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蜜月
歯形の理由
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「ごめん。後ろの席の奴が、寝ぼけて噛みついてくる時があるんだ。気持ち悪いから洗ってるけど、歯形まで残ってるとは思わなかった」
「……なんでお前が謝るんだ?」
完全に怒っている気配。体を離して向き合うと、余裕のない顔に出くわした。
「セイシュンの後ろの席って春日野だろ……なんで、ずっと同じ席なんだ?」
「席替え面倒なんだって。オレも何度か担任に席替え希望してみたけど却下された」
ムスッと分かりやすい顔を見せる先輩が、何故か無性に可愛くて、体なのか心なのか、落ち着きなくムズムズし始める。
「スバルには噛みつかせないようにする。これからは首筋にワサビでも塗って授業受ける。だから、機嫌直せよ」
オレより少し高い所にある頭を撫でてやる。いつもは撫でられる側だが、撫でる側にまわっても、くすぐったいような気持ちは同じだった。自然と頬や口元が緩んでしまう。
先輩も同じような状態なのか、それに気付いて恥ずかしくなったのか、再びオレを抱きしめ、首筋に顔を埋めるようにしてガブリと噛みついた。
「ちょっ、ストップストップ。見える所に噛みつくのはなしだ」
胸を押し返して先輩を引き剥がす。先輩のしたい事を好きなようにさせてやりたい気持ちもあるが、ここは圏ガク共同生活が基本なのだ。夏休みの山センのような悲惨な姿になる訳にはいかない。
「歯形がついても大丈夫な所を噛んでくれ。例えば……二の腕とか、ほらこの内側の方な」
上着を脱いで丁寧にレクチャーする。ここなら風呂に入っても周りに気付かれる事はないはずだ。
「あ、あと太ももでもいいよ。ここも内側な」
股を開いて見せていると、何故か先輩は俯いてしまった。人目を気にしすぎて先輩の欲求を蔑ろにしてしまったかと不安になったが、譲れない一線は確かにあるので説得するしかあるまい。
「…………っふ、ふふ」
空気が抜けるような音が、先輩の口から漏れる。どうかしたのかと尋ねる前に、先輩は盛大に笑い出した。何か面白い事でも言ったか? 不思議に思い首を傾げていると、先輩が目尻を拭いながらオレを見た。
「俺、やっぱりセイシュンが好きだ。お前のそうゆう真っ白なところ、守ってやりたい」
真っ白? もしかして馬鹿にされてる? ぎゅっと抱きしめられながら、納得出来ないでいると、耳元で「お前のこと、噛んだりしない……させない」と呟かれた。二の腕と太ももの風呂場でも隠せる所なら噛んでも大丈夫と、改めて申し出ようとしたが、ヒョイと膝の上から下ろされてしまった。
「うん、もう大丈夫だ。見回りの時間が過ぎたら部屋まで送ってく」
「え!? か、帰らないからな! 帰るとしても、先輩の性欲を……しょり……してから」
「だから大丈夫だ。もう落ち着いた。週末の補習を避ける為にも勉強してから寝る。だから、今日は帰れ」
先輩の理性とやらが、またも復活していた。反論の余地すら与えてもらえず、オレは担がれ旧館に送り返されてしまった。
部屋に戻り布団に潜り込んだ後、先輩が噛んでも問題ない場所を探し、やるせなさを誤魔化す。
「……足の裏も大丈夫か……って、大丈夫な訳ねぇ」
その夜は言うまでもなく、一人で悶えながら眠りについた。オレは先輩ほど意固地な理性を持ち合わせてはいないのだ。
「……なんでお前が謝るんだ?」
完全に怒っている気配。体を離して向き合うと、余裕のない顔に出くわした。
「セイシュンの後ろの席って春日野だろ……なんで、ずっと同じ席なんだ?」
「席替え面倒なんだって。オレも何度か担任に席替え希望してみたけど却下された」
ムスッと分かりやすい顔を見せる先輩が、何故か無性に可愛くて、体なのか心なのか、落ち着きなくムズムズし始める。
「スバルには噛みつかせないようにする。これからは首筋にワサビでも塗って授業受ける。だから、機嫌直せよ」
オレより少し高い所にある頭を撫でてやる。いつもは撫でられる側だが、撫でる側にまわっても、くすぐったいような気持ちは同じだった。自然と頬や口元が緩んでしまう。
先輩も同じような状態なのか、それに気付いて恥ずかしくなったのか、再びオレを抱きしめ、首筋に顔を埋めるようにしてガブリと噛みついた。
「ちょっ、ストップストップ。見える所に噛みつくのはなしだ」
胸を押し返して先輩を引き剥がす。先輩のしたい事を好きなようにさせてやりたい気持ちもあるが、ここは圏ガク共同生活が基本なのだ。夏休みの山センのような悲惨な姿になる訳にはいかない。
「歯形がついても大丈夫な所を噛んでくれ。例えば……二の腕とか、ほらこの内側の方な」
上着を脱いで丁寧にレクチャーする。ここなら風呂に入っても周りに気付かれる事はないはずだ。
「あ、あと太ももでもいいよ。ここも内側な」
股を開いて見せていると、何故か先輩は俯いてしまった。人目を気にしすぎて先輩の欲求を蔑ろにしてしまったかと不安になったが、譲れない一線は確かにあるので説得するしかあるまい。
「…………っふ、ふふ」
空気が抜けるような音が、先輩の口から漏れる。どうかしたのかと尋ねる前に、先輩は盛大に笑い出した。何か面白い事でも言ったか? 不思議に思い首を傾げていると、先輩が目尻を拭いながらオレを見た。
「俺、やっぱりセイシュンが好きだ。お前のそうゆう真っ白なところ、守ってやりたい」
真っ白? もしかして馬鹿にされてる? ぎゅっと抱きしめられながら、納得出来ないでいると、耳元で「お前のこと、噛んだりしない……させない」と呟かれた。二の腕と太ももの風呂場でも隠せる所なら噛んでも大丈夫と、改めて申し出ようとしたが、ヒョイと膝の上から下ろされてしまった。
「うん、もう大丈夫だ。見回りの時間が過ぎたら部屋まで送ってく」
「え!? か、帰らないからな! 帰るとしても、先輩の性欲を……しょり……してから」
「だから大丈夫だ。もう落ち着いた。週末の補習を避ける為にも勉強してから寝る。だから、今日は帰れ」
先輩の理性とやらが、またも復活していた。反論の余地すら与えてもらえず、オレは担がれ旧館に送り返されてしまった。
部屋に戻り布団に潜り込んだ後、先輩が噛んでも問題ない場所を探し、やるせなさを誤魔化す。
「……足の裏も大丈夫か……って、大丈夫な訳ねぇ」
その夜は言うまでもなく、一人で悶えながら眠りについた。オレは先輩ほど意固地な理性を持ち合わせてはいないのだ。
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