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家畜も色々
貞操の危機
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先輩に服を借りたまま、あの日以来、また顔すら見られない日が続いていた。服を返すという口実があるのだから、堂々と部屋を訪ねればいいと思っていたのだが、先輩の使っている部屋がある階は三年のテリトリーで、オレら一年は近くを通るだけでも露骨に威嚇されてしまう。
何度か試みたのだが、悉く失敗。途中というか、その下の階にある図書室へ用がある振りをして、見張りのように最上階へと続く階段の踊り場で駄弁っている二年をやり過ごした。先輩が読書家である可能性に賭けて、放課後を図書室で過ごしてみたのだが、一週間以上続けてもまるで釣れず早々に諦めた。
返して欲しくないなら貰うからな! とか自分勝手に心の中で悪態を吐きながら、先輩の服を枕の下に敷いて寝ているのだが、毎日爆睡で夢すら見ない自分にも嫌気が差してくる。自給自足すらままならない……いや、これは我ながらキモイな。
でも、そんな気色の悪い行為を素でやってのけるくらいオレの中で、先輩という栄養素が不足しているのだった。寮生活のオレらには割と無関係な、ゴールデンウィークという名の連休に突入する頃には既に、オレは自覚せざるを得ない先輩依存に陥っていた。
まだ引き返せる、ホモ的な一線はまだ越えていないと、自分に言い聞かせながら葛藤する日々の中、その他の事については穏やかに過ごせているかと言えば、もちろん否だ。
その原因は常に背後にあった。
「なぁなぁー、えべっさーん」
ぐんにゃりと間延びした声をかけてくるスバルを無視する。ここ最近、いや正確に言えば、談話室を全壊させた日から、コイツの絡み方が目に見えて酷くなっていた。
いきなり背中に飛び乗ってくるだけでは飽き足らず、首筋に齧り付いたり、やたら体を触ってきたり、普通ではない過剰なスキンシップが日常になりつつあるのだ。される身であるオレとしては堪ったモノではない。
「ケツかしてぇーって、痛ぇっ!」
その上コレだ。隣でオレの課題プリントを丸写ししている皆元が、即座にスバルの頭を叩いたが、正直勘弁して欲しい。
オレは断じてホモじゃない。仮にその一線を越える時が来ようと、その相手はコイツではないのだ。先輩の事で圏ガクの呪いと格闘中のオレに、スバルは容赦なく発破をかけてくる。そのせいで、グルグルと会えない先輩への感情を更に持て余してもいるのだ。実に腹立たしい。
「もっさんにはカンケーねぇだろ!」
「目の前で不快な会話をするな。迷惑だ」
スバルが呻ったが、皆元はそれを一睨みして黙らせた。そのツッコミはありがたいと思うが、オレはスバルと会話はしていない。コイツが勝手に不快な独り言を垂れ流しているだけだ。反論したかったが、一瞬こっちを見た皆元の目が「分かっている」と言いたげだったので、邪魔にならないよう黙った。
「お前は課題やらなくていいのか?」
後ろの椅子と机をガタガタいわせてブーブー文句を言うスバルに、一応、隣というか席が前後のよしみで聞いてやる。
入試と呼べるのか怪しかった試験の内容や、実際に見た学校の雰囲気から、まともに授業なんてなさそうに思えた圏ガクは、意外や意外、かなり厳しい授業が行われている。
あっても、ゆるーい生徒の駄弁りが絶えない、休憩時間と授業の境目が限りなくグレーな、そんなイメージだったのに、蓋を開けてみれば教師は揃いも揃って熱血教師というか、流血上等教師で少しでもふざけた授業態度を見せれば即座に鉄拳制裁が遂行される。
授業の内容こそ、始まったばかりの今は簡単な内容ばかりだが(おそらく生徒の基礎学力的なモノがバラバラなので、下の方に合わせているのだと思う)このまま進めていけば圏ガクに居ながらも進学出来そうな感じだ。
