勘当された少年と不思議な少女

レイシール

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 間章

第84話 成功

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「それじゃあ……まずは、風を出すことから始めようか」

「う、うん……わかった」

 俺は深く息を吸い、緊張しながらも集中して手を構えた。
 風の気配を感じようと、意識を研ぎ澄ませる。

 それから……1時間。

「あっ! ほんの少しだけど……風が吹いたよ!」

 アリーの声に、思わず顔を上げた。

「えっ!? 本当!?」

「うん。ほんの微かだけど……ちゃんと風になってるよ」

 胸の奥がじんわりと温かくなっていく。
 小さな一歩でも、自分の力で生み出せたことが、嬉しかった。

(まだ全然だけど……このまま、ちゃんと風を出せるようになるまで頑張ろう)

 そう決意していると、アリーがふと提案してきた。

「ラン……そろそろ、風の符術を作ってみようか」

「えっ!?まだまだだと思うけど……」

 不安げに言うと、アリーはにっこり笑って首を横に振った。

「ううん。少しでも風が出せるなら、それだけで十分なの」

 俺は首をかしげながら聞いてみる。

「なんで?このくらいじゃ、使いものにならないと思うけど……」

「むしろ、最初から強い風を符術に使っちゃうと、どのくらいの威力になるか分からないでしょ? 危ないんだよ」

「へえ……そうなんだ……」

「だから、日常で使うなら『弱い風』のほうがいいの。……魔物と戦うなら話は別だけどね」

「あー、なるほど……たしかに、そうかも」

 俺は感心してうなずいた。

「ねぇ……アリー。このくらいの微風って、符術に書いたらどれくらいの強さになるの?」

「うーん……今の風でも、符術にすれば落ち葉が飛んでいくくらいにはなると思うよ」

「えっ!?この微風が、そんなに強くなるの!?」

「うん。符術ってね、紙に書いて発動させると、少しだけ効果が強まるんだよ。ランも、水の符術のときに体験したでしょ?」

 そう言われて、思い出した。
 たしかに、水の符術を作ったときは、練習もなしで紙に書いただけだったのに、ちゃんと水が出たんだった。

(そうか……練習して微風が出せた今なら、もう十分なんだ)

「……わかった。確かに、そうだね。じゃあ、この強さで書いてみるよ」

 俺は紙を取り出し、筆を握って、心の中で風の流れを思い描く。
 静かに、符術の文字を紙に描いていく……。

 そして、そっと起動させると……

「うわっ」

 紙から放たれた風が、ひらりと落ち葉を舞い上げた。

「やった……ちゃんと、風になった……!」

 ほんのわずかな風。
 だけど、俺にとっては確かな『成功』だった。


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