圏ガク!!

はなッぱち

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新学期!!

先輩の交友関係

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 本当は受け取る気はなかったのだが、受け取るまで退室させないと変態が臨戦態勢だったので、渋々カードキーを懐にしまったのだ。

「セイシュン、俺と約束したよな。生徒会には近づかないって」

 カードキーを受け取った事まで、全て話すつもりだったが、先輩の態度がそれをさせなかった。

「どうして一人で行ったりしたんだ」

 何するか分からない奴ではあるが、別に危険はなかった訳だし、そんな怒るなんて思わなかったので、少し面食らってしまう。

「一人じゃないよ。皆元とスバルが付いて来てくれたから」

 言い訳するように言葉を重ねると、先輩は疲れた溜め息を吐いた。

「どうして俺に相談しなかったんだ」

 自分を責めるような先輩の声に、堪らずその胸の中に飛び込んだ。

「これくらい自分で解決出来るって思ったんだ。なんでもかんでも、先輩に頼りっぱなしって……後輩としてはいいだろうけど、恋人としては駄目だろ」

 額を先輩に押し当てる。オレの言い分を聞いて、何故か脱力した先輩を勢いに任せて押し倒した。先輩の上から起き上がる。

「オレだって先輩を守ってやるって思ったんだよ。先輩、部屋から逃げ出すくらい会長の事が嫌いなんだろ」

 先輩の目を見て言い切ってやると、心底困ったという表情になってしまった。

「嫌いと言うか、ん、そうだな、好きではないんだが。そうだな……ん」

 歯切れ悪すぎる。ちょっと苛々したので頭突きを見舞ったが、当然いつものように玉砕した。

「てか、先輩たちって友達なの?」

 先輩の上に寝転び、気になる事を遠慮なく聞いてみた。先輩の話を聞く限り、髭と仲が良いのは嫌って程に分かるのだが、会長の方は全くそんな雰囲気がない。てか、嫌っている、もしくは一方的に付きまとわれ迷惑しているとしか思えないのだが。

「友達……ん、難しい質問だな」

 いきなり土足で踏み込みすぎたか? 先輩は真剣に悩み出してしまった。

「俺は他の奴より少し遅れてここへ来たんだが、そのせいか、最初は寮で一人だったんだ」

 頭の中で整理しながら話しているのか、先輩は迷うような口振りで、ゆっくり話し出した。

「それが、ある日突然、部屋に戻ったら羽坂がいたんだ」

「…………なんで?」

「一人じゃ味気ないだろうとか言ってたな。羽坂が何を考えているのかは分からんが、友達と言うより俺の唯一の身内って事になるのかな」

 押しかけられて、居座られたのか。

「毎年、部屋とか同室になる奴は変わるんだが、何故か俺だけ二年になっても三年になっても羽坂と同じ部屋に割り振られてたんだ。俺のくじ運が壊滅的に悪いのか、羽坂が手を回してるのかは分からんが、まあ要するに腐れ縁だ」

 普通に考えれば、会長が金に物言わせて仕組んでるんだろうな。てか、部屋割りって毎年変わるのか。嫌な奴と相部屋になったら悲惨だな……オレのくじ運が壊滅的に悪くないのを祈ろう。

「じゃあ、二年の時からここで暮らしてるのかよ」

「さすがに二年の時は使ってないよ。あんまり酷い時は、どっか寝られる所を探して野宿とか、ん、まあふらふらしてたな」

「酷いって何が?」

「鼾と歯軋り、あと寝言。窓開けて寝るとな、隣だけじゃなくて近所中から苦情が来るんだ。仮眠くらいは出来るが、毎日それじゃあ休んだ気がしないからな」

 意外とまともだ。謹慎の時みたいに、相手連れ込んでヤリまくってんのかと思ったのに。

「ん、あいつの言動を考えると意外かもしれないが、部屋に誰かを連れ込んだのは、あの時が初めてだったな。俺に対する嫌がらせだったんだろ」

 あははと笑う先輩を見て、オレは気付いてしまった。もしや先輩、寝てる隙に会長に掘られてるんじゃあッ! ガッと顔を上げれば、心に浮かんだ心配事を叫んでいたらしく、全力で頬を引っ張られた。

「変な事を叫ぶな」

「だって心配なんだよ。オレの先輩が他の奴の毒牙にかかってたかもなんて考えたら、なんかワーってなるだろフツー!」

「羽坂だって相手は選ぶだろ……いや、どうなんだろうな、ちょっとその辺は自信ないけど、用務員のオッサンすら対象になるみたいだしな」

 思ってた以上に酷い! 会長の性癖が酷すぎる! 心配通り越して泣けてきた。先輩の初めてはオレが奪うはずだったのに!

「いや、心配しなくても初めてだが……んーセイシュンがそんな事を考えていたなんて知らなかった」

「……ほんとに?」

「お前とこうなるまでは、男同士なんて考えられなかったからな」

 穏やかな声で先輩はそう言うと、頬を引っ張っていた手でオレの頭を引き寄せ、口先に軽いキスをしてくれた。

「じゃあさ、押しかけられる前、なんの面識もない所にいきなり現れたの? 会長に気に入られたきっかけとかは、思い当たる事ない?」

 先輩が軽く済ませたキスを引き継ぎ、唇に吸い付きまくった結果、先輩の口元がちょっと赤く腫れてしまった。笑える所か、結構エロくて、意識を逸らせる為に話を元に戻す。

「んー確か……一度、多分あれは羽坂だったと思うんだが、死にそうになってたのを助けた事はあったかな」

「先輩って人助けが趣味なのかよ」

 とんでもない悪趣味だ。オレもその趣味のおかげで助かった訳だが、助けた相手がオレみたいに先輩に惚れてたらどうすんだと、説教したくなった。

「別にな、ただのケンカなら構わないんだが……俺らが一年の時は、それじゃあ済まない奴らが多かったからさ」

 髭の濁った目を思い出して、文句は自然と飲み下された。

「殺されそうになってる奴を放置ってのは気分が悪いから、止めに入ってただけだ。多分、やってる方も分かってなかっただろうからな。興奮してる連中は、越えちゃいかん一線を見誤る」

「今でも、オレの知らない所で誰か助けたりしてる?」

「大丈夫だ。心配しなくても、今の圏ガクはそんな場所じゃないからな」

 先輩の手がオレの頭を撫でる。上げていた顔を再び先輩の胸に預けた。

「いい奴が多いと思わないか、ここ」

 優しい声に、頭を少し揺らして同意する。普通の学校と比べたら、暴力が蔓延している不良の溜まり場だが、オレみたいなぬるい奴が笑って生活しているんだ。胸くそ悪い奴と同じくらい、いやそれ以上にいい奴が多いのだろう。

「古い圏ガクを真山がぶっ壊して、作り直したんだ。だから、俺はここが好きだ」

 先輩の声が誇らしげに聞こえる。きっと、すげぇどや顔してんだろうな。妬けて悔しいけど、これにも同意だった。

「髭……じゃなくて、その、番長と裏番が作ったり守ったりした今の学校、オレも嫌いじゃないよ」

 少し起き上がって、しっかり顔を見る。惚れ直してしまうような、先輩の表情に胸がドクドクと鳴った。

「会長ってさ髭と仲悪いだろ」

「髭って呼ぶなよ」

 また頬を全力で引っ張られたが、律儀に答えてくれた内容に同情して沈黙する。あぁ違うな、これは同情じゃなく共感だ。

 こんなの見せつけられたら、平静でなんていられないだろう。目の前に髭がいたら、ピンセットで大事な髭を一本残らず引っこ抜く所だ。

「…………勃った」

「へ?」

 先輩の腹に思い切り腰を擦りつけてやる。髭がいないので、オレは先輩に当たり散らす事にした。

「もっかいヤルぞ」

「うえ、じょ、冗談だよな、セイシュン……嫌だとは言えないだろうが、俺にも心の準備がだな」

「ローションねぇから、口でやんぞ! フェラだフェラしやがれ!」

 ウダウダと言う先輩を無視して、顔の前に股間を突き出してやると、何故か先輩はホッとした顔で、オレの八つ当たりを受け止めてくれた。
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