引きも、前を見ながら笑った。

「嬢ちゃんの言う通りだ。勝てそうにない相手には、すぐ逃げる。それを覚えておけば、大抵の旅はなんとかなるよ」

「……わかりました。ありがとうございます」

 俺は思わず、少し笑ってしまった。

 その表情に気づいたのか、馬車引きも鼻で小さく笑い、また前方へと意識を戻した。

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