圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

小さなゆめ三つ

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「今の人が君の言う『先生』なんだね?」

 先輩に弄ばれている中、慌てた様子で店長が尋ねてきた。そうだと答えると、小吉さんに肘をブチ込んでくれた店員を連れて、担任たちの後を追いかけていった。

「お前ら、何をやってたんだ?」

 先輩の疑問に一から答えてやると、放置されていたカートの中を覗いて、何故か溜め息を吐きやがった。

「他に買う物いっぱいあっただろう。なんで酒からいっちまったんだ」

「オレらに関係ない物だったから。オレらの物を買うのは先輩が戻ってからにしたかったんだよ。何食いたいか一緒に相談しながら買いたいじゃん」

 自分たちの食いたい物を買っていいなんて、滅多にない。予算はあるだろうが、真剣に考えたいって思うのは普通だと思うのだが、先輩には笑われてしまった。

「金の事は考えなくていい。セイシュンが欲しいって思う物、全部買って帰ろう」

 全力でオレを甘やかす気だ。だが、そうはさせない。せっかく今日の食い扶持は担任……が出すのは変だよな、じゃあと学校が出してくれるのか? いまいち金の出所が分からないが、とにかく先輩が自腹を切る必要はないのだ。

「全部買ったら車一台じゃあ足らないだろ。先輩を破産させる気はないからな。担任に予算聞いて、食いたい物を厳選しようぜ」

 オレの提案に残念そうな顔を見せる先輩を「ルールがある方がゲームみたいで楽しいじゃん」と説得していると、色々と片付けてきたらしい担任が戻って来た。しかし、拉致られた小吉さんの姿はなかった。

「先生、小吉さんは?」

 軽く鼻を打った程度だと思ったのだが、具合が悪くなったのかと心配になり、担任に詰め寄ると「大丈夫だ」と疲れた顔で答えてくれた。

「……念の為、小吉は病院に連れて行って貰った。買い出しの帰りに響総合病院に寄るぞ」

 本格的に拉致られたらしい。小吉さんは担任を呼び寄せる為の餌に違いない。まあ、念の為に診てもらうのは有りだと思うが。

「店の人の誤解は解けましたか?」

 小吉さんの安否確認の後、何故か先輩が申し訳なさそうに尋ねた。

「問題ない。お前ら、とっとと買い出し済ませるぞ」

 担任の疲れの原因は、店とのやり取りではなく、響先生の娘さんとのアレコレのようで、そちらはサクッと解決したようだった。

 それから、オレらは文字通り車に食料を山のように積み込み、スーパーを後にした。

 担任の食べたい物を選べという言葉は本気だったらしく、オレらが両手に菓子を持ってどちらにしようか真剣に迷っていると「下らん事で悩むな」と両方カゴに放り込んだ。そのせいで、帰りの車内は荷物でいっぱいになり、小吉さんが乗り込めるスペースはなかった。最悪、オレの膝の上に乗せるか、オレが先輩の膝に乗るしかなさそうだった。

「響さん所に行く前に昼飯調達するぞ」

 担任はそう言うと、スーパーを出て少し走った先にあったコンビニに入り車を駐車した。適当に買って来るから、車内で待っているように言われたが、オレは一つ思いつき、コンビニで買い物をしてもいいか質問した。

「……好きにしろ」

 スーパーで同じやり取りをした時は、反射的に怒鳴られたが、今度はあっさりと承諾を得る事が出来た。先輩が一緒に車から出ようとしたが、すぐ戻るからとそれを押し止める。これだけ荷物をねじ込んだ車を放置するのも不用心だ、ロックのかかっていない場所(鍵の壊れている扉)もある。少し残念そうな顔を見せたが、納得してくれた先輩を置いて、担任に続いて久々のコンビニへと足を踏み入れた。

 去年は毎日のように出入りしていた場所だったが、こんなにソワソワした気持ちになったのは初めてだ。

 適当に選ぶと言っていたのに、担任は食いたい物はあるかと聞いてくれた。特に希望もなかったので、なんでもいいと答える。すると、から揚げと白飯みたいなシンプルで肉の割合が多い弁当と温かいお茶を四人分、カゴに放り込んだ。それにプラスして、ちょっと興味をそそる酒の肴をいくつか見繕い、レジへと向かう。

 オレも担任の後ろに並び、ポケットから五百円玉を取り出した。一人で食べようという気にならず、今まで気になってはいたが食べた事がなかった物の値段を担任越しにチェックする。よし、金は足りる。

「肉まん下さい。三つ」

 色々な種類があって、ちょっと迷ったがシンプルなやつを注文した。まあ、意外と値が張って、凝ったやつは予算オーバーだったのだが、ほかほかと湯気を上げる肉まんは十分に美味しそうだった。

 車に戻ると先輩が荷物を整理してくれたようで、人が乗れるスペースが若干増えていた。

「欲しい物は買えたか?」

 二人ならゆったり座れる。迎えてくれた先輩の隣に早速座ると、先輩がオレが持ち帰った小さな袋に視線をやりながら聞いてきた。

「うん、小吉さん返してもらったら三人で一緒に食べよう」

 たかが肉まんだが、ちょっと誇らしい気持ちになってしまうのは、我ながら恥ずかしかった。

 冷めてしまわないよう、外気に触れないようコートの中で袋を保温しながら、小吉さんを迎えに行く。
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