もちろん課題を忘れようものなら、平手が飛んでくる。初日の光景は忘れられない。入学式前に出された課題をやらなかった生徒に、出席を取るみたいに連続でビンタをかましていく教師は、仕舞いには手が痛いとキレて、後半の生徒には蹴りを入れ出した。
暇つぶし程度に課題をやっていたオレは免れたが、自室に戻ってまで勉強をする気はないと言っていた皆元は、ありがたくその蹴りを受けていた。奇しくも初日に久戸から受けた蹴りと同じ場所に。相当堪えたらしく、それ以来こうやってオレがやったプリントを丸写しにしている。まあ、今は誤魔化せても、その内にバレるとは思うんだけどな。
「んー昨日やった。てか、やらされたぁー」
面白くなさそうな声でスバルはそう答える。どうやら散々殴られても全く課題をやろうとしない生徒を対象とした補習が、放課後に行われているらしい。普通だったら考えられない体罰が横行している学校だが、普通なら放置されるような生徒にまで徹底して指導する圏ガクは、良くも悪くも想像していた場所とは違っていた。
高校生活が始まって一ヶ月。予鈴が鳴ると、自然と誰もが自分の席に戻っていく。
必要以上に老けて見えた同級生への違和感がなくなり、教師や上級生からの暴力にも慣れ、家畜としての仕事も一通りこなした。ムカツク事はそりゃあ山の如くあるが、それでもどうしてか、圏ガクでの毎日をオレは悪くないと思っていた。
「えべっさん、きょうあーそぼーぜぃ」
皆元が自分の席に戻り、ガンガンとオレの椅子を蹴り上げながら、スバルがまた下らない絡み方をして来る。付き合いきれず、たまたま次の授業が担任の科目だったので、教師が顔を見せるなり席替えを提案してみたのだが、面倒臭いと即座に却下されてしまった。すると、ウヒヒと奇妙な笑い声が背後から聞こえてきた。
悪魔にでも取り憑かれた気分だ。心底迷惑そうな顔をしながら少し振り返ると、スバルが満面の笑みを浮かべ見事なウインクをして見せた。どうしてこうなったのか……考えても分からず、まあスバルの思考を凡人のオレが読み取れるはずもなく、とりあえず、ため息を吐く事で自分を誤魔化した。溢れかえる不安から目を逸らす為に。
けれど、そうやって目を逸らすのは間違いだった。臭い物に蓋をして一時目を逸らしても、知らぬ間に消えてくれるなんて事はない。早めに片付けておかないと、次に気付いた時、とんでもない悪臭を放つのは当然なのだから。
スバルの蓋が開いたのは、その日の夜だった。
消灯時間が過ぎ、それまであった隣の部屋や廊下のざわめきが静かに消え、横になって三秒で眠る皆元の鼾を聞きながら、暗さに眠気を誘われ出した頃。
廊下をパッタパッタとスキップするような足音が耳に入り、オレは手放しそうになった意識をたぐり寄せた。暫く息をするのも忘れて、必死で耳をすますが、空耳だったのか何も聞こえない。オレは由々式の枕元を軽く叩いて、何か聞こえなかったかと聞いてみた。
「誰かが小便漏らしそうになって、慌てて便所に駆け込んだんじゃろ」
眠たそうな声でそう答えた由々式は、大きな欠伸をして寝返りを打った。その答えに一瞬だけ抱いた不安は拭われ、オレの眠気はたぐり寄せた意識を波がさらうようにゆっくり溶かしていく。
そうして心地よい眠りに落ちたのも束の間だろう、いや束の間だったと思いたい、瞼を閉じて途絶えた意識が戻って来た時、オレはありえない状況に陥っていた。
体の上に乗る重さで息苦しく、頭上で両腕が縛られ、まるで畳に打ち付けられたように動かない。
胸元まで捲り上げられたシャツ越しに、人の体を断りもなしに舌や指で撫で回す影を睨み付けた。
「何やってんだ、スバル」
顔が見えずとも、音でその正体を知る。初日に聞いた装飾品の擦れる音、それがオレの寝込みを襲った影から聞こえてきた。心臓の上を直接触られているので、オレの動揺は丸わかりだろうが、精一杯の虚勢を張るように低い声をぶつける。
すると、ベッタリと肌を這い回っていた不快な感触が離れ、からかうような癇に障る笑い声が答えた。
「約束どーり、あそびにきたよん」
