394 / 411
蜜月
初体験の裏側
しおりを挟む
二人で黙々と歩いたが、先輩の部屋にたどり着く頃には、しっかりと体の芯まで冷え切っていた。ちょっと気になって廊下の先、冷蔵庫の辺りへ視線をやると、遮光カーテンに隙間があるのか、僅かに中の灯りが漏れている。普段はあまり気にした事がなかったが、今からしようとしている事を思うと少しだけ罪悪感……どちらかと言うと背徳感かな、妙な気持ちが自分の中に芽生えてしまう。
「今までも、その、オレが泊まりに来てた時、髭は冷蔵庫で勉強してたの?」
先に部屋に入り、電気ストーブを点けてくれる先輩の背中になんとなく尋ねる。「髭じゃなくて真山」と根気強く訂正した後、先輩は机をセッティングしながら肯定した。
「真山の部屋みたいなもんだしな。毎日ではないが、しょっちゅう来てるぞ」
オレとしては割と衝撃的な答えだった。ヤってる最中は周りってか、部屋の外まで意識出来る余裕なんてないんだが、もしかしたら、こう、オレが情けない声を上げている時にドア越しの廊下を髭が歩いていたかもしれないとか……ちょっとした悪夢だ。
「ん、どうしたんだ?」
一瞬オレがフリーズしていると「寒いだろ」と言いながら先輩が腕を引いて部屋へ連れ込んでくれる。ぎこちなく頷くと、先輩は困ったように笑ってオレの頭を撫でた。
「セイシュンが部屋に来てる時は、事前に伝えてあるって言ってなかったか? 俺たちが起きてる時間帯はこっち側に来るのは控えて欲しいって頼んでるから、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫だ」
髭はそれをどういうふうに理解しているのか、いや、髭には先輩との関係は知られている訳で、まあ、ヤってる事は筒抜けって事だな。腹の底がキューっと痺れるような感覚に陥る。
「初めての時、ちょっと驚かせたからな。結構ショック受けてたみたいで真山の方からセイシュンが来る時は一声かけろって言ってきたんだよ」
男同士が抜き差しやってる現場に居合わせたら、そりゃ苦情の一つや二つ言いたくもなるよな……。
「ッ! それマジかよ! 初めての時って、え? そんなん先輩一言も言わなかったじゃん!」
オレが突然大声を出したので、先輩は慌てて扉を閉めた。そして、ちょっと怒った顔で『静かにしろ』のジェスチャーをしやがった。
「初めてヤった時、外に髭が居たって事かよ!」
声量は思い切り落としながらも、勢いはそのままに先輩に詰め寄ると、先輩は「ずっとじゃないぞ」とフォローになってない言葉でオレを宥めようとする。
「さすがに最初から鑑賞されてたなんて聞いたら、今から髭の所に殴り込みに行くぞ」
恥ずかしさではなく怒りで、声量を気にしなくてもいいくらい声がどんどん低くなる。
「いくら真山に頼まれても、そんな事は絶対にさせない」
オレのテンションが移ったのか、先輩も真顔でそう答えた。それなら、どうしてそんな状況になったんだと聞けば、申し訳なさそうに先輩は言葉を濁す。
「ストップ出来る状況なら真山が通り過ぎるまで動かずにやり過ごすんだが、その、俺も余裕がなかったと言うか、な? 初めてセイシュンに挿入して、外野にまで気が回らなかったんだ…………すまん」
と言うことは、髭が通りかかった時ってのは、オレらの初体験のクライマックスだった訳だな。そうかアレを聞かれてしまったのか。正直、自分がどれくらい酷い声を出していたかはうろ覚えなのだが、頭のネジがいくつかぶっ飛んだ状態だったのは覚えている。それを聞かれたなんて…………。思わずその場で膝から崩れ落ちてしまう。
「今までも、その、オレが泊まりに来てた時、髭は冷蔵庫で勉強してたの?」
先に部屋に入り、電気ストーブを点けてくれる先輩の背中になんとなく尋ねる。「髭じゃなくて真山」と根気強く訂正した後、先輩は机をセッティングしながら肯定した。
「真山の部屋みたいなもんだしな。毎日ではないが、しょっちゅう来てるぞ」
オレとしては割と衝撃的な答えだった。ヤってる最中は周りってか、部屋の外まで意識出来る余裕なんてないんだが、もしかしたら、こう、オレが情けない声を上げている時にドア越しの廊下を髭が歩いていたかもしれないとか……ちょっとした悪夢だ。
「ん、どうしたんだ?」
一瞬オレがフリーズしていると「寒いだろ」と言いながら先輩が腕を引いて部屋へ連れ込んでくれる。ぎこちなく頷くと、先輩は困ったように笑ってオレの頭を撫でた。
