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# 15 少年の実力(ちから)
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「じーさん、あんたがペットを1体、呼び出す時間は約2、3秒。その間に頭蓋骨を粉々にできるぜ!」
何て恐ろしいことを涼しい顔で……。
先ほど、モリ達をストレージから出している時に観察していたのか。
オーバーライド権限でリンクしているモリ達に戻るよう連絡した。森の中に入って、1分以上が経っているので、戻るまで十数秒。時間を稼ぎたいけど……。
「あのオカッパ頭もじーさんが死ねば、あんたのことなんてすぐ忘れるだろ」
そういえばあの少年の名前を聞きそびれてたな。
って、いかんいかん、走馬灯のように自分の記憶を整理し始めていた……。今はこの窮地をどう脱するか考えないと。
──あっ。
いいこと思いついた。
「そこのお嬢さん。少し時間を稼いでくれたら、あとで100万円あげますよ」
「あっ? こんな破綻した世界で金なんてもらって誰が嬉し……おわぁ!」
「アタシ~、お金大好き♡」
「この糞●ッ●」
──今だ。
黒ドレスの少女が両手にそれぞれ巨大なハサミの片刃を持って、大男の首を落そうとした。大男も不意打ちを受けながらも後ろに下がって少女と対峙した。
オブジェクト化は数分かかるから論外。
ストレージから呼び出せるのは、時間的に1体か2体が限度。
少女は刃欠けを気にして、大男の巨大ハンマーと真っ向から当たりに行ってないので、少し回り込めば、すぐに豆丸にハンマーが届いてしまう。
豆丸は無意識にモリキャラではないものを呼び出した。
──巫霊、斎宮ハガネ。
銭湯での戦いで駆け出しのモリ達はだいぶやられてしまっていた。ストレージの中には、生え抜きのモリはレベル23のゴリ親方1体のみ。残りの精鋭のモリは、ほとんどあのオカッパ頭の少年の班に入れてしまっていた。ゴリ親方もたしかに強いが、人型に比べればまだまだ。その思いが無意識の選択の中に現れたようだ。
「ハガネ! 大男の方を行動不能にしろ!」
「はっ、お任せください。我が主君!?」
うーん。
誰かに命令するのってゾクゾクする。
思えば、誰かに命令されてばっかりの人生だった。
こんな非常時なのに妙な快感が身体を駆け巡る。
「人型!? ──なんで、じーさんが化け物を?」
ですよねー。
びっくりしますよね。さすがに。
豆丸自身もなぜ人型が仲間になったのか、いまだによく分かっていない。
それにしても巫霊の方は、行動不能って言葉をちゃんと理解してくれてるだろうか?
バッサリ斬っちゃったら、どうしようかと心配になったが、大丈夫だった。
大男の巨大なハンマーを軽くかわしながら、柄を狙って刀で斬った。あとは加減された無数の斬撃の光が大男の全身に走った。男の皮一枚だけを斬ったらしく、全身から派手に血しぶきを上げているが、致命傷にはなっていなさそう。
それにしても良かった。
まだ外は昼のはずだが、ここは別の次元のような場所。巫霊、斎宮ハガネは日中に極端に力や素早さが下がるようだが、この場所では、その実力を遺憾なく発揮した。
「ううっ……」
よろめきながら、全身血まみれになった大男が背後の草むらに倒れこむ。
それと同時に。
「うっ、うわぁぁ! たっ助け……くれ……」
草むらの中で、男に群がる無数の恐竜の背中。
それを見た豆丸の印象は、池にエサをやった時に群がる鯉の魚影に似ていると感じた。
大男の手や足が時折、草むらから見えて、みるみるうちに遠ざかっていく。
こんな近くまで来てたなんて……。
黒ドレスの少女も危険を察知したのか、豆丸とハガネのそばにやってきた。
なるべく死角を作らないように2人と1体で陣形を組む。
「お待たせ-。あれ、デカいおっさんは?」
「実は……」
オカッパ頭の少年が戻ってきてくれた。
他の3班のモリ達も豆丸が少年に事情を説明している間に到着した。
「ふーん。2体は仕留めてきたけど、こっちに集まってたんだ」
こんな短時間にもう2体も倒した!?
「爺ちゃんはそこで待ってて。後は俺がやる」
「俺がやる」って、その茂みの中にはたぶん10頭以上は潜んでいるのに気付いていない?
「危ないから、早くこっちに戻ってきて」
「大丈夫大丈夫!」
大男が、引きずられていった草むらの中をモリ達を連れていかず単独で進んでいく。
サメの背びれのように草むらが動き出す。複数の方向から曲線を描くように、少年へ迫っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんかブツブツ言っている。大丈夫なのか!
「――神環之紙嶺」
無数の紙垂が少年の周りの地面から空に向かって、突きあがり、ある程度の高さまで舞い上がった後、弧を描いてもう一度、地面へと突き刺さっていく。
今ので周囲にいた肉食恐竜ディノニクスの悲鳴が重なった。
「うーん、9匹しか釣れなかったや」
たった1回のスキル発動で9体も!?