その声は普段のそれとは違っていた。ふざけた物言いは変わらないが、その声には興奮が色濃く混ざっている。人を玩具のように殴り壊す、そんな危険なスイッチが入ってしまった時の様子そのものに、オレの頭では警鐘がガンガン鳴り出し、パニックになる寸前だった。
「そうか……遊びに来た、のか。でもな、もう遅いから明日にしないか?」
怒鳴り散らして少しでも自分の中に渦巻く感情を発散させたいと思ったが、それを必死で押さえ冷静に返してみた。けれどスバルの返事は「ヤダ」と実に短い一言だけだった。
人の乳首を弄り回すスバルは上機嫌で、反吐が出そうだったが、不快感を飲み込み暗闇に慣れてきた目で周囲を見回す。隣では皆元が相変わらず鼾をかいて眠っているのだが、他の二人が見当たらない。二人が寝ていた布団は、踏み荒らされたようにグシャグシャだ。
「なあスバル、そこで寝てた奴、どこに行ったか知らないか?」
恐る恐る問いかけると、突然ギュッと強く捻られ乳首に痛みが走った。機嫌の良さが一瞬で曇り、不機嫌そうな声が降ってくる。
「あー、アレなら邪魔だから片付けた。せっかくあそびにきたのに帰れとか言うからさぁ」
「由々式と狭間を殴ったのか、お前」
「んーしらね。あんま見えなかったし。とりあえず、あそこに放り込んだ」
スバルは押し入れを顎で指した。
「怪我させてるかもしれない。スバル、後でちゃんと遊んでやるから、ちょっとだけ確認させてくれ」
「はぁ? なに言ってんの、えべっさん」
オレを見下ろすスバルの視線が、険悪なモノになるのが分かった。自分を押し潰そうとする威圧感に、もう話しても通じる相手ではないと判断し、腕の拘束をなんとかしようと抵抗してみる。
縄だろうか、紐よりも明らかに太い何かで縛られた腕を色々な角度で動かしていると、突然手のひらが熱く感じ遅れて痛みが広がった。カッターナイフで切ってしまったような痛みに顔を顰めていると、スバルは下らなそうにため息を吐き、オレの手元へ指を伸ばす。切れた傷口に指を押しつけられ、思わず呻いてしまう。
「オレっちのコレクションで固定してあるから、あんま動くとケガしちゃうよん」
オレの血で汚れた指先を当然のように口へと運ぶスバルは、獲物を前にした肉食獣のような獰猛な顔をしていた。
何度か試みたのだが、悉く失敗。途中というか、その下の階にある図書室へ用がある振りをして、見張りのように最上階へと続く階段の踊り場で駄弁っている二年をやり過ごした。先輩が読書家である可能性に賭けて、放課後を図書室で過ごしてみたのだが、一週間以上続けてもまるで釣れず早々に諦めた。
返して欲しくないなら貰うからな! とか自分勝手に心の中で悪態を吐きながら、先輩の服を枕の下に敷いて寝ているのだが、毎日爆睡で夢すら見ない自分にも嫌気が差してくる。自給自足すらままならない……いや、これは我ながらキモイな。
でも、そんな気色の悪い行為を素でやってのけるくらいオレの中で、先輩という栄養素が不足しているのだった。寮生活のオレらには割と無関係な、ゴールデンウィークという名の連休に突入する頃には既に、オレは自覚せざるを得ない先輩依存に陥っていた。
まだ引き返せる、ホモ的な一線はまだ越えていないと、自分に言い聞かせながら葛藤する日々の中、その他の事については穏やかに過ごせているかと言えば、もちろん否だ。
その原因は常に背後にあった。
「なぁなぁー、えべっさーん」
ぐんにゃりと間延びした声をかけてくるスバルを無視する。ここ最近、いや正確に言えば、談話室を全壊させた日から、コイツの絡み方が目に見えて酷くなっていた。
いきなり背中に飛び乗ってくるだけでは飽き足らず、首筋に齧り付いたり、やたら体を触ってきたり、普通ではない過剰なスキンシップが日常になりつつあるのだ。される身であるオレとしては堪ったモノではない。
「ケツかしてぇーって、痛ぇっ!」
その上コレだ。隣でオレの課題プリントを丸写ししている皆元が、即座にスバルの頭を叩いたが、正直勘弁して欲しい。
オレは断じてホモじゃない。仮にその一線を越える時が来ようと、その相手はコイツではないのだ。先輩の事で圏ガクの呪いと格闘中のオレに、スバルは容赦なく発破をかけてくる。そのせいで、グルグルと会えない先輩への感情を更に持て余してもいるのだ。実に腹立たしい。
「もっさんにはカンケーねぇだろ!」
「目の前で不快な会話をするな。迷惑だ」
スバルが呻ったが、皆元はそれを一睨みして黙らせた。そのツッコミはありがたいと思うが、オレはスバルと会話はしていない。コイツが勝手に不快な独り言を垂れ流しているだけだ。反論したかったが、一瞬こっちを見た皆元の目が「分かっている」と言いたげだったので、邪魔にならないよう黙った。
「お前は課題やらなくていいのか?」
後ろの椅子と机をガタガタいわせてブーブー文句を言うスバルに、一応、隣というか席が前後のよしみで聞いてやる。
入試と呼べるのか怪しかった試験の内容や、実際に見た学校の雰囲気から、まともに授業なんてなさそうに思えた圏ガクは、意外や意外、かなり厳しい授業が行われている。
あっても、ゆるーい生徒の駄弁りが絶えない、休憩時間と授業の境目が限りなくグレーな、そんなイメージだったのに、蓋を開けてみれば教師は揃いも揃って熱血教師というか、流血上等教師で少しでもふざけた授業態度を見せれば即座に鉄拳制裁が遂行される。
授業の内容こそ、始まったばかりの今は簡単な内容ばかりだが(おそらく生徒の基礎学力的なモノがバラバラなので、下の方に合わせているのだと思う)このまま進めていけば圏ガクに居ながらも進学出来そうな感じだ。
もちろん課題を忘れようものなら、平手が飛んでくる。初日の光景は忘れられない。入学式前に出された課題をやらなかった生徒に、出席を取るみたいに連続でビンタをかましていく教師は、仕舞いには手が痛いとキレて、後半の生徒には蹴りを入れ出した。
暇つぶし程度に課題をやっていたオレは免れたが、自室に戻ってまで勉強をする気はないと言っていた皆元は、ありがたくその蹴りを受けていた。奇しくも初日に久戸から受けた蹴りと同じ場所に。相当堪えたらしく、それ以来こうやってオレがやったプリントを丸写しにしている。まあ、今は誤魔化せても、その内にバレるとは思うんだけどな。
「んー昨日やった。てか、やらされたぁー」
面白くなさそうな声でスバルはそう答える。どうやら散々殴られても全く課題をやろうとしない生徒を対象とした補習が、放課後に行われているらしい。普通だったら考えられない体罰が横行している学校だが、普通なら放置されるような生徒にまで徹底して指導する圏ガクは、良くも悪くも想像していた場所とは違っていた。
高校生活が始まって一ヶ月。予鈴が鳴ると、自然と誰もが自分の席に戻っていく。
必要以上に老けて見えた同級生への違和感がなくなり、教師や上級生からの暴力にも慣れ、家畜としての仕事も一通りこなした。ムカツク事はそりゃあ山の如くあるが、それでもどうしてか、圏ガクでの毎日をオレは悪くないと思っていた。
「えべっさん、きょうあーそぼーぜぃ」
皆元が自分の席に戻り、ガンガンとオレの椅子を蹴り上げながら、スバルがまた下らない絡み方をして来る。付き合いきれず、たまたま次の授業が担任の科目だったので、教師が顔を見せるなり席替えを提案してみたのだが、面倒臭いと即座に却下されてしまった。すると、ウヒヒと奇妙な笑い声が背後から聞こえてきた。
悪魔にでも取り憑かれた気分だ。心底迷惑そうな顔をしながら少し振り返ると、スバルが満面の笑みを浮かべ見事なウインクをして見せた。どうしてこうなったのか……考えても分からず、まあスバルの思考を凡人のオレが読み取れるはずもなく、とりあえず、ため息を吐く事で自分を誤魔化した。溢れかえる不安から目を逸らす為に。
けれど、そうやって目を逸らすのは間違いだった。臭い物に蓋をして一時目を逸らしても、知らぬ間に消えてくれるなんて事はない。早めに片付けておかないと、次に気付いた時、とんでもない悪臭を放つのは当然なのだから。