「セイシュンが部屋に来てる時は、事前に伝えてあるって言ってなかったか? 俺たちが起きてる時間帯はこっち側に来るのは控えて欲しいって頼んでるから、そんな心配そうな顔しなくても大丈夫だ」
髭はそれをどういうふうに理解しているのか、いや、髭には先輩との関係は知られている訳で、まあ、ヤってる事は筒抜けって事だな。腹の底がキューっと痺れるような感覚に陥る。
「初めての時、ちょっと驚かせたからな。結構ショック受けてたみたいで真山の方からセイシュンが来る時は一声かけろって言ってきたんだよ」
男同士が抜き差しやってる現場に居合わせたら、そりゃ苦情の一つや二つ言いたくもなるよな……。
「ッ! それマジかよ! 初めての時って、え? そんなん先輩一言も言わなかったじゃん!」
オレが突然大声を出したので、先輩は慌てて扉を閉めた。そして、ちょっと怒った顔で『静かにしろ』のジェスチャーをしやがった。
「初めてヤった時、外に髭が居たって事かよ!」
声量は思い切り落としながらも、勢いはそのままに先輩に詰め寄ると、先輩は「ずっとじゃないぞ」とフォローになってない言葉でオレを宥めようとする。
「さすがに最初から鑑賞されてたなんて聞いたら、今から髭の所に殴り込みに行くぞ」
恥ずかしさではなく怒りで、声量を気にしなくてもいいくらい声がどんどん低くなる。
「いくら真山に頼まれても、そんな事は絶対にさせない」
オレのテンションが移ったのか、先輩も真顔でそう答えた。それなら、どうしてそんな状況になったんだと聞けば、申し訳なさそうに先輩は言葉を濁す。
「ストップ出来る状況なら真山が通り過ぎるまで動かずにやり過ごすんだが、その、俺も余裕がなかったと言うか、な? 初めてセイシュンに挿入して、外野にまで気が回らなかったんだ…………すまん」
と言うことは、髭が通りかかった時ってのは、オレらの初体験のクライマックスだった訳だな。そうかアレを聞かれてしまったのか。正直、自分がどれくらい酷い声を出していたかはうろ覚えなのだが、頭のネジがいくつかぶっ飛んだ状態だったのは覚えている。それを聞かれたなんて…………。思わずその場で膝から崩れ落ちてしまう。
0
あなたにおすすめの小説
春を拒む【完結】
璃々丸
BL
日本有数の財閥三男でΩの北條院環(ほうじょういん たまき)の目の前には見るからに可憐で儚げなΩの女子大生、桜雛子(さくら ひなこ)が座っていた。
「ケイト君を解放してあげてください!」
大きなおめめをうるうるさせながらそう訴えかけてきた。
ケイト君────諏訪恵都(すわ けいと)は環の婚約者であるαだった。
環とはひとまわり歳の差がある。この女はそんな環の負い目を突いてきたつもりだろうが、『こちとらお前等より人生経験それなりに積んどんねん────!』
そう簡単に譲って堪るか、と大人げない反撃を開始するのであった。
オメガバな設定ですが設定は緩めで独自設定があります、ご注意。
不定期更新になります。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
貢がせて、ハニー!
わこ
BL
隣の部屋のサラリーマンがしょっちゅう貢ぎにやって来る。
隣人のストレートな求愛活動に困惑する男子学生の話。
社会人×大学生の日常系年の差ラブコメ。
※この物語はフィクションです。
※現時点で小説の公開対象範囲は全年齢となっております。しばらくはこのまま指定なしで更新を続ける予定ですが、アルファポリスさんのガイドラインに合わせて今後変更する場合があります。(2020.11.8)
■2025.12.14 285話のタイトルを「おみやげ何にする? Ⅲ」から変更しました。
■2025.11.29 294話のタイトルを「赤い川」から変更しました。
■2024.03.09 2月2日にわざわざサイトの方へ誤変換のお知らせをくださった方、どうもありがとうございました。瀬名さんの名前が僧侶みたいになっていたのに全く気付いていなかったので助かりました!
■2024.03.09 195話/196話のタイトルを変更しました。
■2020.10.25 25話目「帰り道」追加(差し込み)しました。話の流れに変更はありません。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる