圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
371 / 411
蜜月

山センのおもてなし

しおりを挟む
「矢野君は見たかったりする?」

 小吉さんは見せられていた訳だが、山センのハーレムに耐性のある矢野君は、もしかしたら楽しんでいたのかもしれないと親切に聞けば「んな訳あるか」と拳を振り上げられた。

「視界に入れて良いモノと悪いモノがあんだよ。混ぜたら、ただのゲテモノだろが」

 相変わらず酷い言いようだが、そのゲテモノ相手でも目を瞑ればセックス出来るってのは生物として尊敬するべきなんだろうか。

「お前、まさかとは思うが、今まで寝てたのか? 俺らが正月早々耐えがたい苦痛を味わっている時に」

 ゲテモノの裸踊りを一晩中見ていたらしい矢野君は、本気で怒っているような雰囲気で、しっかり睨み付けてきた。

「いつもよりかは遅いけど、ちゃんと午前中に起きたよ。先生たちに挨拶しに行ったら、女神におせち詰めるの手伝えって言われて、こっち寄るの遅くなったんだ」

 持って来た土産を矢野君に手渡そうとしたら、横から物凄い勢いで引ったくられた。食事も与えられてなかったのかと、小吉さんの猛獣っぷりに驚いたが、引ったくりは小吉さんではなく逆の方向に出現していた。

「た、橘さんが、俺の為に……!」

 後輩の挨拶には無反応を貫き通した奴が目の色を変えて、土産の入った袋に頬擦りしていた。

「残念だけど女神は関係ねぇから。教師用に村主さんからおせち貰っただろ。それの残りをオレと先輩が詰めたやつだよ」

 丁寧に誤解を解いてやったと言うのに、今度は敵意剥き出しで詰め寄って来る稲っち。

「テメェ、一年の分際で馴れ馴れしく女神に近づいていいと思ってんのか?」

 近づきたくて近づいてねーし! お前と一緒にすんな文芸部!

「てか、馴れ馴れしくしたいなら、旧館の食堂へ行って来いよ。多分、女神一人じゃあ片付けとか無理そうだし、手伝いに行ってやれば?」

 放って置いてもいいのだが、風呂入りに行った時、片付け要員として当てにされても面倒なので、先手を打って労働力を派遣しておく。皿洗いは圏ガクの生徒ならば誰でも習得しているスキルの一つだ。それを存分に発揮してもらおう。

「なんでそれを先に言わねぇんだ!」

 オレのテキトーな言葉に稲っちは面白いくらい予想通りの反応をした。それは一大事だと、嬉嬉として冷蔵庫を飛び出そうとする。

「おせちは向こうにもあるから、弁当持参しなくても大丈夫だよ」

 土産を持ち去られないよう声をかけると、ボールのようにポイと投げて寄越しやがった。

「それもおせちなのか?」

 土産をビニールから取り出すと、小吉さんが不思議な事を言う。ここにもおせちがあるのかと聞けば、小吉さんは元気よく「うん」と頷いた。

「これだけ『正月』やってて、食い物なかったら詐欺だろ」

 矢野君が部屋を見回しながら苦笑する。オレも矢野君に倣い、改めて冷蔵庫の中を見渡す。

 壁や窓に紅白の幕が張られ、小さいながらも門松や鏡餅が飾られている。凧や駒、それに羽子板って言うのかな、ちょっと遊べそうな物も色々あった。それから、見るからに正月という訳ではないが、普段見かけない物もいくつか発見する。

 どこかで見た事のある電子レンジに山積みの段ボール。段ボールの中身を確認しようと近づくと、小吉さんが慌ててオレの前へと立ちはだかった。

「おせちは冷蔵庫の中だぞ。こ、こここ、これはお前ら一年が触ったら駄目な奴なんだ」

 触るなと言われると、とりあえず触ってみたくなる。オレの興味が段ボールにしっかり向いた時、タイミングが良いのか悪いのか、山センと先輩のテレビ戦争が終結した。

「こんなしょぼいモン持って来るなんて、いい度胸だな、夷川!」

 オレが持って来た土産を覗き込み、ハッと鼻で笑いながら、どうやって着たのか謎だが、正月らしく着物に袴姿の山センが絡んできた。

「正月から残飯食うなんてお前らが可哀想すぎるから、約束通りオレが美味いもん食わせてやるよ!」

 残飯と言われても仕方のない土産なので、全く以て反論出来ないのだが、やはり面白くはない。なので気持ちだけでも仕方なく、山センの言う『美味いもん』とやらをご馳走されてやろう。

 冷蔵庫(本物の)へ走る小吉さんに付いて行く。冷蔵庫の前で待っていてくれたので、一緒に扉を開けると

「うわ……すげぇ」「うん」

 何故か無駄にデカイ冷蔵庫なのだが、その中に食い物がぎっしり詰め込まれていた。

 食堂で見た物より派手で、三段どころか五段もある重箱が四つ。何が入っているのか分からない箱が更に四つ。大きめのタッパーには色とりどりの果物が詰められ、その横には寿と熨斗のされた鯛が寝そべっている。

「どうだ、すごいだろ。しょぼい金の事なんざ吹っ飛ぶくらいの贅沢、思う存分味わわせてやるんだから、ありがたーく思え」

 山センの物言いが気にならないくらい、オレらは目の前の物に集中していた。重箱を一つ引っぱり出し蓋を開けると「おぉぉ」と自然に声が出てしまう。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

春を拒む【完結】

璃々丸
BL
 日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。 「ケイト君を解放してあげてください!」  大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。  ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。  環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』  そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。  オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。 不定期更新になります。   

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

貢がせて、ハニー!

わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。 隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。 社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。 ※この物語はフィクションです。 ※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8) ■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。 ■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。 ■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました! ■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。 ■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

狂わせたのは君なのに

一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。 完結保証 番外編あり

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

処理中です...