スバルの蓋が開いたのは、その日の夜だった。
消灯時間が過ぎ、それまであった隣の部屋や廊下のざわめきが静かに消え、横になって三秒で眠る皆元の鼾を聞きながら、暗さに眠気を誘われ出した頃。
廊下をパッタパッタとスキップするような足音が耳に入り、オレは手放しそうになった意識をたぐり寄せた。暫く息をするのも忘れて、必死で耳をすますが、空耳だったのか何も聞こえない。オレは由々式の枕元を軽く叩いて、何か聞こえなかったかと聞いてみた。
「誰かが小便漏らしそうになって、慌てて便所に駆け込んだんじゃろ」
眠たそうな声でそう答えた由々式は、大きな欠伸をして寝返りを打った。その答えに一瞬だけ抱いた不安は拭われ、オレの眠気はたぐり寄せた意識を波がさらうようにゆっくり溶かしていく。
そうして心地よい眠りに落ちたのも束の間だろう、いや束の間だったと思いたい、瞼を閉じて途絶えた意識が戻って来た時、オレはありえない状況に陥っていた。
体の上に乗る重さで息苦しく、頭上で両腕が縛られ、まるで畳に打ち付けられたように動かない。
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「何やってんだ、スバル」
顔が見えずとも、音でその正体を知る。初日に聞いた装飾品の擦れる音、それがオレの寝込みを襲った影から聞こえてきた。心臓の上を直接触られているので、オレの動揺は丸わかりだろうが、精一杯の虚勢を張るように低い声をぶつける。
すると、ベッタリと肌を這い回っていた不快な感触が離れ、からかうような癇に障る笑い声が答えた。
「約束どーり、あそびにきたよん」
その声は普段のそれとは違っていた。ふざけた物言いは変わらないが、その声には興奮が色濃く混ざっている。人を玩具のように殴り壊す、そんな危険なスイッチが入ってしまった時の様子そのものに、オレの頭では警鐘がガンガン鳴り出し、パニックになる寸前だった。
「そうか……遊びに来た、のか。でもな、もう遅いから明日にしないか?」
怒鳴り散らして少しでも自分の中に渦巻く感情を発散させたいと思ったが、それを必死で押さえ冷静に返してみた。けれどスバルの返事は「ヤダ」と実に短い一言だけだった。
人の乳首を弄り回すスバルは上機嫌で、反吐が出そうだったが、不快感を飲み込み暗闇に慣れてきた目で周囲を見回す。隣では皆元が相変わらず鼾をかいて眠っているのだが、他の二人が見当たらない。二人が寝ていた布団は、踏み荒らされたようにグシャグシャだ。
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恐る恐る問いかけると、突然ギュッと強く捻られ乳首に痛みが走った。機嫌の良さが一瞬で曇り、不機嫌そうな声が降ってくる。
「あー、アレなら邪魔だから片付けた。せっかくあそびにきたのに帰れとか言うからさぁ」
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スバルは押し入れを顎で指した。
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「はぁ? なに言ってんの、えべっさん」
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縄だろうか、紐よりも明らかに太い何かで縛られた腕を色々な角度で動かしていると、突然手のひらが熱く感じ遅れて痛みが広がった。カッターナイフで切ってしまったような痛みに顔を顰めていると、スバルは下らなそうにため息を吐き、オレの手元へ指を伸ばす。切れた傷口に指を押しつけられ、思わず呻いてしまう。
「オレっちのコレクションで固定してあるから、あんま動くとケガしちゃうよん」
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