それだけで凄いのに、その後も先ほどの紙垂が生き物のように草むらを切り裂きながらあっけなく2体仕留めた。
「おめでとうございます。エリア5がⅢブロックのトップで中間地点を突破しました」
大黒天によく似たキャラの声が響いた。
これから何体ディノニクスを倒してもミッションには関係ないとのこと。
この空間から出るには、もう一度黒い扉を探すようにと案内があった。
何て恐ろしいことを涼しい顔で……。
先ほど、モリ達をストレージから出している時に観察していたのか。
オーバーライド権限でリンクしているモリ達に戻るよう連絡した。森の中に入って、1分以上が経っているので、戻るまで十数秒。時間を稼ぎたいけど……。
「あのオカッパ頭もじーさんが死ねば、あんたのことなんてすぐ忘れるだろ」
そういえばあの少年の名前を聞きそびれてたな。
って、いかんいかん、走馬灯のように自分の記憶を整理し始めていた……。今はこの窮地をどう脱するか考えないと。
──あっ。
いいこと思いついた。
「そこのお嬢さん。少し時間を稼いでくれたら、あとで100万円あげますよ」
「あっ? こんな破綻した世界で金なんてもらって誰が嬉し……おわぁ!」
「アタシ~、お金大好き♡」
「この糞●ッ●」
──今だ。
黒ドレスの少女が両手にそれぞれ巨大なハサミの片刃を持って、大男の首を落そうとした。大男も不意打ちを受けながらも後ろに下がって少女と対峙した。
オブジェクト化は数分かかるから論外。
ストレージから呼び出せるのは、時間的に1体か2体が限度。
少女は刃欠けを気にして、大男の巨大ハンマーと真っ向から当たりに行ってないので、少し回り込めば、すぐに豆丸にハンマーが届いてしまう。
豆丸は無意識にモリキャラではないものを呼び出した。
──巫霊、斎宮ハガネ。
銭湯での戦いで駆け出しのモリ達はだいぶやられてしまっていた。ストレージの中には、生え抜きのモリはレベル23のゴリ親方1体のみ。残りの精鋭のモリは、ほとんどあのオカッパ頭の少年の班に入れてしまっていた。ゴリ親方もたしかに強いが、人型に比べればまだまだ。その思いが無意識の選択の中に現れたようだ。
「ハガネ! 大男の方を行動不能にしろ!」
「はっ、お任せください。我が主君!?」
うーん。
誰かに命令するのってゾクゾクする。
思えば、誰かに命令されてばっかりの人生だった。
こんな非常時なのに妙な快感が身体を駆け巡る。
「人型!? ──なんで、じーさんが化け物を?」
ですよねー。
びっくりしますよね。さすがに。
豆丸自身もなぜ人型が仲間になったのか、いまだによく分かっていない。
それにしても巫霊の方は、行動不能って言葉をちゃんと理解してくれてるだろうか?
バッサリ斬っちゃったら、どうしようかと心配になったが、大丈夫だった。
大男の巨大なハンマーを軽くかわしながら、柄を狙って刀で斬った。あとは加減された無数の斬撃の光が大男の全身に走った。男の皮一枚だけを斬ったらしく、全身から派手に血しぶきを上げているが、致命傷にはなっていなさそう。
それにしても良かった。
まだ外は昼のはずだが、ここは別の次元のような場所。巫霊、斎宮ハガネは日中に極端に力や素早さが下がるようだが、この場所では、その実力を遺憾なく発揮した。
「ううっ……」
よろめきながら、全身血まみれになった大男が背後の草むらに倒れこむ。
それと同時に。
「うっ、うわぁぁ! たっ助け……くれ……」
草むらの中で、男に群がる無数の恐竜の背中。
それを見た豆丸の印象は、池にエサをやった時に群がる鯉の魚影に似ていると感じた。
大男の手や足が時折、草むらから見えて、みるみるうちに遠ざかっていく。
こんな近くまで来てたなんて……。
黒ドレスの少女も危険を察知したのか、豆丸とハガネのそばにやってきた。
なるべく死角を作らないように2人と1体で陣形を組む。
「お待たせ-。あれ、デカいおっさんは?」
「実は……」
オカッパ頭の少年が戻ってきてくれた。
他の3班のモリ達も豆丸が少年に事情を説明している間に到着した。
「ふーん。2体は仕留めてきたけど、こっちに集まってたんだ」
こんな短時間にもう2体も倒した!?
「爺ちゃんはそこで待ってて。後は俺がやる」
「俺がやる」って、その茂みの中にはたぶん10頭以上は潜んでいるのに気付いていない?
「危ないから、早くこっちに戻ってきて」
「大丈夫大丈夫!」
大男が、引きずられていった草むらの中をモリ達を連れていかず単独で進んでいく。
サメの背びれのように草むらが動き出す。複数の方向から曲線を描くように、少年へ迫っていく。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なんかブツブツ言っている。大丈夫なのか!
「――神環之紙嶺」
無数の紙垂が少年の周りの地面から空に向かって、突きあがり、ある程度の高さまで舞い上がった後、弧を描いてもう一度、地面へと突き刺さっていく。
今ので周囲にいた肉食恐竜ディノニクスの悲鳴が重なった。
「うーん、9匹しか釣れなかったや」
たった1回のスキル発動で9体も!?
それだけで凄いのに、その後も先ほどの紙垂が生き物のように草むらを切り裂きながらあっけなく2体仕留めた。
「おめでとうございます。エリア5がⅢブロックのトップで中間地点を突破しました」
大黒天によく似たキャラの声が響いた。
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この空間から出るには、もう一度黒い扉を探すようにと案内があった。
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