圏ガク!!

はなッぱち

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蜜月

信頼の証

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「よし、来たか!」

 何事だと校門の方へ視線をやると、後ろに居たはずの執事もどきが鼻息荒く走る背中を見送る事になった。校門に飛び込んできたのは一台のバイクで、ヘルメットも取らず執事もどきに何かを手渡し、すぐさま元来た道へと引き返した。大股で戻ってきた執事もどきは、バイクから受け取った荷物をオレに見せつけ、ついて来いと言った。どうしても走りたいという訳ではないので、言われるがままついて行くと、全力で就寝中の寮長の部屋へとやって来てしまった。

「旦那様、荷物を無事に受け取りました。ついでに夷川も見かけましたので、手間が省けると思い連行しました」

 隣近所への配慮か、執事もどきは静かに眠る寮長の耳元に口を寄せ、鼻息や呼吸を盛大に浴びせながらボソボソと報告する。不快感に襲われたのだろう、寮長は目を瞑ったまま顔を顰め、耳元でへばりつく闘牛を弱々しい手つきで追い払おうとした。寮長が起きた事を確認した執事もどきは、むくりと立ち上がり背筋を伸ばして窓際に控える。

「今、何時だ?」

 一応布団から起き上がってくれた寮長は、誰を見る訳でもなく呟く。執事もどきが「五時前です」と伝えれば、頭痛を耐えるように額を押さえ無機質な声でオレを呼んだ。

「少し話しておきたい事もある。時間を置いて出直せ」

 旦那様の言葉を聞き、執事もどきは即座に動いた。ゴミでも放り投げるように部屋からオレを追い出すと、扉から顔だけ出し「旦那様の準備が整い次第、お前を呼び寄せるので自室で待機するように」と言いたい事だけ言って、隣近所を気にしない勢いで扉を閉めた。

 またも言われるがまま、自室に戻って布団に潜り込むと、気が抜けたのか知らない間に眠ってしまっていた。休日の特権だと惰眠を貪る皆元の隣で徹夜してしまった分の睡眠を確保していると、部屋へ突撃してきた執事もどきに文字通り叩き起こされた。

 本日二度目の訪問をすると、歪んだ眼鏡をかけた寮長が出迎えてくれる。誰かに殴られたのかと思うような有様だが、ダメージがあるのは眼鏡だけでその心配はなさそうだった。

「……なんだ」

「その眼鏡、危なくねぇの? レンズに罅が入ってるけど」

 昨日と同じ(性悪が用意していたやつだ)眼鏡だったが、執事もどきの被害に遭ってしまったらしい。寮長は深い溜め息を吐いて、諦めたように机から見覚えのあるケースを取り出しオレに手渡してきた。そしてメガネを外し、当然のように瞼を閉じた。

「今から雑談をする訳ではない。見えていないと不自由だ。一思いにやってくれ」

 そう思うなら、例え見た目が少々可笑しくても眼鏡でいいじゃあないかと、寮長の外した眼鏡を手に取り軽く覗き込んでみた。見事に罅割れた視界を目の当たりにして、元の位置にそっと戻す。

「……性悪呼んで来てもいいですか?」

「数秒で済む事に何分かけるつもりだ」

 鋭い指摘を頂くが「それなら自分でやれ」という言葉を飲み込むのに数秒要した。伝わるかどうかは分からないが、寮長を真似て思い切り溜め息を吐きながらコンタクトレンズを手に取る。今度性悪に会ったら、寮長にコンタクトレンズの入れ方を教えるよう頼もう。最大限丁寧に他人の目玉の上にレンズを乗せたのだが、寮長の眉間には深々と皺を刻まれてしまった。大丈夫か問うと、寮長は吐息のような声を漏らし、もう片方にも入れろと静かに目を閉じた。

 なんとか無事に寮長の視界を確保すると、机の下に置いてあった今朝執事もどきがバイクから受け取った荷物の中身を机に置くよう指示される。どこにでもあるような黒い鞄の中には、見慣れた紙束がいくつかにまとめられていた。
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